自分好みのテニスラケットを選ぶポイントはブランドやモデルだけではない。ストリングの種類や張り方によっても性能がかなり左右される。今回は、ストリングの種類の違いや組み合わせ方について解説する。米テニスメディアBaselineが伝えている。
「私はもう長い間ポリエステルのストリングだけを使ってきました。ですが、最近は腕の痛みを感じるようになり、ストリンガーの方からハイブリッドに変えることで楽になるかもしれないと言われました。調べると多くのプロがハイブリッドを使っているようです。ほとんどがナチュラルガットとポリエステルの組み合わせだそうです。試してみたいのですが、どちらがメインでどちらをクロスにするのが最適なのでしょうか?2つの組み合わせの違いは何でしょう?」
とてもいい質問だが、答えは単純明快ではない。プロツアーではナチュラルガット/ポリエステルのハイブリッドな組み合わせが人気だが、どちらがメインとなるべきかについては十分な議論がされていない。「ATP250 アトランタ」で行われたストリンガーの会議で撮られた写真がSNSに投稿され話題となり、幾つか変わったストリング設定も明かされた。ジョン・イズナー(アメリカ)のストリングのテンションは35ポンドで、この設定を使う選手は複数いることがわかった。そして、メインにナチュラルガットを使うかポリエステルを使うかについては様々だった。
さらに物事を複雑にするのは、ストリングのテンションもまた選手によって大きく異なるということだ。選手の中には、ナチュラルガットよりポリエステルをゆるく張っている者もいれば、同じ強さで張る者もいる。テンションの強さも、60ポンド台を好む選手や、40ポンド台を好む選手など、史上最も偉大な選手は誰かと言う議論と同じくらい、ラケットの設定は意見が分かれている。
つまり、設定の決定には個人の好みが大きな部分を占める。私はどちらの設定でもプレーしたことがあるが、個人的にはナチュラルガットをメインにして、丸いポリエステルストリングをクロスに、しかも5ポンドほどゆるめに張るのが好みだ。これは、ロジャー・フェデラー(スイス)が広めた設定だと言われている。ハイブリッドを使用した経験から言うと、どちらのストリングもストリングベッドの全体的な感触や性能に影響を与えるが、メインストリングの方が影響力が大きい。
ナチュラルガットを中心にした方が、打ち心地が良く、パワーを出しやすいと感じるし、タッチの調節やスピンをかけるのも容易い。ポリエステルほど長持ちはしないが、評判よりはずっと丈夫だと思う。もちろん高いが、極端に湿度の高い環境でプレーしたり、あるいは広めのストリングのパターンを選んでいるのでなければ、値段に見合わなかったと思ったことはない。
ポリエステルをメインにすると、硬めのパリッとした反応になる。私の意見では、コントロールが向上し、リスクを減らしながら強いショットを打つことができる。スピンの面ではどちらともそれほど差はない。ストリングを長持ちさせることを最重要視する選手や、硬めの感触が好きな選手は、この設定の方が好みかもしれない。ただし、ポリエステルの種類や形、ゲージなども耐久性や反応性に影響を与える。
もしナチュラルガットが容易に手に入らない、または単純に普段遣いするには高すぎるなら、ポリエステルをメインに、スタンダードなナイロンマルチフィラメントと合わせて使うことを薦める。この逆の設定にしてしまうと、不十分だと私は感じる。クロスストリングとして使用すると、マルチフィラメントはストリングベッドを柔らかくし、腕への負担を軽減しつつ、ポリエステルの特徴であるコントロール、スピン、耐久性も生かされる。
ナチュラルガットや他のマルチフィラメントの代替として考えられるのは、メインにしっかりとしたポリエステルを使い、クロスに細めで柔らかいポリエステルを緩めに張ることだ。この組み合わせは最近人気を集めていて、マルチフィラメントを加えるよりスピンやコントロール性が増す。現在のあなたの設定に近いが、ストリングベッドが少し柔らかくなり腕への負担を軽減するかもしれない。
あなたのラケットバッグにたくさんラケットが入っているといいのだが。これだけストリングの選択肢があると、ちょっとした実験をする必要がある。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は握手の代わりの「ラケットタップ」
(Photo by Alex Davidson/Getty Images for LTA)