テニスの世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はテニス界で多数の偉業を達成し、歴史に名を刻んできた。彼はずば抜けて優れたアスリートであり、何度も繰り返しライバルたちを上回ってきた。グランドスラムで22度の優勝を果たしているジョコビッチは、対戦相手たちから圧倒的な勝利を収めながら、絶体絶命の場面からも勝利をもぎ取ってきた。
そんなジョコビッチとの対戦成績で勝ち越している選手は多くない。ライバルの筆頭であるロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)は、しばらくの間はジョコビッチとの対戦成績で大差をつけて優位に立っていたが、ジョコビッチが状況を反転させ、フェデラーとナダルの両方に勝ち越している。だが、ジョコビッチに勝ち越していることを自慢にしている選手もいる。対戦成績でジョコビッチに勝っている5人の選手を、スポーツウェブメディアSportskeedaが報じている。
1. マラト・サフィン(ロシア)
元世界ランキング1位でグランドスラムを2度制しているサフィンのジョコビッチとの対戦成績は2勝0敗。初めて対戦したのは2005年「全豪オープン」の1回戦だが、これはジョコビッチが初めて出場したグランドスラムであった。ジョコビッチのキャリアは始まったばかりで、一方のサフィンは既に名声を確立していた。試合はかなり一方的で、サフィンが6-0、6-2、6-1で完勝。ジョコビッチは翌2006年も1回戦で敗退したが、その後「全豪オープン」で10度の優勝を果たすこととなる。
二人が次に対戦したのは2008年の「ウィンブルドン」2回戦。その年、二人のキャリアは正反対の方向に動いていた。ジョコビッチは同年の「全豪オープン」を制して頂点に上り詰め、一方のサフィンは世界ランキング50位圏外に陥落。対戦ではジョコビッチの勝利が期待されていた。ジョコビッチは前年の大会でベスト4に進出していたが、サフィンの最高成績は選手として最高潮にあった時期である2001年のベスト8進出であった。だがサフィンは年月を巻き戻したかのようなプレーで番狂わせを演じ、6-4、7-6(3)、6-2でジョコビッチを撃破。サフィンはそのまま準決勝まで勝ち進み、これが彼の「ウィンブルドン」での最高成績となった。
2. イリ・ベセリ(チェコ)
ベセリは才能ある選手だが、その能力を存分には発揮しきれていないようだ。しかし、ベセリはジョコビッチに対して2勝0敗という戦績を挙げることに成功している。初対戦は2016年の「ATP1000 モンテカルロ」で、ジョコビッチはこの年までに同大会で4度タイトルを獲得しており、ベセリとの2回戦に勝利するものと目されていた。しかし驚くべき番狂わせとなったこの試合では、ベセリが6-4、2-6、6-4で世界1位のジョコビッチに勝利。ベセリが世界10位以内の選手に勝ったのはこれが初めてであった。
次に二人は2022年「ATP500 ドバイ」の準々決勝で対戦。ジョコビッチが世界1位にとどまるためにはこの大会で優勝する必要があったが、ベセリがまたしても番狂わせを演じ、この時は2セットの接戦で勝利。ジョコビッチの敗戦を受けて、ダニール・メドベージェフ(ロシア)が新たに世界王者となった。しかしジョコビッチはその後の「ATP1000 インディアンウェルズ」終了後に、世界1位の座を取り戻した。
3. ニック・キリオス(オーストラリア)
何かとテニスファンの話題に上るキリオスもジョコビッチに2勝1敗と勝ち越しており、キリオスは折に触れてこのことを自慢していた。最初の2度の対戦は2017年のことで、これはジョコビッチが難局にあった時期である。初対戦は「ATP500 アカプルコ」の準々決勝で、この時はキリオスが7-6(9)、7-5で勝利した。二人はその数週間後の「ATP1000 インディアンウェルズ」で再び対戦。ジョコビッチは前年まで同大会を3連覇していたが、4回戦でキリオスと対戦し、6-4、7-6(3)でキリオスが勝利した。
キリオスは一昨年、ジョコビッチが自分に負け越していることを理由に、彼が最高のテニス選手になることはないと発言していた。「ノバクがグランドスラムで何度優勝しようと、自分にとって彼が最高の選手になることはない。彼とは2度対戦した。俺を倒せないなら、彼は史上最高の選手ではない」
その後、二人は2022年の「ウィンブルドン」決勝で対戦し、4-6、6-3、6-4、7-6(3)でジョコビッチがキリオスから初白星を挙げた。2023年「全豪オープン」でジョコビッチが優勝した後にキリオスが「モンスターを生み出してしまった」などと発言しているのを見ると、キリオスのジョコビッチに対する評価は変わったのかもしれない。
4. フェルナンド・ゴンサレス(チリ)
元世界5位で2007年に「全豪オープン」で準優勝したゴンサレスは、2000年代後半にもっとも安定していた選手の一人である。ゴンサレスは2年間にジョコビッチと3度対戦し、2勝1敗の記録を残した。最初の対戦は2005年であったが、これはジョコビッチが初めてATPツアーで丸1シーズンをプレーした年である。一方のゴンサレスは、この頃には既にかなりの年数にわたって活躍していた。「ATP1000 シンシナティ」で、ジョコビッチは予選を勝ち抜いて本戦入りを果たし、1回戦でゴンサレスと対戦。ジョコビッチは第1セットを取ったが、ゴンサレスが3-6、7-6(7)、6-4で逆転勝利をあげた。
2度目の対戦は2006年「全仏オープン」の2回戦で、この時はジョコビッチがフルセットの末にゴンサレスを破った。最後の対戦は同年の「ATP1000 マドリード」準々決勝で、ゴンサレスが7-5、5-7、7-5で勝利している。
5. アンディ・ロディック(アメリカ)
2003年の「全米オープン」覇者である元世界王者ロディックは、ジョコビッチと相当なライバル関係にあり、記憶に残る試合を数多く繰り広げた。対戦成績ではロディックが5勝4敗とわずかに勝ち越している。2007年「ATP1000 モントリオール」での初対戦では、ロディックをストレートで下したジョコビッチがそのまま優勝。2008年「ATP500 ドバイ」での次の対戦ではロディックが勝利し、対戦成績を互角に戻した。
同2008年「全米オープン」での次の対戦ではジョコビッチが4セットで勝利。2009年の「全豪オープン」ではタイトル防衛をする立場にあったジョコビッチが、ロディックと準々決勝で対戦。しかしジョコビッチは暑さに対処することができず、第4セットの途中で棄権した。ロディックはこれに続くマスターズ1000大会での3度の対戦で、全てストレート勝利。この時点で、ロディックはジョコビッチとの対戦成績を5勝2敗とリードしていた。
ジョコビッチは2010年「ATPファイナルズ」のグループステージでロディックに6-2、6-3で勝利し、連敗を止めることに成功。輝かしい2011年シーズンを経てジョコビッチがツアー屈指の優れた選手としての立場を確立する一方で、ロディックのキャリアは下降していた。二人が最後に対戦したのは、2012年「ロンドンオリンピック」の2回戦。ジョコビッチはロディックに対する最高のパフォーマンスを更新する6-2、6-1のスコアで勝利を決めた。だがロディックはジョコビッチとの対戦成績で勝ち越したまま、2012年シーズンを最後に引退した。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATP500 ドバイ」でのジョコビッチ
(Photo by Francois Nel/Getty Images)