テニスの元世界王者アンディ・マレー(イギリス)は先日、実にレベルの高い試合を繰り広げてテニスファンを喜ばせた。グランドスラムで3度優勝しているマレーは、今年の「全豪オープン」でもマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)とタナシ・コキナキス(オーストラリア)から見応え十分の逆転勝利をあげている。
その「全豪オープン」の後、マレーは先週の「ATP250 ドーハ」と、今週の「ATP500 ドバイ」(UAE・ドバイ/2月27日~3月4日/ハードコート)の両大会へのワイルドカード(主催者推薦枠)を獲得。これによりマレーはトミー・ハース(ドイツ)の持っていたワイルドカードの獲得回数53回という最多記録に並んだ。スポーツウェブメディアSportskeedaなどが報じた。
2008年と2009年に2度「ATP250 ドーハ」を制しているマレーは、ロレンツォ・ソネゴ(イタリア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、アレクサンドル・ミュレー(フランス)、イリ・ラフェチュカ(チェコ)とのフルセットの厳しい戦いを4試合勝ち抜き、同大会で5度目となる決勝進出を果たした。
ダニール・メドベージェフ(ロシア)との決勝に至る過程で、マレーは合計8本のマッチポイントをしのいでいた。ソネゴとの試合で3本、ラフェチュカとの試合で5本だ。
テニス解説者のジョフリー・チゼバー氏は、マレーの最近の調子について語る中で、大会が彼にワイルドカードを与える理由は彼のエンターテインメント要素だと意見を述べた。
「今では彼もある意味でそれを認めているように思う。彼は文字通りにそう言っているからね。それが、彼がいつもワイルドカードを獲得する理由だよ」マレーは苦しみながら惨めな試合を戦うことを楽しんでいるのではないかという指摘がなされた時に、チゼバー氏はこう話した。
チゼバー氏は、テニスファンたちはマレーの「お買い得な」プレーをとことん楽しんでいるとして、それが大会主催者たちが彼にワイルドカードを与える理由になっているとの見方を示した。
「くだらない声もたくさん聞こえてくる、彼がワイルドカードを全部手にしていると怒っている声がね。一方で、それこそがお金を払って彼のプレーを見に行く理由だし、ワイルドカードを誰に与えるかを決めるのは大会だ。だから彼に与え続ければいいんだ」
チゼバー氏はさらに、マレーは今年中に少なくとももう1度はワイルドカードを獲得し、単独で最高記録を保持することになるだろうと自信を見せた。「ワイルドカードを53回。それで彼は史上最多のトミー・ハースと並んだ。彼は今年54回目を手にして、この記録を更新するに違いない」
マレーは「ATP250 ドーハ」で全力を尽くしたが、決勝では自身と同じく元世界王者のメドベージェフにストレートで敗れた。これはマレーにとって、2022年6月に「ATP250 シュトゥットガルト」でベレッティーニに敗れた時以来の決勝進出であった。
マレーはドーハでの準優勝の後、2017年に優勝経験のある「ATP500 ドバイ」に出場し、1回戦で世界ランキング11位のフベルト・フルカチュ(ポーランド)と対戦する予定であったが、腰の怪我を理由に棄権。これにより、マレーはハースの持つワイルドカード獲得53回という最多記録にはまだ並ばないこととなった。
マレーは「ATP250 ドーハ」の決勝の後で、800勝を目指すという目標をあらためて強調し、こう語った。「僕は今でも大会で優勝したり主要大会で終盤まで勝ち上がったりするという野望を抱いている。それに、キャリア800勝を達成したい。わからないけれど、あと75勝くらいじゃないかな」
マレーの通算戦績は、現在723勝236敗。800勝までは、あと77勝だ。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全米オープン」でのマレー
(Photo by Diego Souto/Quality Sport Images/Getty Images)