「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月16日~1月29日/ハードコート)でベスト4進出を決めているカレン・ハチャノフ(ロシア)が、中継カメラのレンズに書いたメッセージによって政治問題に巻き込まれている。伊ニュースサイト UBI Tennisなど複数のメディアが報じた。
第18シードのハチャノフは4回戦で第31シードの西岡良仁(日本/ミキハウス)を下した後、中継カメラのレンズに「最後まで信じて戦い続けるんだ。アルツァフよ、強くあれ」と書いており、3回戦で第16シードのフランシス・ティアフォー(アメリカ)に勝利した際にも同様のメッセージを残していた。
アルツァフ共和国はアルメニア語で「ナゴルノ・カラバフ」と呼ばれる未承認国家で、アゼルバイジャンとアルメニアに挟まれている。地政学的に複雑な状況を抱えるこの地域では紛争が繰り返され、国際的にはアゼルバイジャンの一部と認識されているものの、ソビエト連邦の崩壊に伴い1991年に独立を宣言している。ところが、1994年に第一次ナゴルノ・カラバフ戦争が終結した後はアルメニア人勢力の支配下にあり、最近になって同地域への食糧や医薬品を供給するライフラインがアゼルバイジャンのデモ隊によって封鎖されたため、両国の間で再び緊張が高まっている。
ロシア国籍のハチャノフが今回のようなメッセージを書いているのは、両親がアルメニアにルーツがあるからだ。2020年に同地域で再び戦闘が起きた時も、彼はソーシャルメディアに「ロシアで生まれているけど、僕はいつもアルメニア人のルーツがあると言ってきた。大好きなこの国で起きていることを見ると心がえぐられる。罪のない人々や子どもたちまでもが死んでいるんだ」と綴っていた。
観客席にはアルメニアの国旗も見られたロッド・レーバー・アリーナでの準々決勝で第29シードのセバスチャン・コルダ(アメリカ)を退けた後、ハチャノフは同国と自身の関係を改めて説明した上で、今回のメッセージについては「正直なところ、これ以上深入りしたくない。僕はただ、自分の民族に対して強さとサポートを示したかったんだ。それだけださ」と話している。ところが、そんなハチャノフの意図に反して、アゼルバイジャンテニス連盟(ATF)が国際テニス連盟(ITF)に抗議の書簡を送り、次のように主張している。
「カレン・ハチャノフは憎しみに満ちた行動で注目を浴びようとしている。アゼルバイジャンテニス連盟の書簡には、アゼルバイジャンに対するこの挑発行為に関する事実と法的文書が記されている。ATFはこの行為を非難し、当該選手の処罰を要求するとともに、国際テニス連盟に対して今後このような事件を防止するために厳しい措置を取るよう促した」
これまでのところハチャノフはATFの動きを認識しておらず、ITFや大会側からアルツァフに言及するコメントを注意されてもいないという。ハチャノフはこれから準決勝で第3シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)と対戦する。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのハチャノフ
(Photo by Mark Kolbe/Getty Images)
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「全豪オープンテニス」1/16(月)~1/29(日) ※大会第1日は無料放送
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