テニスレジェンド、ロジャー・フェデラー(スイス)についての著書が複数あるスイス人ジャーナリストのサイモン・グラフ氏が、ドミニク・ストリッカー(スイス)がピーター・ラングレン氏とトライアルを開始したと明かした。彼らはまず3週間のトライアルを行うことで合意しており、そのまま長期的な関係に発展する可能性もある。先週はストリッカーが第2シードで出場するルガーノでのチャレンジャー大会のため、2人は揃ってスイスのティチーノ州を訪れた。伊ニュースサイトUBI Tennisなどが報じている。
「ロヴェレート(イタリアで行われたチャレンジャー大会)での優勝の後、とても厳しいトレーニングを積んできた。今は意気揚々としていて、この大会ではピーター・ラングレンとの協力が始まる」と20歳のストリッカーはスイスの報道陣に語った。
ラングレン氏の名は、スイスのテニスファンにとっては強烈な記憶を呼び起こすものであるはずだ。ラングレン氏はキャリア初期のフェデラーのコーチを務めたほか、2010年から2011年にかけてはスタン・ワウリンカ(スイス)を指導。2010年には、ワウリンカもルガーノでのチャレンジャー大会で優勝している。ストリッカーとラングレン氏が協力関係の出発点としてルガーノを選んだのは、偶然ではないのかもしれない。
1985年にプロテニス選手として世界ランキング25位に到達したスウェーデン出身のラングレン氏は、コーチとしてのキャリアをスイスだけに限ってきたわけではない。マルセロ・リオス(チリ)、マラト・サフィン(ロシア)、マルコス・バグダティス(キプロス)、グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)など、多くの選手たちがラングレン氏のもとで育ってきた。
特筆に値するのは、ラングレン氏が、気性の激しい若い才能をうまく導いて高い成果を出させることに成功してきたということだ。ラングレン氏の指導のもとで、リオスは世界ランキングを急上昇させて10位以内に入り、サフィンは「全豪オープン」で優勝。そしてもちろん、2003年の「ウィンブルドン」でフェデラーが初めてグランドスラム優勝を果たした時、フェデラーの選手関係者席にラングレン氏がいたことを覚えている人も多いだろう。
2020年「全仏オープン」ジュニアのシングルスとダブルスで優勝したストリッカーは、昨年11月にキャリアハイとなる世界111位に到達。ミラノで行われた「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」では、ジャック・ドレイパー(イギリス)、ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)、ツェン・チュンシン(台湾)を破ってベスト4に進出し、準決勝でイリ・ラフェチュカ(チェコ)に敗れた。今年に入ってからは、前述の通りイタリアのロヴェレートでのチャレンジャー大会で優勝している。
ストリッカーの元コーチであるスイス・テニスアカデミーのスヴェン・スウィネン氏は、ストリッカーのボールの打ち方と試合を組み立てる力を常に称賛してきた。一方で、フットワークには向上の余地があるとも指摘している。若かりし日のフェデラーを、怠けもので身体ができていないと叱ることを厭わなかったラングレン氏のようなコーチが、炎を燃え立たせるのにふさわしい人物なのかもしれない。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2022年「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」でのストリッカー
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)