• 【マッチハイライト動画】カサキナ vs シフィオンテク／2022年「全仏オープン」準決勝

25歳のカサキナは、昨年の「全仏オープン」でグランドスラムでは最高成績となる準決勝進出を果たした。同年はその後「WTA500 サンノゼ」と「WTA250 グランビー」でタイトルを獲得し、10月にキャリアハイの世界8位に到達。最後は「WTAファイナルズ　フォートワース」に出場している。2018年に初めてトップ10入りを果たしたカサキナは、それからの数年間はプレッシャーに苦しんで思うような成績を残せず、一時は引退も考えたという。それでも徐々にテニスへの情熱を取り戻していった努力が2022年シーズンに実を結んだ。

2023年シーズンもグランドスラムという大舞台で勝ち進むことを目標に掲げたカサキナは、「WTA500 アデレード 2」で準優勝と好調なスタートを切った。ところが、続く「全豪オープン」では当時世界97位だったバルバラ・グラチェワ（ロシア）に1-6、1-6で敗れて初戦敗退。シーズン最初のグランドスラムは一時間と経たずして終わった。今年の「全豪オープン」では猛暑と雨により序盤の試合がいくつも順延となり、カサキナの1回戦も予定より丸一日遅れて開始された。過酷な条件だったとはいえ、カサキナはメンタル面の強さが足りなかったと話しており、負けた直後をこう振り返る。

「いつものようにシャワーを浴びながら30分くらい泣いて、翌日は少し気持ちが落ち着いたわ。こういう大きい大会で負けた時は切り替えるのに2日くらいかかるわね。恋愛と同じよ。別れた後にまた誰かを愛するには時間が必要でしょ。大きな大会ほど勝ちたいという気持ちが強くなるのは当たり前で、その分プレッシャーも大きくなるけど、そういう中でもいい結果を残すことが今の私の目標」

そんなカサキナは、サーブに苦しんだ昨年を乗り越えて今年の「全豪オープン」で初のグランドスラムタイトルを獲得した世界2位のアリーナ・サバレンカ（ベラルーシ）を称えている。「テニス界の外部の人間にはわからないかもしれないけど、私のように内部の様子をすべて知っている人間は、彼女がこの優勝のためにどれだけ努力してきたかを知っている。ツアーで最も努力家の一人である彼女はこのタイトルにふさわしいわ」

カサキナは友人である選手にも大いに影響を受けたという。「アネット・コンタベイト（エストニア）にはすごく感謝している。去年彼女が世界2位になったのを見て、私もそこまで行きたいと思った。彼女ができるなら、私にも手が届くんじゃないかって」

「自分が若くてまだまだこれからだった頃はアンジェリック・ケルバー（ドイツ）、シモナ・ハレプ（ルーマニア）、セレナ・ウイリアムズ（アメリカ）らがトップにいて、彼女たちはあまりにも強くて遠い存在だった。でもその後、一緒に肩を並べて競い合ってきた選手たちがビッグタイトルを獲得したり高い順位につけるのを見ていると、自分にもできるような気がしてくるの」

近年トップ選手の入れ替わりが激しい女子ツアーだが、昨年は世界女王のイガ・シフィオンテク（ポーランド）がツアーを席巻し、「全仏オープン」と「全米オープン」を制した。一時は「シフィオンテク対そのほかの選手」といった構図が出来上がっていたが、2023年に入るとサバレンカをはじめ、「全豪オープン」で準優勝した世界10位のエレナ・ルバキナ（カザフスタン）や世界3位のジェシカ・ペグラ（アメリカ）、世界14位のビクトリア・アザレンカ（ベラルーシ）らの活躍も目立つ。カサキナはシフィオンテクの強さを認めつつ、「彼女に限らず、プレッシャーが大きくなればずっと勝ち続けることは難しくなるわ。それが普通よ。ラファエル・ナダル（スペイン）、ロジャー・フェデラー（スイス）、ノバク・ジョコビッチ（セルビア）は別だけどね」と話している。

続けてカサキナは昨年の「全仏オープン」で1セットも落とすことなく準決勝まで勝ち進んだ時のことを、そのジョコビッチに例えて振り返った。「勝てる試合にはエネルギーをかけ過ぎずに勝つことがすごく大事だと感じたわ。その方が次の試合に疲れが残らないから。去年の“全仏オープン”では決して絶好調だったわけではなく、どの試合も及第点で勝てたという感覚ね。ジョコビッチはグランドスラムだけでなく、ほとんどの試合をそうやって勝ってきたんじゃないかと思うの。初戦や決勝で苦戦することはあっても、大会全体を見ると、彼はメリハリをつけながら最低限の労力で優勝にたどり着いているように見えるわ」

（WOWOWテニスワールド編集部）

※写真は2022年ハンブルクでのカサキナ
(Photo by Alexander Scheuber/Getty Images)