サウジアラビア生まれの25歳マイケル・モー(アメリカ)が4年ぶりにトップ100に復帰し、自己最高の世界ランキング82位まで上昇。しばらく停滞していたキャリアを上向きにさせたものは何だったのか、モーは考え方の変化が鍵となったことを明かした。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトが報じている。
2022年の「全米オープン」予選で、モーは1回戦勝利まであと1ゲームに迫っていた。同大会でそれまでに3度本戦出場経験があったものの、4度は予選敗退。そしてモーがジル・シモン(フランス)に6-2、5-2でリードしたところで事態が急激に悪化。その後、勢いを失ったモーは1ゲームしか奪えず、6-2、5-7、1-6で敗れた。
だがモーは、この敗戦を学ぶ機会と捉えた。シモンに敗れて以降、モーはチャレンジャー大会で14試合のうち13試合に勝利し、アメリカのケーリーとフェアフィールドで行われた大会で優勝。モーは新しい視点を得るために本を読み、心理学者の助けを借りたという。
「“全米オープン”とその前のハードコートの大会では、うまくやろうと自分にプレッシャーをかけていた。いくつかの場面ではいいプレーをしていたと思うけど、試合には勝てなかった。シモンに対しては6-2、5-2でリードして、そこまではおそらくあの年最高の2セットをプレーできていた。なのに状況が一変した。今までのキャリアで最も困難な敗戦の一つだった」
「あの敗戦で、自分を上達させてくれるものは何かを一から探り直す必要に迫られた。自分の姿を鏡で見て、どうやったら向上できるか考え始めた。本も読んだし、心理学者とも話をして、自分をもっとよく知ろうと努力した。考え方をよりポジティブで楽観的な方へ変えていった。たとえ物事が上手くいかない時でもね。自分のエネルギーを最適な方法で使えるように導こうとした」
「昔IMGアカデミーでメンタルコンディショニングの部長を務めていて、最近タンパベイ・レイズに採用された心理学者がいて、彼に連絡を取った。話したいと思った時やメッセージを送りたいと思った時に、ちょっと訪ねる。毎週一回会うよりずっと自然なんだ。その瞬間、自分がどう反応するかが大きな部分を占める。でも色々なアイディアや異なる視点を検討するのが望ましい。その状況について、何が悪かったのか、どこを改善できるのか、より深く学ぶことができる」
モーの新しい捉え方は効果を発揮し、カナダのドラモンビルで行われたチャレンジャー大会で準優勝して2022年シーズンを終了。だがモーの快進撃はそこで終わらなかった。ラッキールーザーとして「全豪オープン」の本戦に出場したモーは、2回戦で第12シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を撃破。その前の1回戦ではギリギリの戦いを強いられたが、なんとか突破口を見つけることができた。
「僕は0-2で負けていた。ローラン・ロコリ(フランス)が第3セット5-4でサービング・フォー・ザ・マッチとなった。以前だったら、ちょっと他のことを試したりして試合に負けていたかもしれない。代わりに、実際に試合に勝てるようなことにエネルギーを集中させた。今まで読んだ本や話をした人がそういう部分をすごく助けてくれた」
「なぜそういう状況になってしまったのか、何が悪くて1セットを失いブレークを与えてしまったのか、そんなことを考えていたら試合は終わりだ。考えを“よし、1セットを失ってブレークも与えてしまった、自分は何をするべきか?”へと変化させるんだ。落とし穴から抜け出せる確率はずっと高くなる」
「全豪オープン」後にモーは2018年10月以来となるトップ100復帰を達成。肩の怪我により何度もキャリアを中断せざるを得なかったモーにとって、自己最高の82位到達は嬉しいことだった。
「1年前は270位くらいまで落ちて、色々といい状態でなく、多くのことに疑問を抱いた。今、自己最高に到達できて、たくさんのことが変わった。やっと健康な状態を継続できて嬉しいよ」
モーにとってはディテールにこだわったことが功を奏した。多くのファンは選手のコート上の姿しか見ることができないが、彼らの水面下の努力は想像を超える。チャレンジャー大会で通算7回優勝したモーは、「全米オープン」予選での敗戦をモチベーションに変え、解決策を見出した。
「すべてが、試合でのプレーに大きな影響を与える。エクササイズの数々、コンディショニングのすべてが違いを生む。成功を約束するものは何もないけれど、自分を最高の状態にして、自分を助けるためにやれることは全てやらなきゃいけない」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのモー
(Photo by Daniel Pockett/Getty Images)