• 【動画】ズべレフのあり得ないラケット破壊

ズベレフと2018年の夏からおよそ1年にわたって交際していたオルガ・シャリポワさんは、別れてから1年以上が経った2020年10月に掲載されたインタビュー記事の中で初めてズベレフからDVを受けたと発言。その後も何度かインタビューを重ねる中で、シャリポワさんは交際開始直後からズベレフの暴言によって精神的な苦痛を被っており、2019年に同行したいくつかの大会では、滞在先のホテルの部屋でズベレフに顔を殴られたり、息ができないくらい強く顔に枕を押し当てられるなどの暴行を受けたと語った。それらが原因で彼女は2度もインシュリン注射を使って自殺を図ったという。

DVの疑いのある行為の舞台がツアー大会の開催地だったこともあり、2021年の10月にATPが本格的な調査に乗り出すことに。当初からズベレフ本人は疑惑を全面的に否定し、調査には協力的な姿勢を示していた。この度、ATPが依頼した第三者機関による調査が終了し、ズベレフに対するDV疑惑は証拠不十分として取り下げられた。

第三者機関は、シャリポワさんとズベレフおよび彼らの家族や友人、テニス選手、ATPツアー関係者など、合わせて26人に対して聞き取り調査を実施。シャリポワさんとズベレフが提出したメールや音声記録、写真に加え、事件現場の一つとされた「ATP1000 上海」の運営記録、ソーシャルメディア上の投稿やプレスリリースなども対象に1年3ヶ月にわたる調査を行ってきた。第三者機関がATPに提出した報告書によれば、信頼できる証拠や目撃者の報告の欠如に加え、シャリポワさん、ズベレフ、そのほかの人たちによる供述が食い違っていることから、今回の調査ではDVの告発を立証することはできず、ATPの規則に違反する行為と断定することもできなかったとのことだ。

これを受けて、1月31日にATPはズベレフに処罰を科さないことを決定した。だが、新たな証拠が明るみに出た場合、あるいは法的手続きによりATPの規則違反が判明した場合には、この判断が再評価される可能性がある。

ズベレフはInstagramのストーリーに次のようなコメントを投稿している。「私は当初から無実を主張し、根拠のない疑惑を否定してきました。ATPの調査を受け入れ、全面的に協力するとともに、この問題に対してATPが時間をかけ、注意を払ってくれたことに感謝しています。これで中立的な第三者機関による検証が終わり、私にとって有利な決定が下されました。今回のATPの独立した調査に加えて、私はドイツとロシアで行われた裁判でも勝訴しています。この問題がようやく解決されたことを嬉しく思っています。今の自分にとっての優先事項は、怪我から回復してこの世界で一番好きなこと、つまりテニスに集中すること。支え続けてくれた友人、家族、ファンの皆さんに感謝しています。長く困難な道のりでしたが、最後に正義が勝ったのです」

ズベレフにとってはひとまずこれでDV疑惑に決着が着いた形となったが、一部のファンは今回の結果に納得していないようだ。「“信頼できる証拠と目撃情報の欠如”だなんて当たり前じゃない。DVは目撃者がたくさんいる公の場で起きるわけではなく、プライベートな場所で起きるんだから」と、いかにDV被害を立証するのが難しいかを主張するファンもいれば、「正式な裁判所や検察官ではなくどうしてATPが調査に関わっているの？」とやり方に疑問を呈する者も。さらに、「このことに驚く人はいるのだろうか。この組織も金持ちが犯罪の代償を払わずに済むようにした。嘆かわしい」「この世界で正義が女性の味方になってくれることはない」「またもや金持ちで特権のある白人男性が虐待疑惑から逃れた」「想定内のこととはいえ、気分が悪い」など、辛辣なコメントも見られる。

（WOWOWテニスワールド編集部）

※写真は2019年「レーバー・カップ」でのズベレフとシャリポワさん
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images for Laver Cup)