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テニスは「副業」の世界784位選手が元世界8位ソックからツアー初勝利！
現在開催している「ATP250 デルレイビーチ」（アメリカ・デルレイビーチ／2月13日～2月19日／ハードコート）で、テニス以外の本業を持つ世界ランキング784位のマティヤ・ペコティッチ（クロアチア）がツアー初勝利を手にした。ATP（男子プロテニス協会）公式ウェブサイトなど複数のメディアが報じている。
33歳のペコティッチは現在、副業としてテニスをプレーしている。本業はビジネスマンで、デルレイビーチから30kmほど北に位置するウェストパームビーチのヘッジファンドに勤めているという。
当初「ATP250 デルレイビーチ」の予選に入れなかったペコティッチは、ガットの張り替えを依頼していたラケットを受け取りに会場へ戻ったところ、大会側からまだ予選に出場できるかもしれないと知らされる。その後、世界111位の綿貫陽介（日本／フリー）が体調不良で棄権したことから、その場にいたペコティッチがプロテクトランキングを使用して代わりに出場することになった。予選1回戦で対戦した当時世界224位のステファン・コズロフ（アメリカ）が途中棄権すると、ペコティッチは続く予選2回戦で元世界41位のテニス・サングレン（アメリカ）をフルセットの末に破り、念願のツアー本戦出場を叶えた。
本戦1回戦ではワイルドカード（主催者推薦枠）として出場する元世界8位のジャック・ソック（アメリカ）との対戦が待っていたが、ペコティッチは4-6、6-2、6-2で逆転勝利。33歳にしてツアー本戦デビューを果たしただけでなく、初勝利も手にした。2時間10分かかった試合でサービスエースを10本とウィナーを30本決めたペコティッチは、試合後にこう話している。
「負けるつもりで試合に臨んだわけではないけど、まさか勝つとは思っていなかった。現実問題、相手は元トップ10の選手で、テニスの経験も豊富な上、サーブもうまい。勝つつもりだったなんて言うのはおこがましいよ。それでも試合中は歯を食いしばって、事前に準備しておいたいくつかのパターンをうまく使えれば、チャンスはあると思った。あとはプレッシャーに負けたり、サーブが決まらなかったりしたらどうしようと思っていたけど、そうならずに勝つことができた」
上司がチーム席から見守る中、ペコティッチは「今日は仕事を早退させてもらったんだ。チーム全員にメールしたよ。上司は行かせてくれた。でも、これでまた明日も休ませてもらわないといけなくなった」と述べている。
ペコティッチにとってここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。名門プリンストン大学でスター選手として活躍したペコティッチは2013年にプロに転向し、24歳だった2014年に初めてフューチャーズ大会に出場。2015年にキャリアハイとなる世界206位にまで登り詰めるが、腹部の手術により8ヶ月間のブランクができてしまう。その間、将来を見据えてビジネススクールに通うことを決意したペコティッチはハーバード大学に合格。そこでテニスチームのアシスタントコーチをボランティアで務めているうちにテニスへの情熱に再び火がつき、一年以内に世界250位にたどり着くことを条件に、卒業と同時に下部大会へ参加するように。そこから6ヶ月のうちにITF（国際テニス連盟）大会で10個のタイトルを獲得し、世界320位台までランキングを上げた。ペコティッチは「人生で最高のテニスをできていた」と当時を振り返るが、その直後に新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲う。
その頃30代になっていたペコティッチは、すべての大会が中止になったヨーロッパからアメリカに帰国し、現在の職場に就職したそうだ。それでもテニスを諦めきれず、仕事の合間に工夫を凝らしながらトレーニングを続けた結果、今回の勝利を掴んだという。
「プロのテニス選手に勝てたことは最高のご褒美だ。まったく期待していなかった。この瞬間を楽しんでいるし、行けるところまで行こうと思っている。ダメだった時はまた仕事に戻ればいい」
ペコティッチは続く2回戦で、第8シードのベン・シェルトン（アメリカ）を破った世界55位のマルコス・ギロン（アメリカ）に3-6、3-6で敗れた。これからはまた本業に戻るのかもしれないが、シーズン最初の「ユナイテッドカップ」にクロアチア代表として参加してもいた彼の今後に期待したい。
（WOWOWテニスワールド編集部）
※写真は「ATP250 デルレイビーチ」でのペコティッチ
(Photo by Aaron Gilbert/Icon Sportswire via Getty Images)
