今年の「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)ではランキングポイントが付与されないことから、多くの選手が影響を受ける結果となった。英BBCが報じている。
オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(AELTC)がロシアと同盟国ベラルーシの選手を締め出したことに対する制裁として、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)は今大会でランキングポイントを付与しないことを発表。その結果、男子シングルスで優勝したノバク・ジョコビッチ(セルビア)はタイトルを防衛したにもかかわらず、昨年得た2,000ポイントをそのまま失って世界ランキング3位から7位に後退している。
だが、それ以上に打撃を受けたのは今大会で活躍した下位の選手たちと言える。例えば、ノーシードながらも決勝まで勝ち上がってジョコビッチと対戦し、グランドスラム初の準優勝を果たしたニック・キリオス(オーストラリア)は本来であれば、1,200ポイントを獲得して世界40位から世界15位前後に浮上していたはず。それならば「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月29日~9月11日/ハードコート)では上位16シードに入ることも可能だったが、実際は5つダウンの45位となり、32個あるシード権を勝ち取るためにはこれからの大会で良い結果を残さなければならない。
「これ(ランキングポイントを付与しないこと)はどうすれば“ウィンブルドン”に対する罰になるんだ?」とTwitter上で疑問を呈した当時世界132位のリアム・ブローディ(イギリス)は、2回戦で第12シードのディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)を破ってグランドスラム初の3回戦進出を決めた。だが、ブローディはその功績に見合ったポイントをもらえないどころか、昨年の大会で獲得した分を失うため、「また150位くらいに戻ってしまう」と落胆(実際は140位)。
同じくイギリス人で第9シードとして出場していたキャメロン・ノリー(イギリス)は、準決勝にまで勝ち進んだことで世界12位からキャリアハイの世界8位へ浮上するはずだった。そんなノリーは「自分はまたシード権をもらえるし、どの大会にも出場できるから大した影響はない」とコメントし、より影響が大きいブローディのような100位台前半の選手たちをおもんばかっている。ワイルドカード(主催者推薦枠)として出場した世界288位のアラステア・グレイ(イギリス)も1回戦を突破したにもかかわらず順位がほとんど変わらないため、「全米オープン」の予選出場資格を満たすという大きなチャンスを手にすることはできなかった。
女子シングルスでも、準優勝を飾ったオンス・ジャバー(チュニジア)が世界2位から5位に落ちている。だが、ジャバーもノリーのように、自分のことよりもほかの選手のことを思って悔しがった。ジャバーが準決勝で対戦し、家族ぐるみで仲良くしているという当時世界103位だったタチアナ・マリア(ドイツ)は、ポイントをもらえていれば世界37位前後にまで浮上し、「全米オープン」のシード権に手が届いていたかもしれない。34歳で2児の母でもあるマリアは、出産の度に落ちたランキングを上げるのに苦労してきた選手だ。
ほかにも、4回戦にまで進んだ当時世界121位のヘザー・ワトソン(イギリス)や、1回戦で元世界女王のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を破って4回戦にまで勝ち残った当時世界115位のハーモニー・タン(フランス)など、今後の大会への出場権や「全米オープン」の予選出場がかかっていた選手たちにとっては大きな痛手となった。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ウィンブルドン」でのキリオス
(Photo by Shaun Botterill/Getty Images)