中立選手としてプレーしていることを母国の政治家に批判された世界王者のダニール・メドベージェフ(ロシア)が、それでもテニスへの姿勢は変わらないと話している。伊ニュースサイト UBI Tennisなど複数のメディアが報じた。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)およびITF(国際テニス連盟)が講じた措置によって、ロシアと同盟国ベラルーシの選手たちは公式ウェブサイトなどから国旗・国籍が削除され、中立の選手としてプレーすることが大会への出場条件となっている。その一人であるメドベージェフは、先週の「ATP250 ロスカボス」で優勝した直後にロシアの国会議員の一人に結果は称えられるも、中立選手としてプレーしていることを「西側の要請に従ってロシアの旗を削除してから、私や我が国の国民にとって彼はほとんど興味のない存在になった」と批判されている。その政治家はメドベージェフがフランス語を流暢に話し、モナコに住んでいることにも触れた。
「“ロシア人テニス選手の”ダニール・メドベージェフと呼ばれていることが理解できない。もし彼がフランスに住んでいて、ロシアが公式に非友好的と指定した国の市民権を持っているなら、彼の肩書は“ロシア出身のフランス人テニス選手”とした方が正しいだろう」
第1シードの前回チャンピオンとして出場する「ATP1000 モントリオール」(カナダ・モントリオール/8月8日~8月14日/ハードコート)に先立ち、メドベージェフは中立選手としてプレーすることについてこう語っている。「僕にとって大切なのはテニスをプレーできることだ。この仕事を楽しんでいる。僕はルールに従っているだけさ。僕たちが中立の立場でしかプレーできないのは明確だ。それでも僕がダニール・メドベージェフであることには変わりない。大きな大会で優勝したいし、どの試合にも勝ちたい。その気持ちは変わらないよ」
ロシア国籍であることから「ウィンブルドン」に出場できなかったメドベージェフは、同大会のランキングポイントが付与されなかったことから世界ランキング1位の座を守ることができた。それでも出場したかったとメドベージェフは振り返る。「僕にはどうやったって“ウィンブルドン”の決定を覆すことはできなかったし、ルールにも従わないといけなかった。だから、せめてその恩恵をありがたく受けるしかないよ。もちろん、“ウィンブルドン”に出て、いい結果を残したかった。僕はいつだって一番大きな大会に出場したいと思っている。でも、いつまでもそのことを嘆いていても仕方がない」
ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)は怪我により、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は新型コロナワクチンを打っていないことでカナダに入国できないため、そろって「ATP1000 モントリオール」を欠場している。ビッグ3の不在についてメドベージェフは、「僕の目標は優勝することだから、彼らがいてもいなくてもあまり変わらない」とコメント。「だから、相手が予選通過者であろうが、ワイルドカードやラッキールーザー、第2シードの選手であろうが、僕はただ試合に勝ちたいんだ」
1回戦を免除されているメドベージェフは2回戦で、「ウィンブルドン」の準優勝に続いて「ATP500 ワシントンD.C.」で優勝を飾って勢いに乗るニック・キリオス(オーストラリア)と対戦する。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATP1000 インディアンウェルズ」で記者会見に臨むメドベージェフ
(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)