ロジャー・フェデラー(スイス)の引退を惜しんだのは熱心なファンだけではない。これまでフェデラーがコートで本領を発揮する様子を撮影してきたスポーツカメラマンたちも喪失感を味わっている。そんな中、フェデラーが若手の頃から写真を取り続けてきた写真家がお気に入りの写真を公開した。スポーツウェブメディアSportskeedaが伝えている。
スポーツカメラマンでGetty Imagesに写真を提供しているクライブ・ブルンスキルさんは、ジュニア時代からフェデラーの勇姿をカメラに収めてきた。先日インタビューに答えたブルンスキルさんは、これまで撮ってきた写真の中でとっておきの3枚を明かすとともに、写真の中のフェデラーが放つ特別な魅力について語った。
「彼には優雅さやスタイルがある。まるで浮き上がって見えるような、エレガントな画像を作り出すんだ。彼のバックハンドのフォロースルーは、僕だけじゃなく多くの写真家が素晴らしく美しいと感じているよ」
ブルンスキルさんが選んだお気に入りの写真は次の3枚だ。1枚目は、2017年「ATP1000 インディアンウェルズ」での写真。フェデラーがバックハンドの構えをしている瞬間だが、逆光でフェデラーの輪郭のみが日に照らされ、シルエットを浮き上がらせている。
「これはカリフォルニア州インディアンウェルズで撮ったものだ。ロジャーの優雅さや上品さ、そして彼が行うすべてをとらえている」
2枚目は、2009年「ウィンブルドン」の表彰式でトロフィーにキスをしているフェデラーの写真だ。
「“ウィンブルドン”で撮った1枚。これは並の写真ではない。トロフィーにキスをするロジャーに光が当たる様が素晴らしく、観客が彼に夢中な様子なのがとても好きなんだ。これまで多くの選手がトロフィーを掲げる写真を撮ってきたけれど、これは僕のお気に入りの1つだ」
そして3枚目は、2015年「ATP1000 インディアンウェルズ」で行われた室内での撮影から。フェデラーは、「レーバー・カップ」でキャリア最後の試合を行った後、この写真にサインをしたという。写真のフェデラーは少しおどけた表情で、ギターのようにラケットを持ち、ロックスターのようにジャンプしていた。
「ロンドンで行われた“レーバー・カップ”での最後の試合の後に、彼はこの写真に“これまで実に素晴らしい時間だった、ありがとう!”とサインしてくれたんだ。これは特別な記念品だ。僕はこの写真を自宅の壁にずっと飾っておくよ」
ブルンスキルさんは個人的にもフェデラーと親交があったようで、フェデラーのフレンドリーな性格やプロ選手としての価値観についてコメントした。
「彼はとても面白い人で、素晴らしい人柄とカリスマ性を持っている。でも、多くのファンはそのことを知らないんじゃないかな。彼は他の選手のようにコートの上では感情をあらわにしないし、どんな状況でも冷静だから。それに彼は熟練したプロフェッショナルで、何をするにも完璧を目指していた人なんだ」
「例えば、ATPのマーケティング用の写真撮影があった時、スタジオで15分ほどの写真撮影を終えた直後に彼のエージェントが新しい道具一式を持ってきたんだ。たぶん、ほとんどの選手は編集で道具の色を変えてほしいと言うと思うんだけれど、ロジャーはそうしなかった。撮影を最初からやり直すことを求めたんだ」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2019年「全仏オープン」でのフェデラー
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)