シーズン末の最終戦「NEC車いすテニスマスターズ」で、大会史上最年少チャンピオンとなった16歳の小田凱人(日本/東海理化)が帰国。記者会見でプロとして初めてのシーズンを振り返り、今後の抱負を語った。
小田は決勝で24歳の世界王者アルフィー・ヒュウェット(イギリス)に6-4、6-3でストレート勝利。ヒュウェットが2017年に19歳でこの大会を制して打ち立てた最年少優勝の記録を破った。
「今回は僕自身、初のシングルスマスターズということで、今年最終戦でもあり気合も入っていて、ここは絶対に勝って終わりたい、というふうに思っていました。そこで優勝して今年をいい形で終わらせたというのは、有言実行できて本当に嬉しく思っています。皆様のおかげで、ライブ配信もあって夜中まで日本から見て下さる方々もすごく多かったので、本当にありがとうございます」
ここで小田は牛の描かれた優勝の盾を披露。日本人としては国枝慎吾(日本/ユニクロ)が2012年から3連覇して以来の今回の快挙について、改めて率直な気持ちを話した。
「今日帰ってきて、ようやく本当に実感を覚えてきました。試合が終わった直後は本当に信じられなくて、夢の中にいるような感覚で。試合が終わって一夜明けて、すごくいま実感が湧いてくると同時に、SNSなどいろんなところでの反響を感じて、自分が成し遂げられたことの大きさっていうものを、すごく今は強く感じます」
対戦成績ではそれまで0勝3敗で、今年の「全米オープン」では国枝の年間グランドスラムを阻止して優勝しているヒュウェットという強敵を破ったことについては次のように説明。
「決勝にいくまで本当に1セットも取れずに負けていたという戦歴だったんですが、決勝戦はストレートで勝つことができました。自分のテニスの調子もすごく良かったですし、(決勝の前に)ラウンドロビンで対戦できたというのはすごくプラスに働いてくれたと思います。あそこで戦って負けたからこそ同じ週に2回対戦できたので、本当に良い情報を得られました。2試合続けてすごい試合ができたということはなかなかないことなので、そこが一番、勝利に大きく貢献してくれたなと思っています」
国枝からアドバイスをもらったかという質問には、「僕が勝ったことで国枝選手が1位に返り咲いたので、そこはすごく褒めてもらいました」と笑顔で答えて会場の笑いを誘った。
ラウンドロビンでのヒュウェットへの敗戦後には、改善した点があったという。「(ラウンドロビンでは)相手の調子もよかったのですが、何より自分のやりたいテニスが長い時間できなかったというのがあったので、まずそこでした。相手の攻略ももちろん大切なんですが、何より自分のやりたいプレーだったり、ポイントを取れるパターンというのももう一度みつめ直して、何が必要かというのを考えた時に、やはり自分の攻撃的なテニスだったり、速い展開でプレッシャーをかけてプレーするというのが一番の武器で、そこでポイントを量産できると思っていたので」
「それはラウンドロビンのヒュウェットとの試合ではなかなかうまくできなかった部分でもありました。彼ももちろんパワフルで、同じような戦略の立て方だったり、速いテンポで力強いショットを打ってくる選手の一人でもあるので、そこで先手を取られたなというのが少しあったので、そこをもっと自分が速く攻めて、もっと力強くプレーするというのをもう一度あの試合を見直して、そこを改善して決勝戦に臨みました」
ヒュウェットが持っていた最年少優勝記録を破ることについては、試合前にも話していたそうだ。「もちろんここで優勝すれば最年少記録というのは口にも出していましたし、それを大幅に更新できたというのはすごく嬉しいです。最年少というのは、始めた時期だったり、少しそういう運もあるかなと思っているので、そういうところでも改めて恵まれているなって感じましたし、だからこそもっともっと自分にしかできない記録をつくって、より多く最年少のタイトルをもっともっと取りたいなと思っています」
以前からのストロングポイントであるサービスに加え、リターンの強化にも努めている。「サーブはもちろん一番のストロングポイントではあるんですが、サーブだけではリードできないので、リターンを強化してもっとポイントを取るというのもここ一年努力してきた部分でもあります。それが最近本当にリターンゲームでブレークできる展開もすごく増えてきましたし、リターンも武器になりつつあるなというのを実感して、サーブとリターンでポイントを多く取れる選手に徐々になってきたらなと思っています」
プロに転向しグランドスラムデビューも果たした今年1年は「全然満足はしていないが、来年につながる本当にいい年だった」と語る小田。今後はグランドスラムや「パリパラリンピック」でも最年少優勝を果たすこと、そして4回対戦してまだ一度も勝ったことがない国枝選手から日本の大会で勝利を挙げることも大きな目標だ。
「テニスを好きで始めて、パラスポーツの中でもテニスを一番やってみたいと思って始めたので、そこは今でも全く変わらないですし、真面目にやろうと思って必死にやっているわけではなく、ただ自分がやりたいから、自分がもっともっと強くなりたいからやっているというのが一番大きい」と言う小田はまだ16歳。38歳にして世界王者に返り咲いた国枝とともに日本の、そして世界の車いすテニス界を牽引し、さらに大きく羽ばたいて欲しい。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は記者会見で優勝の盾を披露する小田
(Photo by WOWOWテニスワールド)