現地8日に行われた「ATP250 モンペリエ」(フランス・モンペリエ/2月6日~2月12日/室内ハードコート)の1回戦で、第5シードとして出場するアレハンドロ・ダビドビッチ フォキナ(スペイン)が、試合中に負傷した対戦相手のユーゴ・アンベール(フランス)に駆け寄る姿が見られた。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトなど複数のメディアが報じている。
ワイルドカード(主催者推薦枠)として「ATP250 モンペリエ」に出場していた世界ランキング85位のアンベールは先日、「デビスカップ by Rakuten ファイナルズ」への出場権をめぐる「デビスカップ・クオリファイアーズ」で活躍。「デビスカップ」デビューを飾り、ハンガリー相手の逆転勝利に大きく貢献していた。
勢いに乗るアンベールは、モンペリエ大会では地元のファンの歓声を後押しに、ダビドビッチ フォキナから第1セットを6-1で奪った。ところが、タイブレークにもつれ込んだ第2セット終盤、アンベールはコートの端から端までトップスピードで横断しながら相手のショットに追いつこうとしたところ、バランスを崩して激しく転倒。右足の太ももを抑えたまま起き上がれなかった。
それを見たダビドビッチ フォキナが反対側のコートから駆け寄り、二人の音声が入っていない動画からも、彼がアンベールに励ましの言葉をかけながら容体を心配する様子が伺えた。アンベールは苦しい表情を浮かべ、大きく息をしながらダビドビッチ フォキナの腕を掴んで言葉を交わしている。その後、メディカルチームの処置を受けたアンベールはなんとかプレーを続行するも、第2セットを落としたところで棄権を申し出た。
23歳のダビドビッチ フォキナと24歳のアンベールは幼なじみだそうで、ダビドビッチ フォキナは試合後のオンコートインタビューでこう語っている。「彼が泣いているのを見てしまったから、僕も今にも泣きそうだよ。彼のことは子どもの頃から知っているんだ。友人のあんな姿を見るのは辛い。観客の応援もあって、試合中の彼はすごくいいプレーをしていた。第3セットも戦いたかったけど、怪我をしていては厳しい。早く回復して、来週にもプレーできることを願っている」
2016年に18歳でプロに転向しているアンベールは、2020年初めに「ATP250 オークランド」でツアー初タイトルを獲得し、その9ヶ月後には「ATP250 アントワープ」でも優勝を飾った。2021年は世界31位で臨んだ「ATP500 ハレ」の2回戦で当時世界6位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を、決勝で同7位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)を破って頂点に立ち、キャリアハイとなる世界25位に到達した。ところが、2022年はシーズン最初の「ATPカップ」で当時世界2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)相手に大金星を挙げるも、以後の大会では早期敗退が目立ち、前回王者として臨んだ「ATP500 ハレ」の2回戦敗退によりランキングポイントを一気に失ったことで世界ランキングはトップ100圏外へ。シーズン後半はチャレンジャー大会にも何度か出場していた。今年は「全豪オープン」と「デビスカップ・クオリファイアーズ」でそれぞれ2連勝しており、少しずつ調子を取り戻してきたかと思われた矢先の出来事だった。
今回の試合から一夜明け、アンベールがInstagramにメッセージを投稿。「素晴らしい大会をこのような形で去ることになって残念だ。(負傷後は)うまく歩けなかったけど、これから検査を受けてしっかりケアを行うよ。しばらくしたら大会に出られると思う。温かいメッセージとサポートをありがとう」と綴っており、幸いにも大事には至らないようだ。
一方のダビドビッチ フォキナは、2回戦で世界70位のカンタン・アリス(フランス)に3-6、3-6のストレートで敗れている。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2022年「全米オープン」でのダビドビッチ フォキナ
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)