先月行われた「全豪オープン」で、アメリカ人選手たちが試合後に中継カメラのレンズに錠の絵を描いていることが注目され、中でも第8シードのテイラー・フリッツ(アメリカ)の絵心のなさが話題となった。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトなど複数のメディアが報じている。
テニス界では勝利した選手が試合後に中継カメラのレンズにサインやメッセージを書くことが恒例となっているが、「全豪オープン」ではフリッツのほかに第16シードのフランシス・ティアフォー、第3シードのジェシカ・ペグラ、第10シードのマディソン・キーズというアメリカの男女選手がそろって錠の絵を描いた。これは、今季初めて開催された「ユナイテッドカップ」で優勝したアメリカチームの間で流行ったジョークがきっかけだそうだ。
ティアフォーが「ユナイテッドカップ」の試合前、仲間たちに「みんなロック(錠)はかかってるか?」と声をかけたところ、それがウケたのだという。ティアフォーは「ゾーンに入っている」という意味でその表現を使ったと説明しているが、試合中もコートの外でも常に明るくリラックスした性格の彼が、大真面目に言ったことでチームメイトの笑いを誘ったそうだ。「フランシスがロックするなら、みんなもロックしないとダメだって感じになったんだ」と、ティアフォーは「ユナイテッドカップ」メンバーの間で「ロック」が合言葉になった経緯を話している。
「全豪オープン」でチームとして戦うことはなかったが、フリッツはお互いの健闘を祈って引き続き「ロック」を使おうと考えた。ところが、当時世界ランキング90位のニコラス・バシラシビリ(ジョージア)を下した1回戦の後に錠の絵を描いたところ、あまりにも下手で誰にもわかってもらえなかったのだ。解説者からは「何を描いているのかまったくわからない」「わかったフリをしておこう」と言われ、一部のファンからは錠ではなく男性器を描いたと勘違いされる羽目に。
フリッツはその日のうちに「ちなみに、あれは錠の絵文字を描こうとしていたんだ。ただ、絵心がまったくないことを忘れていた」とTwitterで弁明している。これに対してペグラは「hahahahaha」とコメントで大笑い。キーズは試合後の記者会見で「あれはチームUSAで流行っているの。あいにく、テイラーのは酷すぎたわ。今日はみんながそれぞれの判断で彼をフォローして、テイラーが何をしようとしていたのかを説明することにしたみたいね。ただの仲間内のおふざけよ」と笑いながら話している。
ティアフォーは「フリッツの奴は錠を描こうとして男性器を描いてしまった。それもフリッツらしい。でも、みんな勝ち進んでいて、いい仲間意識が生まれているよ」と述べていた。
残念ながらフリッツは2回戦でワイルドカード(主催者推薦枠)として出場していた当時世界113位のアレクセイ・ポプリン(オーストラリア)に敗れてしまったが、ティアフォーとキーズは3回戦進出、そしてペグラはベスト8まで勝ち進んだ。今年の「全豪オープン」ではアメリカ勢の活躍が目立ったが、その根底にはこうした雰囲気の良さがあるようだ。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ユナイテッドカップ」でのフリッツ(左)とティアフォー
(Photo by Andy Cheung/Getty Images)