1972年の創立から50年を迎えたATP(男子プロテニス協会)。それを記念し、ツアーを彩ってきた珠玉のショットを公式ウェブサイト、YouTubeが紹介している。
2002年のバーゼル大会で驚愕のショットを披露したのはロジャー・フェデラー(スイス)。アンディ・ロディック(アメリカ)に左右に振られたフェデラーは、ロディックが思いっきりスマッシュしたため大きくコートから飛び出したボールに走って追いつくと、右手をフックのようにしてパッシングショットを決めた。返せないと思われたスマッシュからまさかのウィナーを決められたロディックは、思わず相手コートにラケットを放り投げ、フェデラーが笑いながらそのラケットを手渡している。
ニック・キリオス(オーストラリア)のナイスショットは得意の股抜きショット。2019年のマイアミ大会、ネット際で素早い反応を見せたボルナ・チョリッチ(クロアチア)のボールを追ってキリオスはコートの逆サイドへ。チョリッチに背中を見せる形でボールを追っていたが、そこから角度のある股抜きショットを決めた。そのショットに、実況者が「マジかよ!信じられないくらい素晴らしい」と感嘆している。
ガエル・モンフィス(フランス)は高い身体能力を生かした一打。2019年のマドリード大会でマートン・フチョビッチ(ハンガリー)のドロップショットからのロブという攻撃に対し、ロブに追いつくと、ジャンプしながら上半身を回転させてフォアハンドで打つ。珍しいフォームから見事なウィナーが決まり、会場からは大歓声が上がった。ATP公式ウェブサイトは「類稀な才能によって生まれた唯一無二の名ショット」と紹介している。
後ろを向いたままでナイスショットを放ったのはピート・サンプラス(アメリカ)。1999年のハノーファー大会でグスタボ・クエルテン(ブラジル)のロブを追ったサンプラスは、相手に背を向けたままバックハンドを打ち、これが見事なダウンザラインに。サンプラスは勢いあまってコート端の看板によりかかることになったが、満場の拍手を送られた。
ビッグ3の対戦でも股抜きショットが飛び出している。2011年のマドリード大会でラファエル・ナダル(スペイン)がノバク・ジョコビッチ(セルビア)との打ち合い中に前に出ると、ジョコビッチがロブを上げる。それに追いついたナダルが股抜きでロブを返し、そのボールはエンドライン手前で落ちた。これにはジョコビッチもラケットを叩いて賛辞を送っている。
フェデラーを思わず苦笑させたのは、レイトン・ヒューイット(オーストラリア)。2005年のインディアンウェルズ大会でのロングラリー中にスライスやロブ、ドロップショットでフェデラーを走らせ、ウィナーになってもおかしくない相手のクロスショットに食らいついて、フェデラーのブレークポイントをしのいだ。素晴らしい攻防を繰り広げた両者は、スタンディングオベーションを受けることに。
パブロ・クエバス(ウルグアイ)はサンプラスのように後ろ向きのままで名ショットを決めている。2017年のマドリード大会でアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)のロブを追い、ノールックのまま右手で背後へ打ち、相手のコートへ突き刺した。
決勝のチャンピオンシップポイントというドラマティックな場面で主役となったのはロディック。2011年のメンフィス大会決勝でロディックのチャンピオンシップポイントをしのぎたいミロシュ・ラオニッチ(カナダ)は、相手のいないサイドにボレーを落とす。しかしロディックが素早い反応を見せ、最後はダイビングしながらボールを拾い、優勝をもたらすショットを決めた。飛び込みながらもしっかりラケットの面を合わせたロディックが、最高の形でタイトルに花を添えている。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのモンフィス
(Photo by Mackenzie Sweetnam/Getty Images)