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自分より強い相手と練習することのデメリットとは?

「全仏オープン」でのナダル

テニス界には、自分より強い相手と練習することでしか成長しないという信条がある。しかし、必ずしもそうだろうか。米テニスメディアBaselineが、自分より強い相手と練習することのデメリット、そうでない相手と練習することの重要性を紹介している。

自分より強い相手と練習するというアプローチが魅力的に映る一つの理由は、不都合な点が最小限であることだ。格下の選手は勝つことを全く期待していないため、結果にかかわらずいい気分でコートを去ることができる。テニスチャンネルのアナリストを務める元世界女王トレーシー・オースティン(アメリカ)は、「自分が勝つべきだと考えていない時は、とても自由にプレーすることができます」と言う。

もう一つの魅力は、自分より強い選手の球のスピードだ。強い選手のボールはより速く安定しているため、受ける側が自分自身でスピードを生み出し、技術を駆使する必要がほとんどない。「自分より強くボールを打つ相手と打ち合うのは、とても心地良いものです。多くの場合、ただ相手のスピードを利用して返球すればいいのです」とロサンゼルスに拠点を置くプロ指導者のロバート・ブリッジフォード氏は説明する。

しかし、競争や技術に関わるプレッシャーがうんと少ない状況であるため、自分より強い相手と頻繁に練習する選手は、効果的に競い合う方法を身に着けるに至らない。

「当然ながら、自分より強い選手は自分にリズムを与えてくれます。でも、それは現実とは違います。競争とは優れた選手と試合をすることではありません。競争で重要なのは、技量面で自分と同じ水準の人々との試合で問題を解決し、勝つ方法を見つけることです」と水泳とテニスのクラブでテニス部門の責任者を務めるリン・ロリー氏は語る。

「自分の方が強いなら、なぜ勝てないのか?」という本の著者であるアレン・フォックス氏の説はこうだ。「絶えず自分より強い選手と練習していると、負けることに慣れてしまいます。何をやってみても、うまくいきません。相手は自分よりも強いのですから。自分にとってどんな戦略が有効なのかを見出すことができないのです」

真実を言えば、遅い球を打つ相手が自分のテニスの質を下げないのと同様に、自分より強い相手が自分のテニスの質を上げるということはない。自分より強い選手が打つ速い球は、自分がそのスピードを利用して安定性を生み出すことを可能にする。反対に、遅い球は、自分が全身を使ってスイングスピードを生み出すことを強いる。これにより、フットワーク、ストロークの機構、そして集中に、あらゆる類の混乱が生じる。遅い球で自分を戸惑わせる選手は、自分が打ち返すのに心地良いスピードと比べて不快なほど遅い球を打っているのだ。

効果的にボールを打つ技術や、様々な速度やスピンへの対応といった問題は、完全に自分の責任だ。1950年代にグランドスラムを5度制したトニー・トラバート(アメリカ)がかつて語ったところによると、もし自分自身に技術があれば、誰と対戦しているかに関係なく、ボールをしっかりと強く打つことができる。

「自分より強い相手と打ち合うのは、いい練習になり得ます。しかし、それではあまり頭を使うに至りません」とクラブで運営パートナー兼テニス部門責任者を務めるスティーブ・コンタルディ氏は語る。

上手い選手を、毎回打ちやすい球を打ってよこす送球機械の人間版だと考えてみよう。上手いと思えない選手の方は、肉体を与えられたMRIにラケットを持たせたようなものだ。つまり自分の深部を暴く診断をよこす。これは、多くのテニス選手が受け入れがたい事実だ。相手を過小評価するなら自分の責任で。こうした選手のプレースタイルは、あらゆる類の好ましくないふるまいや態度を引き出す。雑なフットワークや過剰な強打に始まり、そのうち怒りが湧いて、ありがちな「なんでこいつに負けるんだ?」というせりふが口をついて出る。

「強くなりたいなら、あらゆる種類の競争的な状況に身を置かなければいけません」と語るのはオースティンだ。「置かれている状況の現実を認めなければいけませんし、誰に対しても勝つ権利があるなどと考えてはいけません。ラファエル・ナダル(スペイン)から学ぶのです。彼は全ての対戦相手を真剣に扱い、誰と対戦しているかに関わらず全力を出します」

「勝ちにいくプレーをどうやって練習するかを学ばなければいけません。どうやって相手を倒すかを学び、そうした良い習慣をしみ込ませるのです。こうしたことは、自分より強い相手との試合では起こりません」とテニス・オーストラリアでハイパフォーマンス・コーチを務めていたエマ・ドイル氏は話す。

簡単に倒せる相手との対戦で、より幅広い技術を研ぎ澄ますことも可能である。ロリー氏によると、「それはもっとドロップショットに取り組むのにいい機会ですし、もっとネットに出てみたり、サーブを1度しか打てないセットをプレーしてみたりするのもいいでしょう」

自分より強い相手とは決して練習すべきではないと言っているのではない。とは言え、打ち合いは心地よい経験になり得るが、競い合えばさらに多くを学ぶことができる。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「全仏オープン」でのナダル
(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)

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