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昨年逝去した恩師ボロテリー氏の見た錦織「彼には才能があり、願望がある」

2019年「ATP250 ブリスベン」を制した錦織

昨年12月に91歳で亡くなった名テニスコーチ、ニック・ボロテリー氏は、テニスに関する助言やコツ、教訓などを書き残していた。後にアジア人男子選手として初めてグランドスラムのシングルス決勝に進出することとなる錦織圭(日本/ユニクロ)についてボロテリー氏が書き残した内容を、米テニスメディアBaselineが紹介している。

ケイ・ニシコリの物語と背景は、夢に満ちた少年と、そのうちのどのくらいが実現するのかについての架空の物語を読んでいるようなものだ。

ケイは5歳でテニスを始めた。彼に生来のテニスの才能があることはすぐに明らかになった。2004年、ケイが13歳から14歳になる頃に、盛田正明テニス・ファンド委員会によって盛田基金の4人の奨学生の1人に選ばれ、IMGアカデミーのボロテリー・テニス・プログラムでトレーニングすることとなった。

盛田ファンドは元ソニー副社長であり、ソニーの創業者、盛田昭夫氏の弟でもある盛田正明氏によって創設された。盛田正明氏は、日本からテニス選手を育てることに貢献する目的で盛田ファンドを創り、彼のビジョンは成果を上げた。

ケイの潜在能力を見て、ケイとその家族は彼が日本を離れてIMGアカデミーのボロテリー・テニス・プログラムでフルタイムのトレーニングを始める準備をした。到着した時、彼は英語をほとんど話すことができなかったが、トップ選手になる願望と才能があることは明らかだった。彼は稲妻のように素早く、とても早い段階でボールが見え、恐れ知らずで、王者の貫禄を備えていた。

ケイがアカデミーで成長する間、学校での勉強に加えて、最高峰のテニスコーチと身体調整専門家、心理調整専門家、栄養士やマネージャーらが彼を支えた。彼はITFのジュニア大会に出場し、16歳でジュニア世界ランキングの20位内に入った。その1年後にはATPの世界ランキングでトップ300入り。2008年の「全米オープン」で18歳だったケイはその力を見せつけ、世界4位のダビド・フェレール(スぺイン)を破って4回戦進出を果たした。

60年のキャリアを通して、私はほぼ全てのタイプの生徒を経験してきた。それぞれのタイプは違っていて、それぞれに対する私のアプローチも違う。例えばモニカ・セレス(アメリカ)は、フォアハンドとバックハンドの両方を両手で打つ、とても型破りな選手だった。彼女はベースライン上に立ってあらゆるボールを打った。彼女は才能に恵まれた選手ではなかったが、毎日何時間も何時間も練習する意志を持っていた。アンドレ・アガシ(アメリカ)には、ほとんどどんなボールも見えて、それにとても素早く反応する能力があった。彼は個性的な人物で、彼に対して何をすべきかを言うのではなく、私が彼を理解し彼に耳を傾けることが必須だった。ジム・クーリエ(アメリカ)は身体的に恵まれたアスリートで、どんな技術的な弱点(バックハンド)も、強み(フォアハンド、サーブ、動き)を使って補うことができた。

マリア・シャラポワ(ロシア)は、ベースライン上でフォアハンドもバックハンドも可能な限りフラットに打つ、極めて負けず嫌いな選手だった。ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)は、動きやストロークがより古典的で、見るに美しい。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)はとても身体能力の高い選手で、プレーの仕方を1つしか知らない。相手が何をしようと打ちのめす、というやり方だ。他にも、トミー・ハース(ドイツ)、アンナ・クルニコワ(ロシア)、(現在は錦織のコーチである)マックス・ミルニー(ベラルーシ)、ザビエ・マリーセ(ベルギー)、ジミー・アリアス(アメリカ)、アーロン・クリックステイン(アメリカ)、カーリン・バセット(カナダ)など、たくさんの選手たちがいた。彼らはみな違っていた。彼らに効果的に教え、意欲を湧かせるために、それぞれの選手と違った形でコミュニケーションを取る必要があった。

ケイの最大の武器は、足の速さ、手の動きの速さ、そしてコート上に空いた空間を見つけたり作り出したりする能力だ。類まれな素早さのおかげで、彼のサービスリターンはツアー屈指のものに成長した。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)を除いて、アンドレ・アガシ以来あれほど上手いリターンをする選手を見たことはないと思う。彼には、フォアハンドとバックハンドの両方でとても早くにボールを捉える能力があり、どちら側からでもコートを貫くショットを打つことができる。素早いおかげで、彼は守備もとても上手い。サーブ、特にセカンドサーブは、以前はちょっとした弱点だった。コーチのダンテ・ボッティーニ氏の助力を得て、彼のファーストサーブは進歩した。今ではファーストサーブでフリーポイントを獲得することができる。セカンドサーブも大きく改善し、ポイントをとても上手く守ることができるようになった。

試合や大会が連続することで生じる強烈な負荷に耐える能力、そして怪我をしやすい点も、ケイにとって改善が必要な部分だった。フィジカルトレーナーと調整プログラムのおかげで、こうした面も改善した。才能は1つの要素だ。最高の選手になるためには、心の強さと願望、そして目標を達成するために大きな犠牲を払うことを厭わない意志が必要だということを、私は見てきた。この点が、彼のコーチでありグランドスラム優勝経験者であるマイケル・チャン氏が貢献できる部分だ。チャン氏はケイに、より上のレベルでどう戦い、どう難局を切り抜け、どう競い合うかを教えた。全体として、ケイにはIMGのマネージャーたち、IMGアカデミー、フィジカルトレーナー、コーチのマイケル・チャン氏という力強いチームがついており、最高レベルで成功する上でいい立ち位置にいる。

ケイ・ニシコリの未来はどんなものだろう。健康を維持して成長を続けられれば、世界ランキングのトップ5位内を維持して、テニス界最大のタイトルを争えるチャンスがある。彼には才能があり、願望があり、チームの支えがある。どうなるか楽しみだ!

ニック・ボロテリー

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2019年「ATP250 ブリスベン」を制した錦織
(Photo by Bradley Kanaris/Getty Images)

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