現在世界ランキング3位の24歳ステファノス・チチパス(ギリシャ)と世界7位の25歳アンドレイ・ルブレフ(ロシア)。対戦成績はチチパスの6勝5敗となっており、2人を隔てるものはほとんどない。互いとの対戦ではどちらも3試合以上続けて勝利したことはなく、ストレートでの勝利も稀だ。
この基調は2022年も続き、3度の対戦は毎回最終セットまでもつれた。チチパスが「ATP1000 マドリード」と「ATP500 アスタナ」での最初の2試合で勝利したが、トリノでの「Nitto ATPファイナルズ」で最後に笑ったのはルブレフであった。ATP(男子プロテニス協会)の公式オンラインメディアがこれらの3試合を振り返り、最高に数えられるライバル関係の一つを紹介している。
1.「ATP1000 マドリード」準々決勝 チチパスが6-3、2-6、6-4で勝利
「ATP1000 モンテカルロ」のタイトル防衛に成功してから1ヶ月も経たないうちに、チチパスはマドリードでまたしてもクレーコート大会で好成績を収めた。1セットも落とさずに準々決勝に突入し、ルブレフから第1セットを奪ったチチパスは、試合がこじれるに伴ってこの週で初めて本当の抵抗にあった。
第1セットではサーブが好調で、第4シードのチチパスはサービスゲームで合計6ポイントしか落とさなかった。しかし、第2セットではルブレフのフォアハンドが大きなダメージを与えた。最終セットの競り合いではどちらも相手を引き離すことができず、タイブレーク突入が予想された。しかし4-4で迎えたルブレフのサービスゲームでチチパスが見事なプレーを見せてリードを奪い、続くゲームでこの激戦を制した。
「彼は本当に、ショットにすごく力を込めていて、次に何が来るか予想するのは簡単じゃなかった」と最終ゲームでルブレフに握られた2度のブレークポイントをしのいだチチパスは語った。「でも、最終的な結果はとても嬉しいよ。彼との対戦はいつだって簡単じゃない。最後のゲームでは本当に、最高の力を出して、魂をこめてなんとか切り抜けなければいけなかった。こういういい形で終えるためにね」
2時間の熱闘の影響もあったのか、チチパスは続く準決勝でフルセットの末にアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に敗れた。
2.「ATP500 アスタナ」準決勝 チチパスが4-6、6-4、6-3で勝利
5月のマドリードでの対戦の5ヶ月後、二人は10月にカザフスタンのハードコートで再戦。ルブレフが素早いスタートを切り、3度のブレークポイントを防いで第1セットを手にしたが、第2セット以降にプレッシャーのかかるポイントで強さを見せたのはチチパスであった。何度か苦労しつつもサービスゲームをキープすると、チチパスはどちらのセットでも後半で攻撃に成功し、この年6度目の決勝に駒を進めた(最終的にチチパスは2022年に7度決勝に進出し、そのうち2度優勝している)。
チチパスはこの試合での逆転の鍵として自分のプレーの幅広さと攻撃性を挙げつつ、見ごたえある試合を実現する上でルブレフが果たした役割も認めた。「僕はたくさんの種類のショットを混ぜながらプレーして、試合の終盤にかけてそれがうまくいった。情熱と決意をたくさん込めて、そういうショットを追い求め続けたよ。簡単ではなかった。先に1セット取られていたからね。ネットの向こう側にいるすごくいい対戦相手に対応しなければいけないから、身体的にとても厳しい格闘になった。決意を固く持っていられたおかげでこれほどうまくいって、自分自身に満足しているよ」
決勝ではもう一度反撃する力はチチパスになく、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)にストレートで敗れている。
3.「Nitto ATPファイナルズ」ラウンドロビン ルブレフが3-6、6-3、6-2で勝利
トリノではルブレフが劣勢から逆転する番だった。ルブレフはそのようにして、2年連続で出場したシーズン最終戦のラウンドロビンでチチパスを破った。二人の2022年の対戦には重要性が増していた。この試合はグループステージを締めくくる勝者総取りの一戦で、勝った方が勝ち抜きラウンドに進むこととなっていたのだ。
序盤はチチパスが痛烈なプレーを見せ、サーブとフォアハンドでの意地悪なほどの仕打ちで最初のセットを素早く手にした。しかしルブレフは諦めず、3度目の「Nitto ATPファイナルズ」出場にして初めて準決勝に進出した。第1セットでチチパスが支配的であったのと同じように、ルブレフはそれに匹敵しさらに上回るほど、試合の後半を支配した。
第2セット3-3の場面以降、ルブレフは両側からウィナーを放ったり、リターンで踏み込んで素晴らしい効果を挙げたりして、最後の11ゲームのうち9ゲームを獲得した。「諦めなかったよ。闘い続け、プレーを続けた。最初のセットでは40-0の場面から馬鹿みたいな形でゲームを落として、少し感情を失ってしまった。大きな感情をやりすごしたよ…。全力を尽くすことに徹すればチャンスはあると思った。なんとか試合をひっくり返すことができたよ」
この試合の後、チチパスは「ルブレフは少ししかない武器で何とか勝った(パワーはあるがバラエティはない)」と発言し、その潔くない態度で物議を醸した。ルブレフの盟友でやはり以前チチパスと揉めたことのある元世界王者ダニール・メドベージェフ(ロシア)はこの発言にかなり怒っていたようで、3ヶ月もたった先日「ATP500 ドバイ」決勝でルブレフを負かした後で、「前に誰かがルブレフは少ししか武器がないと言ったけど、そんなことはない。彼にはグランドスラムで優勝する力がある。あんなことを言った相手にこれから何度も勝てますように」とチチパスを当てこすった。ルブレフ本人は「チチパスは後で謝った」と言い、メドベージェフほど気にしてはいないようだったが。
開催中の「ATP1000 インディアンウェルズ」(アメリカ・インディアンウェルズ/3月8日~3月19日/ハードコート)に、チチパスは第2シード、ルブレフは第6シードとして出場。どちらも順当に勝ち進めば、準々決勝で対戦予定だ。また二人の手に汗握る熱戦をこの大舞台で見ることができるだろうか。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「ATP1000 モンテカルロ」で優勝したチチパス(左)と準優勝のルブレフ
(Photo by Alexander Hassenstein/Getty Images)