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アンドラのテニスの歴史を塗り替え続ける17歳ヒメネス カシンツェワ「他の人と自分を比べる必要はない」

「WTA250 モンテレイ」でのヒメネス カシンツェワ

ビクトリア・ヒメネス カシンツェワ(アンドラ)は、9月に「WTA250 ソウル」でアンドラ人選手として初めてツアー大会の準々決勝に進出。弱冠17歳ながら、ヒメネス カシンツェワは小国アンドラの名前をテニス史に刻み続けている。

ソウル大会でラッキールーザーとして本戦に出場したヒメネス カシンツェワは、フランスとスペインに挟まれたピレネー山脈にある人口7万7265人のアンドラという小さな国に生まれた。左利きの重いフォアハンドを武器に、コートを自在に駆け回り相手を翻弄する若きヒメネス カシンツェワは、2回戦で第8シードのレベッカ・マリノ(カナダ)を下し、3度目となるトップ100相手の勝利を飾った。

昨年の「WTA1000 マドリード」にヒメネス カシンツェワが出場するまで、アンドラ人選手がツアー大会の本戦に出場を果たしたことはなかった。14歳の時、ヒメネス カシンツェワは2020年「全豪オープン」ジュニアの部で優勝を飾っている。

プロ転向後、世界ランキングを180位まで上げたヒメネス カシンツェワは、ソウル大会でのベスト8進出で153位まで上昇。WTA(女子テニス協会)のインタビューで、ヒメネス カシンツェワはモチベーションや目標について話した。

「国を代表できることをとてもとても誇りに思っているわ」とZoomの画面越しにヒメネス カシンツェワは語った。

アンドラでテニス選手を志すのは複雑だった。テニスコートが無かったため、スペインのバルセロナに移住しなければならなかった。

「私は父とバルセロナに住んで、母と兄弟はアンドラに住んでいた。私にとってはつらい経験だった。でも正直に言うと、私を強くもしてくれた」

彼女の他にアンドラ人選手としてテニスの世界ランキングに名を連ねたことがあるのはたった一人、他ならぬ父親のホアン・ヒメネス グエラさんだ。ホアンさんは1999年にATP(男子プロテニス協会)の世界505位にランクインした経験を持ち、ジュニア時代のヒメネス カシンツェワのコーチを務めた。ヒメネス カシンツェワの心の支えとなってきたのは、テニス小国出身の選手たちの活躍だという。例えば、世界2位のオンス・ジャバー(チュニジア)や、今年「全米オープン」女子ジュニアの部で優勝したアレクサンドラ・アーラ(フィリピン)などだ。

「オンスやアレックス(アーラ)がやっていることは素晴らしいわ。私もその一部だと感じているの。テレビで、小さな大会に出場しているオンスを見ていたことを思い出すわ。今や彼女はグランドスラム2大会連続で決勝進出を果たした。アレックスは知っているの、優勝するのにふさわしい人よ」

父親のホアンさんは将来のアンドラのテニスに貢献する道を選び、現在はアカデミーを創設し、何よりも必要なテニスコートの整備に携わっている。ホアンさんが母国での活動に専念しているため、ヒメネス カシンツェワは過去にダニエラ・ハンチュコバ(スロバキア)やシャハール・ペール(イスラエル)を指導したエドゥアルド・ニコラス氏に師事している。

ヒメネス カシンツェワは、以前の自分を振り返り、自身を鼓舞することがあるという。

「振り返ってみると、私が“全豪オープン”でやったことは素晴らしいことだった。私はたった14歳の少女で、初めてのグランドスラムだった。すごいことね。私の心がどれだけ強靭だったか、戦ってベストを尽くすことで優勝できると実際に思っていたのがいかに強いことだったか。私は自分自身に本当に勇気づけられている。若いこともランキングも関係なくて、すべてのポイントで戦い続ければ、チャンスがあると思えるの」

「私の目標はただそうすること。これから長いキャリアが待っている、その過程を楽しみたい。あとは、運命が私を連れて行ってくれる」

ここ1年ほどで素晴らしい成長を遂げたヒメネス カシンツェワは、特に長引く接戦で強さを見せてきた。

昨シーズンには、WTA125大会の2021年最長記録となる3時間48分にも及ぶ試合を戦い抜いた。「WTA125 モンテビデオ」の2回戦でマリア ルルデス・カール(アルゼンチン)と対戦したヒメネス カシンツェワは、マッチポイントを2度しのぎ、7-6(10)、5-7、7-5で勝利を掴んだ。今年8月の「WTA125 バンクーバー」2回戦でも、ジョディ・バレージ(イギリス)との2時間55分の接戦を制し、7-5、6-7(5)、7-6(7)で勝利している。

「プレッシャーや緊張感を感じるのが好き。競争心が強いの、ずっとそうだった。本当のこと言うと、テニスはそこが好き。私を生かしてくれる、目覚めさせてくれるものなの。実は、試合を終えるとすごく疲れて緊張するんだけれど、試合中はすごく楽しい。なんていうか、楽しみと苦しみの両方って感じ。でも最後は、苦しんで勝てると最高の気分よ」

