• 【動画】コーチ変更多し！チャレンジ精神溢れすぎのラドゥカヌに松岡修造が迫る

ラドゥカヌは7月下旬からツルスノフと組んでいたが、10月上旬に関係は解消され、またしてもコーチ不在の状況となっている。19歳のラドゥカヌにとってツルスノフは、グランドスラム初出場ながら4回戦にまで勝ち進んだ昨年の「ウィンブルドン」から数えて5人目のコーチで、初めて自らチームを去ることを申し出た人物だった。一方のツルスノフはラドゥカヌと別れた直後に元世界4位で25歳のベリンダ・ベンチッチ（スイス）と組んでおり、ラドゥカヌの前は元世界2位のアネット・コンタベイト（エストニア）を指導していたため、ひとシーズンで3人のトップ選手についたことになる。

現役選手として2006年に世界20位にまで到達したこともツルスノフは、今年の6月にコンタベイトをキャリアハイの世界2位へと導いたほか、元世界2位のアリーナ・サバレンカ（ベラルーシ）やダブルス元世界1位のエレナ・ベスニナ（ロシア）のコーチも務めている。ラドゥカヌとの離別についてソーシャルメディア上では様々な憶測が飛び交う中、Tennis Majorsの独占インタビューに応じたツルスノフは経緯を語った。

「ほかに（組む選手が）いるかいないかに関係なく、エマから離れるつもりだった。私たちは折り合いがつかず、自分の中では無視することのできない赤信号が点灯していた。だから、そういうの（SNS上の意見）を読むと少しイライラするね。私は次から次へと選手を乗り換えたわけじゃないし、そんなことをするつもりもない」

「“全米オープン”でトライアルは終了したけど、彼女のチームを少しでも感心させられないかと思って、もう少し粘ってみることにしたんだ」と笑いながら言うツルスノフは、ラドゥカヌをこう称えている。「なんと言っても彼女は素晴らしい選手だ。努力家で、自分がスーパースターであるかのように考えたり行動したりすることはない。彼女は上達することに飢えていて、テニスに夢中だ。これは非常に珍しい組み合わせだと思う。だから、私は彼女と一緒に仕事をするのがすごく好きで、ぜひとも成功させたいと思っていた。好感を持てて尊敬している選手から離れることは私にとってとても難しい決断だった」

すぐに結果が求められる最近のコーチングの傾向として、ツルスノフにはラドゥカヌとの時間を十分に与えられなかったのかもしれない。ツルスノフが帯同した「全米オープン」にディフェンディングチャンピオンとして臨んだラドゥカヌは、世界40位だったアリゼ・コルネ（フランス）にストレートで敗れて初戦敗退を喫している。ツルスノフはコーチとしての思いをこう語った。

「彼女の結果を良くするには最低でも一年はかかるだろう。余裕を持って2年半といったところだ。もちろん、そう言い切るのは難しいし、すでに“全米オープン”で優勝している分、どうしてそれだけ時間をかける必要があるのかを理解してもらうのは難しい。それでも、私が思うに、彼女のゲームはすごく未熟で、多くの点で改善が必要だ。時間はかかると思うが、エマ本人や彼女のチームにも伝えたように、しばらく一人のコーチと時間をかけてみる必要がある。もしうまくいかなかったら、そこから次に進めばいい」

「彼女を成長させることにはとてもやり甲斐を感じたけど、それは長期にわたるプロジェクトになるわけで、コーチとしてはその期間、仕事が保証されているという安心感を持って臨みたい。だけど、彼女のコーチング状況を見ればそれが難しいことは一目瞭然で、ある考えが今、すべてのコーチの頭をよぎっているだろう」

「できたら続けるための解決策を見つけたかったけど、結局は折り合いがつかず、私は去るしかなかった。ベリンダはそのこととは無関係だ。もちろん、一人の選手と長く仕事をしたいと思っているけど、いつも自分がそれを決められるわけじゃない。エマに関しては、自分から別れたのは確かだ。私が決めた。彼女のチームが提案することにすべて同意することもできたが、心の底でそれは正しいことではないと感じていたんだ。今まで自分から（関係解消を）言い出したことはなかったから難しい決断だったけれど、それが正しい決断だと思った。心では残りたいと感じていたけど、頭では去るべきだと考えていた。あとで問題が起こるような気がして、自分の心の平安のためにそれを避けたかったんだ」

（WOWOWテニスワールド編集部）

※写真はラドゥカヌとツルスノフ（右より）
(Photo by Frey/TPN/Getty Images)