テニス界のアラブ系選手の躍進に貢献した39歳のマレク・ジャジリ(チュニジア)が、「ATP500 ドバイ」(アラブ首長国連邦・ドバイ/2月27日~3月4日/ハードコート)で現役選手として最後の試合を戦い終えた。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトが報じている。
ジャジリは2004年の「デビスカップ」でツアーレベルの初勝利を収め、2018年の「ATP250 イスタンブール」で唯一ツアーレベルの決勝に進出。決勝の対戦相手は当時世界ランキング114位のダニエル太郎(日本/エイブル)で、ダニエルにとっても初の決勝だった。ジャジリはそのチャンスでダニエルに敗れてしまったこともありツアータイトルは最後まで手にできなかったが、チャレンジャー大会で8度優勝したほか、2018年にトップ10選手から3勝をあげている。「ATP500 ドバイ」で当時世界4位だったグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)、「ATP250 イスタンブール」で同4位のマリン・チリッチ(クロアチア)、そして「ATP500 北京」で同5位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を破った。
2019年にキャリアハイとなる世界42位まで登り詰めたジャジリは、1973年にATPが現在のランキングシステムを導入して以降、トップ50に入った5人のアラブ人男子選手のうち1人。今週の「ATP500 ドバイ」にはワイルドカード(主催者推薦枠)として出場し、1回戦で世界ランキング29位のアレハンドロ・ダビドビッチ フォキナ(スペイン)に2-6、0-6で敗れて20年以上のキャリアに幕を閉じた。
チュニジアと言えば今やアラブ系女子選手としていくつもの記録を打ち立ててきた元世界2位オンス・ジャバーの母国としても有名だが、ジャジリは「チュニジアの多くの世代にとって僕が良い刺激になっていればと思っている。チュニジアのテニスはここ数年でずいぶんと発達した。たくさんのテニスクラブがオープンし、多くの人がテニスをするようになった」と次の世代への期待を口にしている。
ジャジリは最後の試合について、「気持ちはとても高ぶっていたよ。最後の大会であれば、その時戦っている試合が最後になるかもしれない。実際、僕にとっては最後の試合になった。コートに立っている間はすべての瞬間を楽しもうとしたよ。何回もここの大会に出場しているから、ドバイで最後の大会を迎えられて嬉しい」と述べ、こう続けた。
「引退を決断するのに時間はかからなかった。去年はいくつもの怪我に見舞われて苦しい一年だった。プレーしては休む、の繰り返し。だから自然と(引退を)決断できたけど、止めるのは簡単なことではないね。20年以上もプレーしてきたんだ。長い間、日々の生活の大半を占めていたことを止めるのは難しい。起きたら練習に行く。トップ100、トップ50入りといった目標を達成するためにあらゆる努力をする。そのためのルーティンを毎日やってきた。これからはルーティンが変わることになるけど、どうなるか楽しみだよ」
「僕はたくさんの大会のセンターコートでプレーしてきた。観客席が満員だといろいろな感情が沸き上がってきて最高なんだ。テニス界の一番いい時代に選手生活を送ることができたと思っている。ロジャー・フェデラー(スイス)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(イギリス)がいる時代にトップ50に入れたんだからね。彼らと同じ大会に出場できて光栄だよ。ここ数年のATPのサポート、そしてテニスが僕に与えてくれたものすべてに感謝している」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「ATP250 ドーハ」でのジャジリ
(Photo by Mohamed Farag/Getty Images)