2021年11月に行われた「WTA125 モンテビデオ」で、ヒメネス カシンツェワは初めてトップ100選手から勝利を挙げた。1回戦で第1シードのベアトリス・アダッド マイア(ブラジル)を6-3、6-4で退けて番狂わせを演じたのだ。その後アダッド マイアはトップ20入りを果たしている。だが、この時の試合の準備は完璧とはいかなかったようだ。

「私はブラジルにいて、ブラジルからアルゼンチンに、そしてアルゼンチンからウルグアイへの乗継便に乗るところだった。ただアルゼンチンでちょっと問題が起きてウルグアイに行けなかった、理由ははっきりと覚えていないけど。空港を出ることも許されなくて、警備員と一緒に寝なきゃいけなかったの」

「翌朝、なんとか飛行機に乗ることができて、ナイトセッションの試合の前にウルグアイに着けた。それでも私はラッキーだったの。フィットネスコーチが別の便でウルグアイに向かってくれて、試合の30分前に来てくれたから、ウォームアップはしっかりできたのよ!それに、大会に来るまでに十分ストレスを受けたと思ったから、できるだけポジティブでいようと決めたの。だから勝つことができたのね」

この経験は、ヒメネス カシンツェワに重要な教訓をもたらした。

「完璧であることとテニス選手でいることを両立するのは、単純に無理。すごく厳しいスポーツなのよ。全身を使うスポーツで、毎日完璧なストロークをすることはとても難しい。1日1日が違う日だし、違う選手、違う状況、違う天候。自分がコントロールできる唯一のことは、自分がどういう食事をするか、睡眠を取るか、ウォームアップをするか、そしてどれだけプロフェッショナルとして振る舞えるか。テニス選手として集中すべきなのはそれだけ。フォアハンドの調子がいいかどうか、とかじゃないの」

学校では語学が得意だというヒメネス カシンツェワ。スペイン語、カタルーニャ語、英語、フランス語、そしてロシア語を話せるそうだ。

「フランス語とロシア語はちょっと難しい。フランス語は学校で習ったの。ロシア語は母から。なんとか話せるかなって感じ。この2つの言語は維持できるよう努力しているわ」

今年に入り、マーケティングにも興味が出てきたという。そのためか、自分の世代にどうやってテニスをアピールするべきか、彼女なりのはっきりした意見を持っている。

「私だったら、台頭してくる新しい選手にもっとスポットライトを当てる。スポーツのあらゆる側面、それに関わるあらゆる人々を広く知らしめることが重要なの。トップにいる少数や、同じ人ばかりじゃなく、若い選手だけでもなく、力をつけてきたベテランの選手も。それに私の世代は変化を見るのが好きだと思う、いつも同じ人じゃなく」

勉強の他に、ヒメネス カシンツェワのお気に入りは飼っているチワワのチョコだと語る。

「チョコは2020年8月3日にやってきた。実はすごく悲しい日だったの。私にはレオっていう別のチワワがいたのだけど、その日の朝、彼は車に轢かれたの。私たちはみんな悲しみにくれていて、その日の午後にチョコを迎え入れることにした。最初はレオがいなくて寂しくてとても辛かったけれど、チョコがいるからすぐに素晴らしい日々になった。2匹は全然違うけれど、同じように愛しているわ」

「彼は大会にはついてこないの。祖母や叔父に預けているわ。みんなチョコが大好きで、私がいない時はみんなしてチョコの世話をしたがるの。私が遠征するとなると、連れて行く必要はないよ、私たちが見るからって言うのよ」

9月の「WTA250 チェンナイ」では、2回戦で2005年生まれのヒメネス カシンツェワとリンダ・フルビルトバ(チェコ)との同年代対決が実現する可能性があった。ジュニア時代は同じ大会に出場し続けていた2人だが、対戦したことは1度もない。チェンナイ大会でもヒメネス カシンツェワが1回戦でレベッカ・ピーターソン(スウェーデン)に敗れたため、対戦は実現しなかった。ピーターソンはフルビルトバに敗れ、フルビルトバはその後自身初のツアー大会優勝を飾った。しかし、ヒメネス カシンツェワは同い年の選手の活躍をさほど気にしていないと語る。

「リンダと[妹の]ブレンダ・フルビルトバ(チェコ)は闘志あふれる選手で、他の選手からもいつも尊敬されているわ。彼女たちは素晴らしい選手だし、今の位置にいるのもふさわしいことだと思う。でも、私は私のことだけ考えたい。リンダは素晴らしいことを成し遂げたけど、私は私の道を行くだけ。自分にプレッシャーをかけたくない。私にもできるってことは分かっているけれど、そういう風に考えたくないの」

今年ヒメネス カシンツェワが学んだのは、焦る必要はないということだ。

「時々、トップ100に入りたい、トップ選手になりたいって気持ちがとても強くなって、大会に行ってプレッシャーを感じすぎてしまうことがある。そうすると、自分の望むようにいかない。みんな、人生の道筋が違うことを学んだし、他の人と自分を比べる必要はないわ」

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「WTA250 モンテレイ」でのヒメネス カシンツェワ
(Photo by Gonzalo Gonzalez/Jam Media/Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

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