トルコとシリアを襲った大地震の被災者を援助するため、ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)およびグランドスラムを主催する4つの運営団体が共同で支援活動を開始した。ATP公式ウェブサイトなど複数のメディアが報じている。
ATP、WTA、ITF、そして「全豪オープン」、「全仏オープン」、「ウィンブルドン」、「全米オープン」という4つのグランドスラムの運営団体は、トルコとシリアの地震の影響を受けた人々を支援する募金活動“Tennis Plays for Love(愛のためのテニス)”を共同で開始した。被災地では1700万人以上の人々が凍えるような寒さの中で避難生活を送っており、毛布、緊急避難所、食料、清潔な水を早急に必要としている。この活動ではまず、テニスの運営団体が連名でトルコ・シリア地震救済基金に寄付を行い、緊急的な支援だけでなく長期的な復興も支援する。ファンも同基金に寄付できるよう公式ホームページには特設サイトが設けられている。また、テニスアートプロジェクト“LOVE”のコレクションから一点物のNFT作品がオークションに出品され、その落札金額が寄付されるという。
テニス界ではほかにも大会や選手たちがそれぞれの形で支援を表明している。今月の6日から12日まで行われていた「WTA500 アブダビ」で大会スポンサーを務めるMubadala Investment Companyは、準決勝と決勝のチケットの売上を被災地の人道支援に寄付。そして先月第一子の妊娠を発表した元世界女王の大坂なおみ(日本/フリー)はInstagramのストーリーに、黒い背景の中心にトルコの国旗とハートマーク、手を合わせた絵文字を並べて投稿。世界王者のノバク・ジョコビッチもInstagramのストーリーに、瓦礫の下敷きになっている子どもたちの写真を投稿し、「主よ、人々を守り、元気にしてください」と添えた。また、別の投稿では現地に救助隊を送り込んだセルビア政府を称えている。世界ランキング3位のステファノス・チチパス(ギリシャ)はTwitterにこう綴った。「トルコとシリアで続く困難に影響を受けているすべての人々に、愛とサポートを送ります。希望と強さが常に私たちの中にあることを忘れずに、どんな障害があろうともともに乗り越え、より良い未来を創っていきましょう」
「WTA500 ドーハ」(カタール・ドーハ/2月13日~2月18日/ハードコート)で元世界女王のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と1回戦で対戦した世界196位のIpek Oz(トルコ)は、トルコの旗を身にまとって入場していた。彼女に6-1、6-1で勝利したアザレンカは、ネット際で握手を交わした際に長いハグも交わし、Ozに言葉をかけている。オンコートインタビューでアザレンカは「彼女とは初めて対戦したけど、この状況でコートに出てプレーするのはすごく辛かったと思う。彼女には強くあってほしいと思うし、なんとかして状況が好転することを祈っているわ」と述べた。トルコのある元選手によれば、アザレンカは地震発生直後から支援に向けて水面下で積極的に動いていたそうで、今後も何かしらの支援を行うかもしれない。
一方で、地震発生当時に震源地からおよそ800km離れたトルコのアンタルヤで開催されたITF大会に出場していた選手たちは、被害には遭わなかったものの帰路を断たれることに。ジョコビッチのテニスアカデミーを卒業している世界747位のElena Milovanovic(セルビア)もその一人で、「みんな怖がってる。飛行機は全部キャンセルされたから帰れない。両親は心配してくれているけど、大会にはいつも一人で来ているから今も一人ぼっち。ほかの選手たち、特に同じバルカン半島出身の選手となるべく一緒にいるようにしている」と話す。同じ大会に出場していた世界464位のHurricane Black(アメリカ)は、最初の地震があった日は厚手のコートを着ながら、建物から離れた場所でほかの選手たちと待機していたと現地の状況を説明している。
(WOWOWテニスワールド編集部)
写真は2019年「WTA1000 インディアンウェルズ」でのアザレンカ
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)