現地21日に行われた「ATP1000 シンシナティ」(アメリカ・シンシナティ/8月14日~8月21日/ハードコート)決勝で、世界ランキング152位のボルナ・チョリッチ(クロアチア)がマスターズ1000大会初優勝を果たした。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトが報じている。
チョリッチは昨年の5月に右肩の手術を受け、ツアーに復帰を果たしたのは今年3月の「ATP1000 インディアンウェルズ」でのこと。復帰後はなかなか調子を上げられず、5月には世界ランキングを278位まで落としていた。しかし、6月にイタリアのパルマで開催されたチャレンジャー大会で優勝すると、7月の「ATP500 ハンブルク」でベスト8入りと結果を出し始めていた。
シンシナティ大会の会場に到着したチョリッチは、手術を受けた右肩の調子を維持するために毎日30分から90分ほどケアをしなければいけないと明かしていた。「テニス選手という仕事を続けたいならしなければいけないこと。やらないとプレーできなくなる。選手生活を続けるために毎日追加で30分ケアをすることは大きな犠牲ではないんだ」
プロテクトランキングを使って出場したシンシナティ大会では、初戦で予選を勝ち上がってきたロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)にストレート勝ち。続く2回戦では同大会の結果次第では世界王者に返り咲くチャンスがあった第2シードのラファエル・ナダル(スペイン)を相手に7-6(9)、4-6、6-3で勝利し、番狂わせを起こした。チョリッチはその後も、第15シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)、第7シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)、第9シードのキャメロン・ノリー(イギリス)というシード選手を次々と倒し、ツアーでは2020年10月の「ATP500 サンクトペテルブルク」以来に決勝の舞台へと辿り着いた。
決勝では、世界王者で第1シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)を準決勝で破るなど強さを見せた第4シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)と対戦。チョリッチとチチパスはこれまで2度対戦し、お互いに1度ずつ勝利を収めていた。試合はチチパスが3ゲームを連取する素晴らしい立ち上がりを見せたが、第7ゲームでチョリッチが3度目のブレークチャンスをモノにして追いつく。そのままタイブレークに突入すると、チョリッチがチチパスに1ポイントも与えない圧巻のプレーを披露し、セットを先取。
この日チョリッチは何度もバックハンドのラリーに持ち込みチチパスよりも安定した力強いショットを見せた。86本バックハンドを打ったうち、ウィナーが10本、エラーをわずか4本までに抑えた。対するチチパスは94本のバックハンドを放ち、ウィナーが0本、エラーが15本だった。チョリッチは第2セットではサービスゲームを落とすことなく、2度ブレークに成功して、7-6(0)、6-2でキャリア初となるマスターズ1000大会のタイトルを手にした。またツアーでの優勝は2018年6月の「ATP500 ハレ」以来のこと。
今季初優勝で、キャリア通算では3つ目のタイトル獲得となったチョリッチは「正直、言葉が出ないよ。信じられない感覚だ。この瞬間を楽しむことにするよ。今日はいいプレーができると思っていた。一生懸命トレーニングしたし、いいテニスができると分かっていたけど、これほどのレベルのテニスができるとは思わなかった。自分の力に気付いてなかったね。すごく幸せだよ」と喜びを語った。
また、決勝については以下のように振り返った。「とてもタフな試合だった。最初はあまり良いプレーができず、チチパスに攻め立てられた。でも良いサーブが出るようになり、良いプレーもできるようになってからはこちらも激しく戦えるようになった。そして第2セットでは、今年1番のプレーができたと思うよ」
ダブルスでは第1シードのラジーブ・ラム(アメリカ)/ジョー・ソールズベリー(イギリス)ペアが、第6シードのティム・プッツ(ドイツ)/マイケル・ビーナス(ニュージーランド)ペアを7-6(4)、7-6(5)で破った。ラム/ソールズベリー組はこれで今季2冠目。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATP1000 シンシナティ」でのチョリッチ
(Photo by Frey/TPN/Getty Images)