3月8日の国際女性デーに合わせて、テニス界でも現役選手やレジェンドがそれぞれの思いを語った。米テニスメディア Tennis.comなど複数のメディアが報じている。
元世界ランキング10位のデニス・シャポバロフ(カナダ)は一足早く、7日にスポーツメディア The Players’ Tribuneにエッセイを寄稿し、その一部を編集した動画を自身のTwitterにも投稿している。「男女差を減らそうという話はやめよう。テニスを公平にしたいのであれば、男女差は一掃されなければならない」という強い言葉で締めくくった23歳のシャポバロフは、自身の経験をもとに男女平等を訴えている。
かつて旧ソ連の代表選手でもあり、シャポバロフが5歳の時から指導に当たりながらコーチとして働いた母親は、カナダテニス連盟のトレーニングプログラムに招待されたシャポバロフに同行した際、ほかのコーチにアドバイスをするも完全に無視されていたという。それは母親が女性だったからではないかとシャポバロフは振り返っている。さらに、3年前に元世界123位のミリアム・ビョルクルン(スウェーデン)と付き合い始めてからはツアー上の男女差をまざまざと突き付けられることに。ビョルクルン がWTA250大会の本戦出場を決めた時に、シャポバロフが「これで少なくとも7000ドル(約95万円)はもらえるね!」と喜ぶと、ビョルクルンは「デニス、もらえるのは1000ドル(約14万円)くらいよ」と返したという。その時のことは一生忘れられないだろうと話すシャポバロフは、男女間の賞金額の差をなくすだけでなく、「毎週、同じレベルの大会が男女同時に開催されるツアーにしてほしい」と語った。
実際にビョルクルンの試合を会場で観ているシャポバロフは、男女の賞金の差はチケットの売上の差に基づくという意見に対して、女子の試合も「観客席は埋まっていて試合のレベルも高かった」と反論している。資金力がキャリアを大きく左右するテニスにおいて、いかに賞金が重要かと語るシャポバロフ自身、経済的に苦しい環境の中で工夫しながらプロを目指したそうだ。「男の僕でさえ不利な条件とたくさん戦ってきてやっとここまで来られたんだ。これが女性だったらどれだけ大変なことか」とシャポバロフは言う。
男女差が一段と大きかった時代にコート内外で活躍し、引退後も様々な差別をなくすことに尽力してきたレジェンドのビリー・ジーン・キング(アメリカ)は、米Forbes誌がアブダビで開催した国際女性デーのサミットに登壇し、影響力のあるCEOたちに行動を起こすよう訴えかけた。女子テニス界ではほかにも、元世界女王のカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)が幼い娘を抱き上げる写真をTwitterに投稿し、女性の強さを称賛。2021年の「全米オープン」で準優勝した20歳のレイラ・フェルナンデス(カナダ)は「コート内外でより多くの女性にインスピレーションを与え、その女性たちがさらに多くの女性にインスピレーションを与えることを願っている」とTwitterに綴っている。
国際女性デーを祝して「全仏オープン」の公式Twitterが投稿した動画の中では、キム・クライシュテルス(ベルギー)が憧れの女性としてシュテフィ・グラフ(ドイツ)とモニカ・セレス(アメリカ)の名前を挙げ、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)はマルチナ・ヒンギス(スイス)、ガブリエラ・サバティーニ(アルゼンチン)はクリス・エバート(アメリカ)とマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)だと話している。
シャポバロフ以外の男子選手も声をあげている。世界3位のステファノス・チチパス(ギリシャ)はTwitterに「すべての女性たちへ、あなたたちの強さ、回復力、そして優しさはパワフルだ。すべての女性が活躍できる明るい未来に向けて努力していこう」と投稿。WNBA(女子プロバスケットボールリーグ)の試合にも頻繁に足を運んでいる世界16位のフランシス・ティアフォー(アメリカ)は、Instagramのストーリーに国際女性デーを祝うコメントを投稿。「女性はすべてにおいて評価されるべきだ。彼女たちは素晴らしい子どもたちを世に送り出し、世界をより良い場所にしてくれる。とても勤勉で、男性と同じくらい有名になる価値がある」と綴った。
※為替レートは2023年3月10日時点
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「ATP500 サンクトペテルブルク」でのシャポバロフ
(Photo by Mike Kireev/NurPhoto via Getty Images)