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ウクライナ侵攻開始から1年。戦火からの脱出、軍への入隊【ウクライナ視点】

2022年「WTA250 モンテレイ」でウクライナカラーのウェアを着るスビトリーナ

2022年2月24日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「特別軍事作戦を開始する」と発表したことで始まったロシアのウクライナ侵攻。それから1年が経つ中、世界全体だけでなくテニス界にも大きな影響を及ぼしてきた。そんな影響の数々を、ウクライナ、ロシア/ベラルーシ、中立(それ以外)という3つの視点から振り返ってみよう。

最も大きな影響を受けたのはもちろんウクライナの選手たちだろう。

ウクライナ選手の中で侵攻問題の先頭に立つのは、元世界ランキング3位で「東京オリンピック」で銅メダルを獲得したエリナ・スビトリーナ。侵攻開始から間もなく妊娠が判明したためしばらく試合には出ていないが、国を代表する選手としてこの問題に真正面から取り組んできた。ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)の公式ウェブサイトからロシア、ベラルーシの選手の国旗が削除されることになったのも、スビトリーナが彼らに動いてもらうべく試合ボイコットを表明したことがきっかけだった。彼女はまたヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が主導する支援金を集めるためのクラウドファンディングサイト「UNITED24」にアンバサダーの一人として加わり、演説したり寄付活動を呼びかけたりしている。

元世界21位のデヤナ・イエストレムスカは、爆撃が始まった時は故郷オデーサ(オデッサ)で家族と暮らしていた。その後、国に両親を残して6歳下の妹イバンナと一緒に国外へ脱出し、姉妹で大会に出場。「プレーをすれば、自分の話やウクライナの話をする機会が増え、より多くの人に私たちの声を聞いてもらえる」というイエストレムスカは昨年3月の「WTA250 リヨン」で準優勝を果たすと、その賞金をウクライナの財団に寄付するとともに、「もし今ウクライナの人々が見ているなら、あなたたちは強くて、素晴らしい気力を持っていると伝えたい」と述べていた。9月には一時帰国し、故郷にいる祖父と会っている。

世界55位のマルタ・コスチュクは、侵攻以来、それまでにはなかったストレスにさらされるようになったと吐露。先月の「全豪オープン」では開幕早々に観客がロシア国旗を掲げて騒動が起きたことからその後はロシア、ベラルーシの国旗の持ち込みが禁止されたが、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)とアンドレイ・ルブレフ(ロシア)が対戦した男子シングルス準々決勝後に会場の外でプーチン大統領の顔が描かれたロシアの国旗を掲げたファンの姿がSNSで拡散されてしまう。これについてコスチュクは「どうやったらこういうことが起きるのか理解できない。旗を持ち込んではいけないという特別なルールがあっただけに、すごく傷ついている」と悲しんだ。

引退して間もない選手たちは戦場へ身を置くことに。侵攻が始まる直前に引退したばかりだった元世界31位のセルゲイ・スタコウスキーは母国の予備軍に登録。国のために戦う姿勢をSNSや海外メディアの取材を通して発信するほか、スビトリーナとともに慈善活動を行ったり子どもたちにテニスを教えたりしている。元世界13位のアレクサンドル・ドルゴポロフも同じく予備軍に加わり、銃の扱い方や戦い方の訓練を受けるほか、最近はドローン操縦を始めている。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2022年「WTA250 モンテレイ」でウクライナカラーのウェアを着るスビトリーナ
(Photo by Gonzalo Gonzalez/Jam Media/Getty Images)

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