ベン・シェルトン(アメリカ)は先日閉幕した「全豪オープン」で素晴らしい戦績を残した選手の一人だ。「アメリカ男子テニスの未来」と呼ばれる20歳のシェルトンは、自身2度目のグランドスラム本戦出場、かつアメリカ国外で初めての出場でベスト8進出を果たした。スポーツウェブメディアSportskeedaほか複数メディアが伝えている。
左打ちのシェルトンは、193cmの長身から繰り出す平均時速202kmのサーブを武器に持つ、昨年プロに転向したばかりの新星だ。父のブライアン・シェルトン(アメリカ)は世界ランキング55位に到達した元プロテニス選手で、シングルスで2度の優勝経験を持つ。それでも、大会が始まった当初は無名のシェルトンに注目するファンは多くなかった。
シェルトンは、1回戦で世界96位のジャン・ジジェン(中国)とのスーパータイブレークまでもつれた接戦を制すると、世界154位のニコラス・ジャリー(チリ)と同113位のアレクセイ・ポプリン(オーストラリア)をストレートで下し2週目に勝ち残る。続いて世界67位のJ.J.ウルフ(アメリカ)とのアメリカ人対決を制し、2002年「全米オープン」でのアンディ・ロディック(アメリカ)以来、グランドスラムでベスト8に進出した最年少アメリカ人選手となった。
またもアメリカ人対決となった準々決勝では、世界35位のトミー・ポール(アメリカ)から1セットは奪ったものの、あと一歩及ばず敗戦。それでもこの快挙によりシェルトンの世界ランキングは89位から44位まで急上昇、初のトップ50入りを果たした。シェルトンはこのランキングを見て、「結構ワクワクしてる。もっと上げていかなきゃ」とツイート。
全米大学体育協会のチャンピオンにも輝いたシェルトンは、わずか1年前は世界569位だった。フロリダ大学の選手だったシェルトンはチームを初の全国優勝に導いたが、今年の「全豪オープン」前哨戦までアメリカ国外の大会に出場したことがなかった。
シェルトンは、オーストラリアでの大会出場について次のように語った。「観客は信じられないくらい素晴らしかった、僕を応援してくれた。出場する前は全然期待していなかった、僕はアメリカ人だから。彼らは、まるで自分の国の選手のように扱ってくれた。声援を受けてプレーできたことは本当に楽しかった。たくさん笑顔になれたよ」
シェルトンは「全豪オープン」での経験を貴重な体験として前向きに自分のキャリアに活かそうとしている。準々決勝でポールに6-7(6)、3-6、7-5、4-6で敗れたシェルトンは、次のようにコメントした。
「素晴らしい経験だったと思う。初めてグランドスラムで準々決勝に進出できて楽しかった。まあまあのプレーをしたと思うよ。もっとできたことがいくつかあったし、次は違うようにできたらと思うこともあったけれど、初めての“全豪オープン”だったし結果には満足している。得るものが多くあった」
シェルトンは、今回のベスト8進出が途方もない夢の先を行くものであったことを躊躇いもなく認めた。「自分の期待を遥かに超えた。自分がコートでできると思っていたこと、テニスの面だけじゃなくて、身体的に5セットマッチをあれだけやり遂げられたということも。これまでに1試合しかしたことがなかった。そういう意味でも、結構自分に満足している」
「ここで勝てた試合は全部同じように感じた、嬉しさと安堵が混ざった感じ。うっとりするような気持ちになった。最後のボールが地面につくと、やったぞ、って。このステージで4回連続でそれを出来て、その気持ちを何度も味わえたのは、かなりいい気分だったよ」
シェルトンは、大学に籍を置きつつプロ生活を続けるつもりだという。シェルトンが勉学とのバランスを取りながらこの活躍を続けられるか、期待を持って見守りたい。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのシェルトン
(Photo by Darrian Traynor/Getty Images)