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ダブルス元世界王者のソアレスが引退「今こそテニスにお返しができる」

写真は2021年「ATPファイナルズ」でのマレー(左)とソアレス(右)

その日、USTAビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンターの13番コートは感動に包まれた。ブルーノ・ソアレス(ブラジル)のボレーがネットにかかると、ソアレスはジェイミー・マレー(イギリス)と長い抱擁を交わした。この瞬間、彼ら二人の「全米オープン」が終わったのと同時に、ソアレスの現役最後の試合が終わった。ATP(男子プロテニス協会)の公式ホームページが伝えている。

40歳になったソアレスは、ダブルスチームの世界ランキングで2度の年末1位を獲得し、通算35大会で優勝。そして6度のグランドスラム優勝(男子ダブルスで3度、混合ダブルスで3度)も達成している。輝かしいキャリアの中で、ソアレスは実に545試合で勝利を収めた。

2022年に入って数ヶ月した頃、ソアレスは今年が現役最後の年になると悟った。コートで達成した数多くの功績に感激しているが、それ以上に同僚やファンからの多くのサポートに心打たれたそうだ。

「これまで僕がどれだけのことを成し遂げてきたのかを見ると、なんというか圧倒される気持ちになるよ。でも一番素晴らしいことは、友人、家族、ファン、皆からもらったメッセージだ。僕にとって最も特別なことだと思う」とソアレスは語った。

「素晴らしい言葉ばかりだった。タイトルやキャリアも素晴らしいことだと僕は常に言ってきた。ただ最終的に大事なのは人なんだ。だから僕は、この人生の特別な時期に、皆の愛や素晴らしいサポート、そしてメッセージをもらえて、本当に恵まれているし、光栄に思っている」

ソアレスにメッセージを送ったうちの一人がマルセロ・メロ(ブラジル)だ。ダブルス元世界1位のメロは、ソアレスと共に撮った写真を数枚SNSに投稿。二人は共にブラジルのベロオリゾンテ出身で、共に子供時代を過ごした後、プロテニス選手として世界へと羽ばたいた。

「同じ街出身のブルーノのようなやつと知り合えたことは本当に特別なことだ。友達として一緒に旅をしたこともね。一緒の飛行機に乗ることも多かったけど、とても心地良かった。大きなタイトルを何度も獲った…ベロで育って、世界制覇を目指して、とてもいい感じだったよ。ブルーノは本当に良いやつだ。皆彼のことがとても好きなんだ。彼はいつも上機嫌で、いつもポジティブ。これまでの時間、彼とコートに共に立つことができてすごく楽しかった」

「彼の人生の次の章を祝福するよ。テニスで多くを達成したように、きっとうまくやるさ」

ソアレスは、イラクでテニスを始めた。ソアレスの父マルサスさんは高速道路で働く土木技師で、家族は作業員宿舎で暮らしていた。マルサスさんが働いている間、ソアレスの母マイサさんが家族の世話をした。ソアレスは5歳頃からテニスを始めた。6年イラクで暮らした後、一家はブラジルに戻った。ソアレスは街から街へと転々としながら子供時代を過ごした。

「両親が僕たちの生活、そして3人の子供を育てるということにどれだけの労力を注ぎ込んでいたかを考える。もちろん父は働いていたけれど、母はイラクで3人の子供と暮らすという責任をすべて、ほとんど一人で負っていた。その経験は僕の家族を強くしてくれたと思うし、なかなかの道のりだったと思う。僕の人生はずっとあちこち移り住む生活だった。昔は、ある街から違う街に移ってしまうと、友達をほとんど失ってしまった。SNSもないし、WhatsAppもない。連絡を取り続けることは難しかった」

ソアレスはすぐテニスに夢中になり、地域の大会に出場するようになった。10代になる前に知り合ったテニス仲間の1人がメロだった。ジュニアの頃から、感動的なキャリア最後の試合まで、二人は多くの困難や達成感を共に味わってきた。

「写真がすべてを物語っている。最後の試合の後に彼が僕のところに来て抱きしめてくれて、僕らはその瞬間泣き崩れた」とソアレスは語った。「プロテニス選手であることがどれだけ難しいことか、皆わかっている。僕らがそれを7歳、8歳の頃から一緒にやっているのはすごいことだ。同じこと、同じ大会、同じ過程をね」

「僕らは今も大会に出て、自分の夢を叶えている。かなり信じがたいことさ。この写真は、そういう意味でとても特別な意味を持っている。これは文字通り僕らの旅の始まりで、そして今はその旅が終わる時だ。それを考えるととても素敵なことだと思う」

ソアレスが初めてツアー大会のダブルスで優勝したのは2008年、ケビン・ウリエット(ジンバブエ)とペアを組んで出場したノッティンガムの大会でのことだった。その後、2012年から2015年にかけてアレクサンダー・ペヤ(オーストリア)とペアを組み、ツアーでブレイク。2つのマスターズ1000大会を含む12大会で優勝を飾った。

ソアレスが最も成功を収めたのは、マレーとペアを組んでからだった。5年半の間に、12大会で優勝。ペアとして年末No.1となった2016年には、「全豪オープン」と「全米オープン」も制した。

「僕たちはとても楽しんで旅をした。それがこの関係が特別だった理由だと思う。僕たちは本当に良い友達同士で、共に試合に出て勝つことを楽しんだ」とマレーは語った。「試合を待つ間、持て余す時間がある。ツアーでは暇な時間が多いんだ。その時間を、共に楽しくいることができる誰かと過ごせるなら、そのほうがずっと面白いのは明らかだ」

「僕にとって、ブルーノが引退してしまうことの一番悲しい部分はそこさ。その時間がなくなること、そして今後そういう過ごし方のできる誰かを見つけなきゃいけないこと。きっと簡単にはいかないと思う。彼は素晴らしい人間だ。素敵な家族もいる。彼の今後の人生に多くの成功が訪れるよう祈っているよ」

ソアレスは、2020年にもマテ・パビッチ(クロアチア)とのペアで年末No.1に輝いた。こういった功績の多くを誇りに思いつつも、築き上げた人間関係のほうがずっと多くの意味を持つ、とソアレスは強調する。

「ぼくにとって、こっちのほうがより価値がある。とても厳しい環境で、競争的なライフスタイルだ。何年も、多くの人と対戦し続けて、多くのことの解決策を見つけて、プレッシャーもとてつもない。夜寝る時、重要になるのはそれだと思う。どういう人間になったかということ、人としてどうかということ。僕にとってそのほうがずっと値打ちがある。僕のテニスのキャリアは終わったけれど、人生は続く。死ぬ時まで、持ち続けたいと思うものはそれさ」

ここ数年でソアレスはビジネス界にも進出し始めており、引退後は事業家として活躍の場を広げていくことだろう。だが、テニス界と手を切るわけではない。

「テニスは僕の人生だ。このスポーツは僕の血液に、DNAに入っているから、離れる気はない。親しい友人がたくさんツアーにいるしね。連絡を取り合うつもりだし、僕自身テニスの大ファンなんだ。つまり、テニスを愛している」

「現役中ずっと、何かお返しをしようとしてきた。けれど、今こそ時間をかけてお返しができるようになった。僕がテニスに別れを告げることは絶対にないよ」

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は2021年「ATPファイナルズ」でのマレー(左)とソアレス(右)
 (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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