ツアーで世界中を巡るため移動が多いテニス選手の中には、読書が好きな人も少なくない。読書の秋に合わせて、そんな一人であるイガ・シフィオンテク(ポーランド)の読書傾向をご紹介しよう。
20歳の誕生日にもらった20冊の本が「人生最高のプレゼント」だと語るシフィオンテク。彼女にとってこれまで読んだ本の中でも印象深いのが、その時に贈られた一冊だったマーガレット・ミッチェル著の「風と共に去りぬ」。ピューリッツァー賞を受賞したこの作品はのちに映画化され、アカデミー賞8部門に輝いた。南北戦争下のアメリカを舞台に、南部出身の女性スカーレット・オハラの半生を描いた長編小説に「感情を揺さぶられ、大泣きしてしまった」とシフィオンテクは振り返る。
現在21歳のシフィオンテクはそのほかにもアレクサンドル・デュマの「三銃士」や「モンテ・クリスト伯」、ギュスターヴ・フローベールの「ボヴァリー夫人」、アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」といった有名小説を読んでいる。そんな中、F・スコット・フィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」に関してはやや辛口評価。第一次大戦後のアメリカが舞台となった同作を数時間で読み終わったそうで、「個人的には長編の方が好きだから、もっと長いと良かった。読みやすいと言えるけど、あまり話に深みがないの。古典だから悪いことは言いたくないけど。ただ、ギャツビーのことがあまり多く語られず、彼に関して謎の部分が多いのは良かったと思うわ」と述べている。
なお、いつも本かKindleをポケットに入れているシフィオンテクが本を読むのは基本的にはオフの時だが、時には大会に出場している間、しかも試合開始まで1時間を切った際まで読書していることがあるという。ただし、そのタイミングで読み終わった小説が「風と共に去りぬ」のように心揺さぶられる内容だった場合、試合直前に泣いてしまうこともあるんだとか。そのため、彼女のチームスタッフはシフィオンテクが本を読み終わるタイミングがいつになるかを注視するようにしているそうだ。
また、シフィオンテクが読むのは主にフィクションだが、イスラエルの哲学者ユヴァル・ノア・ハラリが現代の様々な問題に対してどのように取り組むべきかを提示した「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」のようなノンフィクションを手にすることもある。
ちなみに、シフィオンテクによれば彼女と同じくらい本を読むテニス選手は、元世界ランキング58位のカーヤ・ユバン(スロベニア)。ともに21歳の二人は仲が良く、本について語り合うという。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「WTA1000 ローマ」の優勝トロフィーを抱えるシフィオンテク
(Photo by Robert Prange/Getty Images)