現地24日、「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月29日~9月11日/ハードコート)開幕に先駆けて、ウクライナを支援するためのチャリティーイベントがニューヨークで行われ、男女のトップ選手たちが出場して大勢の観客を沸かせた。だが、その裏ではウクライナの女子選手の批判を受けて、同イベントへの参加を表明していた元世界女王のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)が姿を消している。米スポーツメディア ESPNなど複数のメディアが報じた。
アメリカテニス協会(USTA)は、「全米オープン」期間中に寄付を募ったり、ウクライナの旗を会場の至るところに飾ったりと、ウクライナへの支援を全面的に示す予定だ。その一環として、ウクライナの独立記念日である8月24日の夜にビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンターで、スター選手によるエキシビション大会「Tennis Plays for Peace(平和のためのテニス)」が開催された。
8月上旬から徐々に発表された参加選手に、22個のグランドスラムタイトルを誇る元世界王者のラファエル・ナダル(スペイン)や世界ランキング4位のカルロス・アルカラス(スペイン)、世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)、世界8位のジェシカ・ペグラ(アメリカ)、世界12位のココ・ガウフ(アメリカ)といったビッグネームが伝えられる中、大会ディレクターからの依頼に応じる形でアザレンカも出場する予定となっていた。ところが、開催の数日前に世界72位のマルタ・コスチュク(ウクライナ)をはじめとしたウクライナの選手がアザレンカの同イベント参加を強く批判したことを受けて、USTAはイベント当日にアザレンカが参加しないことを発表。「ウクライナの選手の気持ちや、まだ続いている侵攻を考慮した結果、これが我々にとって正しい行動であると信じている」と声明で述べた。
コスチュクはインタビューの中でこう話している。
「もちろん私も(同イベントに)招待されたわ。たぶんウクライナの選手は全員招待されたはずよ。でも、ロシアやベラルーシの選手が参加すると聞いて出場しないことをすぐに決めたわ。そもそも大会側はウクライナの選手たちに、彼らの参加を認めるかどうかを確認してくれなかった。それに、ビクトリア・アザレンカを招待したというのも理解できない。彼女は私たちを支援しているような素振りを見せたことはないわ。もしかしたら、彼女が話しかける相手として私はランキングが低すぎるのかもしれないけど、少なくとも侵攻が始まった時にはツアーでそれなりにプレーしていたわ。だから、お互いの関係性を考えると、彼女が招待に応じたことも信じられない」
USTAはアザレンカの欠場に至った経緯には触れていないが、世界89位のレシヤ・ツレンコ(ウクライナ)が詳細の一部を明かしている。「私たちはこのイベントの主催者であるUSTAに対して、ウクライナの国民、そしてウクライナの人々にとって、これ(アザレンカの参加)は間違っており、容認できないことだと説明するために、様々な行動を取ったわ。私たちはそれを伝えることができ、どの主張が功を奏したのかはよくわからないけど、望み通りになって良かったと思っている」
本件に関して、出場が決まった当初からアザレンカ本人によるコメントは得られていない。24日はウクライナの独立記念日であると同時に、ウクライナ侵攻が始まってちょうど半年が経ったタイミングでもあった。
イベントでは、レジェンドのジョン・マッケンロー(アメリカ)がガウフと組んでナダル/シフィオンテク組と戦ったり、プロへの転向を発表したばかりの新星、世界171位のベン・シェルトン(アメリカ)とペグラが、世界8位のフェリックス・オジェ アリアシムと世界14位のレイラ・フェルナンデスのカナダペアと対戦するなど、エキシビション大会ならではの華やかな試合が行われた。また、シフィオンテクや世界86位のデヤナ・イエストレムスカ(ウクライナ)がウクライナ問題や平和への思いを語っている。
(WOWOWテニスワールド編集部)
写真は2019年「WTA1000 インディアンウェルズ」でのアザレンカ
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)