グランドスラム
全豪のボールキッズはお金をもらっていない！「まるでディケンズの小説」
現在開催されているシーズン最初のグランドスラム、「全豪オープン」（オーストラリア・メルボルン／1月16日～1月29日／ハードコート）でボールキッズが給与をまったく受け取っていないことが明らかとなり、オーストラリアテニス協会（TA）に批判が殺到している。米ニュースメディア New York Postが報じた。
毎年2500人ほどの子どもたちが「全豪オープン」のボールキッズに応募するが、一年越しの審査の結果、合格できるのは5人に1人にも満たないという。そんな狭き門を突破した子どもたちは、憧れの選手たちと大舞台をともにするという貴重な経験を得られる。その一方で、ボールを何個持っているかを表示する時に親指を立てるかどうかなど、細かいところまで徹底したトレーニングを受けてきたボールキッズを待ち受けるのは、連日の猛暑や突然の雨に見舞われる過酷な環境だ。それだけでなく、彼らは苛立った選手から怒鳴られることもあり、ヒートアップした場面に巻き込まれることを常に恐れながら、大会期間中を通して大きなプレッシャーにさらされ続ける。
今年の「全豪オープン」では猛暑と雨により男女シングルスの1回戦や2回戦が順延となり、会場入りしてから長い時間待たされた選手もいれば、夜遅くになってから翌日の午前中に試合が延期になったことを知る選手もいた。また、ナイトセッションでは2試合行われるため、特に3セット先取となる男子の試合は深夜にまで及ぶことは珍しくなく、元世界王者のアンディ・マレー（イギリス）と元世界ランキング69位のタナシ・コキナキス（オーストラリア）が対戦した2回戦は5時間45分かかり、試合が終了したのは午前4時過ぎだった。当然、ボールキッズもそれらに合わせて行動している。
このような状況にもかかわらず、2008年に彼らの仕事がボランティアに分類されてから、「全豪オープン」のボールキッズには一銭も支払われていないという事実が発覚。ソーシャルメディア上で賛否両論が巻き起こっている。
「ウィンブルドン」を運営するオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ（AELTC）も「全豪オープン」と同じような厳しい選抜を行っているが、ボールキッズには週に200ポンド（約3万2000円）の給与が支払われている。また、「全米オープン」を主催するアメリカテニス協会（USTA）も開催地ニューヨークの最低賃金である時給13ドル（約1700円）程度をボールキッズに払っている。こういった待遇の差だけでなく、今年の「全豪オープン」では昨年から3.4％増えて7650万オーストラリアドル（約70億4000万円）もの賞金総額が選手たちに提供されることも、火に油を注いでいるようだ。
ジャーナリストのジャスティス・スミス氏が多くのファンを代弁して、「これは（貧しい少年少女が主人公になることの多い）チャールズ・ディケンズの小説の世界か？子どもたちに払ってやれよ。給与が払われていないなんてショックだ。これは彼らの価値を著しく下げている」と主張した。また、豪大手メディアのキャスターは、その経験に価値さえあれば無償でもいいという価値観を子どもたちに植えつけかねないと警告。「全豪オープン」でのボールキッズの働きを「児童による無償労働」と呼ぶファンもいる。
一方で、ボールキッズは給与の代わりにGoProのカメラ、Bluetoothのスピーカーやヘッドフォンといった高額商品を受け取っているそうで、「これを児童の無償労働と呼ぶことは、海外で実際に行われている児童の無償労働に対する侮辱だ」と主張するファンや、「子どもたちはただ、貴重なチャンスに飛びついているだけ」「テニス好きの彼らは喜んでやっている」という意見も見られる。
※為替レートは2023年1月25日時点
（WOWOWテニスワールド編集部）
※写真はシャポバロフと「全豪オープン」のボールキッズ
(Photo by Kelly Defina/Getty Images)
＊＊WOWOW 放送・配信情報＊＊
「全豪オープンテニス」1/16（月）～1/29（日） ※大会第1日は無料放送
WOWOW で全日生中継！WOWOW オンデマンドでは全コートをライブ配信！
■その他の放送情報などはこちらから■
【WOWOW テニス公式サイト】https://www.wowow.co.jp/sports/tennis/
【WOWOW テニスワールド】https://wowowtennisworld.jp/
【WOWOW テニス公式ツイッター】 @wowowtennis
【WOWOW テニスワールド Twitter】@w_tennisworld
【WOWOW テニス公式インスタグラム】@wowowtennis
