6つのグランドスラムタイトルを誇るダブルス元世界女王のクリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)が、線審による誤審への懸念を示し、WTA(女子テニス協会)に対しすべての試合で機械による自動ライン判定を導入するよう訴えた。だが、選手の誰もが賛同するわけではないようだ。スポーツウェブメディア Sportskeedaほか複数のメディアが伝えている。
ムラデノビッチが主張するきっかけとなったのは、「WTA250 リヨン」での一戦。シングルス世界145位として挑んだ同大会の1回戦で当時世界36位のペトラ・マルティッチ(クロアチア)と対戦し、6-3、3-6、5-7の逆転負けを喫した。ムラデノビッチが「かなり競った展開だった」と形容したこの試合の第3セット終盤、マルティッチが6-5、40-30でマッチポイントを握って迎えた場面で、ムラデノビッチのフォアハンドのクロスは線審によりアウトと判定され、試合終了に。しかし、ムラデノビッチはこのボールが入っており、本来であればデュースになっていたはずだと確信。試合後、WTAツアーに宛てて、自動ライン判定を積極的に導入するようInstagramのストーリーで呼びかけた。
「多くのものがかかるこのレベルでのテニスの試合では、本当に数ポイントの勝負なの」とムラデノビッチは綴った。「線審と主審が判定する、自動ライン判定のない状態では、残念だけれど毎日のように選手たちに不当な判定が下されているわ」
「このレベル(WTAツアー)では審判では不十分なのよ(彼らが悪いと言っているわけではないわ!)。私は、すべてのボールが自動ライン判定の対象となることに大大大賛成よ!このスポーツがその方向に発展していくことを願っている」
「どういうことか気になっている人たちへ…あれは相手のマッチポイントだったの…第3セット、私から見てゲームカウント5-6、30-40の場面だった。素晴らしい試合だったけど、運がなかった。私たちに何ができる?残念だけど何もできないわ。次に向かうだけね」
しかし、すべての選手がムラデノビッチに同意するわけではない。全コートで自動ライン判定が採用された今年の「全豪オープン」でベスト8に終わった元世界5位のエレナ・オスタペンコ(ラトビア)は、同システムがうまく機能していないと語る。
準々決勝でのちに準優勝するエレナ・ルバキナ(カザフスタン)に2-6、4-6で敗れたオスタペンコは、自身のプレーが主な敗因だとしながらも、ライン判定が明らかに間違っていた場面がいくつもあったと述べた。
「大会で使われているシステムにあまり満足していないわ。そのうち数回は、数cm差といった際どいものでもなくて、もっと大きい差だった。でも私には何もできない。そういうものだから」
オスタペンコが不満に思う点は判定の精度だけではないそうで、次のように説明している。
「まず、(判定が)とても遅い時があるの。もうこちらがボールを打ってしまった後で、その前の相手のボールが”アウト”だったと聞こえることがある。線審がいる時はそうではないわ」
「正直に言うと、ホークアイシステムを採用した上で線審もいるのが望ましいわ。その方がもっと正確で、ミスが少ないと思う。私の意見ではね」
オスタペンコの主張を証明するように、今年の「全豪オープン」では自動ライン判定の明らかなミスが目撃されている。混合ダブルスでサービスボックスに入ったサーブがフォールトと判定され、しばらく試合が中断されたのちに主審が判定を訂正していた。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2022年「全仏オープン」女子ダブルスで優勝したムラデノビッチ(左はガルシア)
(Photo by Robert Prange/Getty Images)