飛躍を続ける世界ランキング103位のダニエル太郎(日本/エイブル)について、ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトが紹介している。
ダニエルは、2月下旬から3月初めにかけて行われた「ATP500 アカプルコ」に予選から参加すると、世界4位のキャスパー・ルード(ノルウェー)らを破ってベスト8。トップ10の選手を下したのはこれが初めてだった。続く「ATP1000 インディアンウェルズ」(アメリカ・インディアンウェルズ/3月8日~3月19日/ハードコート)でも同じく予選を突破、元世界6位のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)らを下して3回戦まで駒を進めた。初めて本戦出場を果たした2018年の「ATP1000 インディアンウェルズ」でノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破ったことのあるダニエルは、その時とも比較しながら最近の好調ぶりについて語っている。
「ここ数週間、キャスパーやマッテオのような選手を相手に勝つ最大のチャンスを得るために自分が何をしたかわかっていることは大きい。何年か前にインディアンウェルズでジョコビッチを破った時は、どうして勝つことができたのかわからなかった。彼の調子があまり良くなくて、僕としてはボールを返していて訪れたチャンスを掴んだということなんだろうけど、当時はそれがわからなかった。だから“何が起きたんだ?”って感じだったんだ」
「でもここ2週間は、重要な局面で自分が押し戻せた、テニスの面でもメンタル面でも反撃することができたと理解しているよ。それが自分の中で最も成長したと感じているところだね」
彼が実感する成長は、大事な人を失ったことが関係しているようだ。ダニエルは2022年10月に母親を病気で亡くしている。当時、ダニエルは自分が子どもの頃の家族写真や若かりし頃の母親の写真を投稿するとともに、大きな学びを得たと綴っていた。
母親の死から1ヶ月間はテニスから離れていたダニエルは、その後ハードなトレーニングを再開。しかし、新シーズン開幕からオーストラリアの大会に出場することは「信じられなかった」と振り返る。モチベーションが湧かず、何をすればいいかわからなかった彼は、新シーズン当初は世界470位だった選手に敗れるなど苦しい出だしに。「“全豪オープン”が始まる直前、テニスからしばらく離れることを考えてすらいた」という。
だが、「全豪オープン」後に出場した「デビスカップ」が契機に。チームの勝利に貢献した彼は、直後に珍しく酷いインフルエンザにかかってしまう。「ベッドに5日間いたんだけど、そんなのは数年ぶりだった。前のインフルエンザは1、2日寝てれば良くなっていたんだ。(“デビスカップ”で)いいプレーができていたから、大会に出られないのが残念だった。一人でベッドに横になりながら、“ランキングが下がったらどうしよう”なんて考えていたよ」
母親を失ったことが結果的に自分の成長につながったと認めるダニエルは、昨年は両親が見に来たインディアンウェルズ大会に今回は父親とともに参加。「母の面倒を主に見ていた父にとって昨年は大変な一年だった。だから、ここで父も含めたみんなで一緒に過ごせることは素晴らしいことなんだ」
残念ながらダニエルは3回戦で第10シードのキャメロン・ノリー(イギリス)に7-6(5)、5-7、2-6で敗れた。しかし試合後、「この2大会は観客との繋がりや今まで自分の中には見た事のない力を感じられた2週間でした」と綴っている。ひと回り成長した彼が今後どんなプレーを見せてくれるのか期待したい。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATP1000 インディアンウェルズ」でのダニエル
(Photo by Mike Frey/Getty Images)