怪我から復帰した元世界ランキング20位のギド・ペラ(アルゼンチン)が、2月に行われた「ATP250 コルドバ」で16ヶ月ぶりのツアー勝利を手にした。長らくツアーから離れ、一時は引退も考えたという彼の支えとなったのが家族の存在だ。ATP(男子プロテニス協会)の公式ウェブサイトが伝えている。
「ATP250 コルドバ」に出場していたペラは、練習が終わるとすぐ選手ラウンジへと向かった。生後半年あまりの娘アリアナちゃんがまだそこで昼寝をしているか、それとも母親と一緒にホテルへ戻ってプールで楽しんでいるかを確かめるためだ。そしてまだラウンジにいたアリアナちゃんの顔を見ると、彼の顔はパッと輝いた。そこにいたのはテニス選手ではなく一人の父親だった。
2019年の「ウィンブルドン」で当時世界8位のケビン・アンダーソン(南アフリカ)らを破って準々決勝に進出し、同年8月にキャリアハイの世界20位へたどり着いたペラ。2018年から交際していたモデルのステファニーさんと結婚し、2022年7月に第一子となるアリアナちゃんが誕生したペラは現在、テニス選手と父親という2つの役割を頻繁に切り替えている。
「ATP250 コルドバ」で2019年に準優勝していたペラだが、世界1018位だった今回はワイルドカード(主催者推薦枠)で出場権を獲得。1回戦で当時世界221位のアンドレア・ババッソーリ(イタリア)に6-2、6-2で勝利し、2021年10月の「ATP1000 インディアンウェルズ」以来、実に16ヶ月ぶりのツアー勝利を挙げた。ペラは慢性化していた膝の怪我の影響で、2021年10月から2022年11月までツアーを離脱。2023年シーズンは「全豪オープン」で始まったが、世界29位のフランシスコ・セルンドロ(アルゼンチン)にストレート負けを喫して1回戦敗退。その後アルゼンチンに戻り、家族とともにクレーシーズン開幕を迎えていた。
ペラは久々に勝てたことについて「叫びたい気分だった。また苦しみながらも対戦相手と競い合い、努力してタフな選手になれたと感じた。祖国に戻って臨んだ最初の試合に勝てたのは本当に特別なことだ。自分の家族がそばにいればなおさらね」と語った。「ありきたりな言い方はしたくないけれど、ここに戻ってこられたのは家族のおかげだ。かつての僕は(怪我で)打ちのめされて、辞める覚悟ができていたからね」
「この初戦はこれまでとはまったく違う試合だった。勝つ必要があると感じていたから。というのも、自分は優れた選手だと再び感じられたし、コートでとてもいい気分だったからね。相手のサーブをすべて返せたし、自分のサーブはうまくキープできた。そして、テニスでは最も難しいことだけど、緊張せずにいられたんだ」
「この大会はとても心地がいい。ここでプレーするのが好きだ。コートの球足は結構速めで、ボールが速く返ってくるけれど少し重たいから、うまくコントロールできるんだよ」とペラは語る。「実は準備がとてもうまくいった。金曜日に着いたから、初戦の前にトレーニングする時間がかなりあったんだ」
コルドバ大会では、残念ながら続く2回戦で予選勝者の世界138位ウーゴ・デリエン(ボリビア)に敗れてしまった。現在32歳のペラの今の順位は世界732位。1年以上のブランクを経て2022年終盤にツアーに復帰した彼の目標は、毎日を楽しむことだ。
「少しずつ、以前みたいな気持ちに戻っているところだよ。いいプレーをして勝利を重ね、ここしばらく感じていない自信を取り戻したい。あの自信が僕をトップ20へと連れて行ってくれたんだ」
「でも長期の目標を立てるつもりはない。立てると、トレーニングを始めた時に自分の競争力がどれほど衰えているかがはっきり見えてしまい、気分が悪くなるから。だから今は週ごと、もしくは1ヶ月先だけを考えるようにしている。そうすれば毎日の練習に集中できるし、目前に迫った試合以外のことを考えずに済むからね」
「ちょっと前までは、家にいて炭酸飲料を飲みながらソファーでテニスの試合を見る、という状態にもう少しでなるところだった。でも家族がやる気にさせてくれて、僕は今ここにいる。久々の勝利を家族と祝えたことはずっと忘れないよ」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのペラ
(Photo by Mackenzie Sweetnam/Getty Images)