グランドスラム
ジョコビッチ、オーストラリアへの入国禁止処分が解除に「安堵した」
元世界王者のノバク・ジョコビッチ（セルビア）が、今年の1月にオーストラリアから国外退去となった際に科された3年間の入国禁止処分を解除されることがわかった。英大手新聞社 The Guardianなど複数のメディアが報じている。
1月上旬、「全豪オープン」に出場するためメルボルン空港に降り立ったジョコビッチは、入国ビザを取り消されると不法滞在者向けの劣悪な環境のホテルに勾留された。当時オーストラリアに入国するには新型コロナワクチンを2回接種していることが必要だった。しかし、ジョコビッチは大会直前に新型コロナに感染したことでオーストラリアテニス協会（TA）から特別免除を受け、それによってワクチン未接種でも入国できると信じていたと主張。この訴えが認められて一時解放されるも、後日処分が覆って同じホテルに戻ったりと、事態は二転三転。結局、訴訟まで起こした末にジョコビッチは強制送還されることになり、その際にあらためて入国ビザが取り消されたことから、今後3年間はオーストラリアに入国できないことになっていた。
その後、オーストラリアの政権が交代し、新型コロナの規制をめぐる状況が世界的に変化していることもあり、ジョコビッチの入国禁止処分が取り下げられる可能性が浮上。そしてこの度、同国政府がジョコビッチにビザを発給するというニュースが飛び込んできた。オーストラリアでは渡航者に対するワクチン接種の義務化を取りやめていることを理由に、ジョコビッチの弁護団が同国当局との交渉に成功したと報じられている。
現在、シーズン最終戦「Nitto ATPファイナルズ」（イタリア・トリノ／11月13日～11月20日／室内ハードコート）に出場中のジョコビッチは、グループステージ第1戦に勝利した現地14日の夜、処分の取り下げについては「何もまだ正式に決まっていない。オーストラリア政府と協議中だということしか今はお伝えできない」と述べるにとどまっていた。しかし2日後の16日には「昨日、（入国禁止処分が解除されるという）ニュースを聞いてとても嬉しかった。安堵したよ。“全豪オープン”は僕にとって最も成功しているグランドスラムの大会だからもちろん出場したい」と喜びを露にしている。
「全豪オープン」のトーナメントディレクターを務めるクレイグ・タイリー氏は15日、オーストラリアへの渡航について発言しつつも、ジョコビッチの入国に関しては明言を避けていた。「今は誰もが通常のビザ申請手続きを行っていて、誰であろうと優遇措置は採るべきではないと思っている。とはいえ、ノバクを含め、出場選手がフライトを予約する頃にははっきりとした答えが出ているはずだ。それはすべてオーストラリア政府次第。ノバク自身がここに来て大会に参加したいことはわかっている」
今年の「ウィンブルドン」決勝でジョコビッチと優勝を争ったニック・キリオス（オーストラリア）は、ジョコビッチの入国を願っている一人だ。「彼はこの9ヶ月間、開催地によってプレーできたりできなかったりと、大変な目に遭ってきた。今度こそ、オーストラリアが彼を歓迎してくれることを願っている」
ジョコビッチの一連の入国騒動の裏では、元ダブルス世界ランキング29位のレナタ・ボラコバ（チェコ）も強制出国を命じられてビザを取り消されていた。彼女は入国の少し前に新型コロナに感染、のちに回復したことで入国が許可され、「全豪オープン」の前に開催されていた「WTA250 メルボルン2」にすでに出場していた。だが、ジョコビッチが同じ理由で入国を拒否された後、ボラコバも同じ扱いを受けることになったのだ。ボラコバはその後、入国規則に従おうとしていた姿勢やワクチンを接種できない医学的根拠が認められたことで、ビザ取り消しをめぐる訴訟に勝利している。
ジョコビッチの2023年「全豪オープン」出場に期待が高まる中、米ニュースメディアCNNによれば、オーストラリアのアンドリュー・ジャイルズ移民相がジョコビッチの入国禁止処分を取り下げるのはこれからだという。そんな中、ジョコビッチが強制出国となった当時に内務大臣を務めていたカレン・アンドリュース氏は、ワクチン未接種のジョコビッチを入国させれば、ワクチンを接種したオーストラリア国民を裏切ることになると先月主張しており、国民の反応も気になるところだ。
（WOWOWテニスワールド編集部）
※写真は「Nitto ATPファイナルズ」グループステージ第2戦に勝利した後、笑顔を見せるジョコビッチ
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)
