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ジョコビッチやウクライナ選手を傷つけた、全豪のロシア国旗騒動

「全豪オープン」で優勝を決めた直後、スタンドに向けて感情を爆発させるジョコビッチ

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が「全豪オープン」の男子シングルスで優勝した裏で、父親のスルジャン・ジョコビッチがウラジーミル・プーチン大統領の顔が書かれたロシア国旗を掲げた観客と写真を撮ったことで波紋を呼んだ。英BBCなど複数のメディアが報じている。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシアと同盟国ベラルーシの選手たちは今シーズンも引き続き中立選手として大会に参加している。「全豪オープン」では当時世界ランキング95位のカテリーナ・バインドル(ウクライナ)と世界110位のカミラ・ラヒモワ(ロシア)が対戦した女子シングルス1回戦で観客がロシア国旗を掲げて騒動が起きたことを受けて、両国の国旗の持ち込みが禁止された。

ところが、ジョコビッチが第5シードのアンドレイ・ルブレフ(ロシア)を破った1月25日の準々決勝では、ウクライナ侵攻への支持を示す「Z」のシンボルが大きく描かれたTシャツを着た観客の姿が最前列で目撃された。さらに、試合終了後には数人の観客がロッド・レーバー・アリーナの外でロシアの国旗を掲げながら「セルビア!ロシア!」と繰り返し叫ぶ姿が見られ、警察が退去を命令し、オーストラリアテニス協会(TA)が声明を出す事態に。そしてその日のうちに、「Z」のTシャツを着た上にプーチン大統領の顔が描かれた国旗を持っている男性と一緒にスルジャン氏が写真を撮る姿を捉えた動画がソーシャルメディア上で拡散された。

これに対して在豪ウクライナ大使のVasyl Myroshnychenko氏は、スルジャン氏の行為を「容認できない。大会の恥だ。制裁が課されなければならない」として、彼を大会の残りの試合から締め出すようTAに要請。さらに、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は親ロシア派の抗議に対する同国の姿勢を改めて強調した。「オーストラリアはウクライナの人々とともにある、ということを強調しておく。これがオーストラリアの立場であり、国際法を断固として支持する。この国でロシアによるウクライナ侵攻を支持する姿勢は受け入れられない」

思いもよらぬ騒動を招いてしまったスルジャン氏は、準々決勝から2日後に次のような声明を出している。「私は息子を応援するためだけにここにいる。息子の試合の後には必ずそうしてきたように、私は外でノバクのファンと一緒に彼の勝利を祝い、一緒に写真を撮っていただけだ。このような事態を引き起こすつもりはなかった。私の家族は戦争の恐怖の中で生きてきたため、平和だけを願っている。だから、今夜の準決勝は息子にも対戦相手にも迷惑がかからないよう、私は宿泊先から観戦することにした」

ジョコビッチは、周りにはセルビアの国旗がたくさんあったため父親は勘違いしたのだと擁護しているが、一緒に写真を撮った観客がロシアの国旗を持っていることは明らかで、なぜ撮影に応じたかをスルジャン氏は説明していない。結果的に、準決勝からスタジアムに来なくなったスルジャン氏は、息子が決勝戦で第3シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)にストレート勝利を収め、「全豪オープン」で史上最多の10回目の優勝、そして22個目のグランドスラムタイトルを獲得する瞬間をチーム席から見守ることもできなかった。

ジョコビッチは父親の騒動について優勝後の記者会見でこう話している。「今日みたいな瞬間は特別で、二度とないかもしれないから、僕にとっても父親にとってもすごく残念だった。父親はショックだっただろう。でも、自分がいないことで僕が気持ち良くプレーして優勝できるならそうすると言ってくれたんだ。もちろん観客席に父親がいなくて寂しかったけど、今大会のそれまでの試合は観てくれていたし、最後はハッピーエンドになったからこれで良かったんだ」

一方、今大会で女子シングルスの3回戦、女子ダブルスの準決勝に勝ち進んだシングルス世界61位のマルタ・コスチュク(ウクライナ)は、悲痛な思いを吐露した。「どうやったらこういうことが起きるのか理解できない。旗を持ち込んではいけないという特別なルールがあっただけに、すごく傷ついている」

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「全豪オープン」で優勝を決めた直後、スタンドに向けて感情を爆発させるジョコビッチ
(Photo by James D. Morgan/Getty Images)

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