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ウクライナ侵攻開始から1年。賞金を全額寄付、締め出し処分に抗議【中立視点】

2022年「WTAファイナルズ」後のシフィオンテク

2022年2月24日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「特別軍事作戦を開始する」と発表したことで始まったロシアのウクライナ侵攻。それから1年が経つ中、世界全体だけでなくテニス界にも大きな影響を及ぼしてきた。そんな影響の数々を、ウクライナ、ロシア/ベラルーシ、中立(それ以外)という3つの視点から振り返ってみよう。

侵攻が始まった際、テニス界全体がウクライナ支持を表明。昨年3月にはATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)、グランドスラム4大会の運営団体が、人道支援とウクライナテニス連盟支援のために共同で70万ドル(約9500万円)を寄付。また、昨年の「全米オープン」と今年の「全豪オープン」でウクライナのためのチャリティーイベントが行われ、ラファエル・ナダル(スペイン)やアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、ココ・ガウフ(アメリカ)らが参加した。

さらに元世界王者のロジャー・フェデラー(スイス)やアンディ・マレー(イギリス)も侵攻が起きて間もないタイミングで寄付を発表。イギリスユニセフ協会の大使であり4人の子どもの父親でもあるマレーは、そこからの同シーズンに獲得した賞金をすべてウクライナのために寄付すると発表。以降のツアー大会で20勝を挙げ、寄付した総額は63万ドル(約8400万円)以上に上った。そんな彼の行動に触発された「ATP500 ワシントンD.C.」が、同大会でマレーが獲得した賞金と同じ金額を寄付すると約束している。また、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、ウクライナ軍の予備役に登録した元テニス選手のセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)に支援を申し出ている。

女子選手の中で特にウクライナ問題を訴えているのが、世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)。「私の国のすぐ隣で起きているから、ウクライナ人を支援することは私にとって本当に重要なことなの」と語るシフィオンテクは、侵攻が始まった直後から試合中に被るキャップにウクライナカラーのリボンを着け、大会で優勝する度にそのスピーチの中でウクライナへのメッセージを発信。先日「WTA500 ドーハ」で優勝した際にも、「(1年近く経っても)状況がほとんど変わっていないのは残念だけど、ウクライナの人たちには持ちこたえてほしい」と呼びかけた。また、昨年7月には自国でチャリティーマッチを主催し、40万ユーロ(約5700万円)を超える寄付金を集めた。

また、昨年4月の「ビリー・ジーン・キング・カップ by BNPパリバ クオリファイアーズ」でウクライナと対戦したアメリカは、「コートの外では仲間」だとして対戦前に両国の選手たちで一緒に食事会をしたり、試合のチケット売り上げの一部をウクライナのために寄付している。

なお、ATPとWTAはロシア、ベラルーシの選手にも平等な出場機会を与えるべきだという姿勢を当初から示しており、昨年「ウィンブルドン」をはじめとしたイギリス国内の開催大会が両国の選手を締め出した際には「ウィンブルドン」出場選手たちにランキングポイントを付与せず、運営側には罰金を科すという形で対処。今年は両国の選手も出場させるよう、罰金の半額免除などを提案する形で働きかけている。締め出し処分に対しては、ウクライナの選手たちが評価した一方、それ以外の国の選手たちの多くは異議を表明。ナダルやマレー、ジョコビッチといった現役選手のほか、ビリー・ジーン・キング(アメリカ)やマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)のようなレジェンドも抗議している。

※為替レートは2023年2月24日時点

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2022年「WTAファイナルズ」後のシフィオンテク
(Photo by Robert Prange/Getty Images)

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