ニュース News

元ダブルス女王の36歳ミルザが引退「自分自身の最大のチアリーダーにならなければ」

2016年「全豪オープン」女子ダブルスを制したヒンギス(左)とミルザ

ダブルスの元世界女王サーニャ・ミルザ(インド)は、先週火曜日にプロ生活最後の試合を戦い、自身が地元大会だと考えている「WTA1000 ドバイ」でキャリアを終えた。WTA(女子テニス協会)公式オンラインメディアなどが報じている。

「私の最初の記憶は、ここでスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)と対戦して勝ったこと。会場は満員で、私にとってはそれが、インド以外のこういうスタジアムでプレーした初めての経験だった。ここでは何度も素晴らしい試合を戦った。ダブルスで優勝することができたし、シングルスでもいいプレーができた。でも何よりも、母国インドでは長い間大会が開催されていなかったから、この大会を地元大会として楽しみにしていたの」

「今日は感謝であふれているわ。自分の望む形でできて、しかもいいプレーができている時にというのは最高ね。テニスには今後も関わっていくつもり、試合には出ないというだけ」とミルザは語った。

36歳のミルザは、語り継がれる遺産を築き、女子テニスツアーに消えない足跡を残した。女子テニスを支える歴史やインフラがほとんどない国で、ミルザは2003年にプロに転向。ハイデラバード生まれのミルザは、それからの20年間でシングルスとダブルスの両方で歴史的なキャリアを築くこととなった。2005年には生まれ故郷で行われた「ハイデラバード・オープン」で優勝し、インド人女子選手として初めてWTAのシングルスのタイトルを獲得、WTAの年間最優秀新人選手に選出された。シングルスでのツアー優勝は1度、通算271勝161敗。そしてダブルスでは43回優勝、536勝248敗という素晴らしい成績を残した。

元世界1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は、ミルザについてこう語った。「プロになって初めてグランドスラムの出場資格を得た時、オーストラリアで彼女に負けた試合のことは忘れられない。彼女がインドやこの地域のためにしてきたことは、間違いなく並外れていると思う。これまではお手本になる人物がいなかった少女たちも、今は何ができるのかがわかる。これはかけがえのないことだと思うわ。それが彼女の遺産になる」

強烈なフォアハンドを武器としたミルザはダブルスに専念するようになる前に、シングルス世界ランキングで最高27位に到達。2009年「全豪オープン」の混合ダブルスではマヘシュ・ブパシ(インド)と組んで優勝し、初のグランドスラムタイトルを獲得した。さらに2012年「全仏オープン」と2014年「全米オープン」でも混合ダブルスで優勝している。

だがミルザに新しい次元の成功をもたらしたのは、2015年にマルチナ・ヒンギス(スイス)とペアを組んだことであった。過去10年間で最も成功をおさめたチームに数えられるこのペアで、ミルザは2015年の「ウィンブルドン」と「全米オープン」、そして2016年「全豪オープン」と、3大会連続でグランドスラム優勝。2015年にダブルス世界ランキングで1位に上り詰め、WTAツアーで1位となった初のインド人女子選手となった。

「女の子、特に私たちの地域で既存の枠組み外のことを選ぶ女の子は、何かができるというより、できないと言われる方が多い。私の場合もそうだった。若い女性に社会が期待することと違うことをしようとする女の子たちの多くが、同じ状況にある。そういう女の子たちに、自分自身を支えて、自分を信じなければいけないと伝えたい。自分が自分の最大のチアリーダーでなければ、自分を信じてくれる人は現れない」

これが、選手生活を終えた後もミルザが強調し続けようとしているメッセージだ。ミルザは既に、インドのプレミアリーグに加盟するロイヤル・チャレンジャーズ・バンガロールから、女子クリケットチームのメンター役に任命されている。ミルザは、自分は投球やバッティングについて助言することはないものの、注目を浴びながら過ごした20年の経験を生かして、女性たちが安全に、成功に満ちたキャリアを築けるよう支援したいと語った。

「わたしがそこにいるという構想は、クリケットとは何の関係もない。実際は、若い女子選手たちのメンタル面と関係しているの。彼女たちは、キャリアがあって、お金がたくさんあって、何百万単位のお金が自分たちにかかっているという立場に、これまで立たされたことがない。選手の多くはテレビに出たこともないし、広告や撮影の経験もない。そういうことで気が散ってしまうことはありがちよ。それにとても期待されているから、緊張してプレッシャーを感じてしまいやすい」

「私がしたいことをさせてもらえるから、本当に素晴らしいことでもある。この亜大陸の未来のために、女子スポーツをもっと良く、もっと皆に受け入れられて、もっと認められるものにしていくために、私の経験を共有することができる立場で仕事ができる」

ミルザは、愛するテニスから姿を消してしまうことはないと請け合った。しかし目下は、4歳の息子イズハンくんの学校や、自身の将来の計画に対するてこ入れをすることを楽しみにしているようだ。

「テニスこそが私の人となりを作ってくれたと思っているわ。外側で私を作ったというだけではなく、内側でも私を作ってくれた、私という人間を。本当に多くのことを教えてくれたわ」

ミルザは、スポーツ選手志望者たちにプロスポーツがキャリアの選択肢になりえるということを気付かせることができていればいいと語った。「インドで、クリケット以外のスポーツで有名なスーパースターには女性が多い。バドミントン、ボクシング、レスリング。過去数回のオリンピックでは、男子選手よりも女子選手の方が多くのメダルを獲得している。これが、私がテニスに捧げた過去20年の間に、テニスが私にもたらしてくれたものだと思う。2倍にして返してくれたわ」

ミルザの引退を受けて、多数の現役選手や元選手がソーシャルメディア上でコメントを寄せている。引退試合となった「WTA1000 ドバイ」でペアを組んだマディソン・キーズ(アメリカ)は、Instagramに「あなたがテニスのためにしてくれたこと、そして友人として私のためにしてくれたことの全てに感謝する」と投稿。

他にも、2021年の「WTA1000 シンシナティ」でミルザとペアを組んだオンス・ジャバー(チュニジア)、ダブルスでペアを組んで活躍しているジェシカ・ペグラ(アメリカ)とココ・ガウフ(アメリカ)、世界女王イガ・シフィオンテク(ポーランド)、そして混合ダブルスでミルザと2009年の「全豪オープン」優勝を果たしたブパシらが、ミルザに感謝や祝福の言葉を贈っている。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2016年「全豪オープン」女子ダブルスを制したヒンギス(左)とミルザ
(Photo by Scott Barbour/Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

WOWOWテニスワールド編集部

facebook twitter

速報や最新ニュース、グランドスラム、ATP、WTAなどの大会日程と試合結果情報など、テニスのすべてをお届けします!

WOWOWテニスワールド

  1. Home
  2. ニュース
  3. 元ダブルス女王の36歳ミルザが引退「自分自身の最大のチアリーダーにならなければ」