「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)で第2シードのラファエル・ナダル(スペイン)が準決勝を怪我により棄権したことで、元世界ランキング13位のニック・キリオス(オーストラリア)の決勝進出が決まった。キャリア最大の試合を前に、母親が今のキリオスについて語っている。仏AFP通信が報じた。
27歳のキリオスは1月の「全豪オープン」でタナシ・コキナキス(オーストラリア)とペアを組んでダブルスで優勝を飾り、シングルスでも「ウィンブルドン」前までに3大会でベスト4進出と、好調なシーズンを送っている。そして、「ウィンブルドン」では3回戦で第4シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)を破るなどして、自身初のグランドスラム決勝進出を果たした。
今は勢いに乗っているキリオスだが、2019年の「全豪オープン」で1回戦敗退となった前後に“暗黒時代”を過ごしていたことを今年に入ってから告白している。当時は自殺を図ったこともあり、アルコールや薬物に依存し、家族や友人とも距離を置いていたという。そこからの変化について母親のノライラさんは、今の恋人コスティーン・ハッツィさんのおかげもあって、キリオスはようやく自分の人生を楽しめるようになったと語っている。
「彼がやっと自分の置かれている状況を前向きに受け入れられるようになったことが一番嬉しいわ。(Instagram)のストーリーを見れば、彼がどれだけ変わったがよくわかる。今年の“全豪オープン”から変わったような気がするの。人生はテニスを中心に回っているわけではないということを、今は理解しているからよ。誰も彼にテニス中心の人生を送ってほしいと思っていないわ。人生は楽しまないと。彼が今、人生を楽しめていることが本当に嬉しい」
ノライラさんによれば、以前のキリオスはとにかく無気力で、ビデオゲームばかりやっていたという。海外を訪れた時でさえ、家族と一緒に観光名所を訪れることもなく、部屋にこもってばかりだったと話している。
変化が見られた今年の「全豪オープン」の少し前、昨年末からキリオスはハッツィさんとの交際を始めた。二人は頻繁に仲睦まじい様子をソーシャルメディアに投稿しており、「ウィンブルドン」ではハッツィさんが「選手のトレーナー」と書かれたVIPパスを首から下げて関係者席から応援する姿が目撃されている。ハッツィさんはトレーナーの資格を持っておらず、プロレベルでプレーしたこともないと報じられているが、トレーナーと同じくらい、あるいはそれ以上にキリオスを支えているようだ。
決勝進出が決まった際にハッツィさんはInstagram上で「“ウィンブルドン”の決勝だなんて信じられない。愛してるわ。みんなから応援される中でプレーするあなたの姿を楽しみにしてる。自分に合っている人が周りにいれば、不可能なんてない」と祝福。これに対してキリオスも「ベイビー、凄いことになった。(優勝まで)あと一勝だ。愛してるよ」と返している。
キリオスは「ウィンブルドン」でも1回戦と3回戦で行動規範に反して罰金を科せられたり、準々決勝の前日には、ハッツィさんの前に交際していた元恋人から暴行の容疑で訴えられて8月に出廷することになったりと、波乱万丈な日々を過ごしてきた。だが、そうしたことに集中力を乱されることなく、2005年「全豪オープン」のレイトン・ヒューイット以来、17年ぶりにオーストラリア人の男子選手としてグランドスラムのファイナリストとなった。決勝では第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」男子ダブルスで優勝した後のキリオスとハッツィさん
(Photo by Quinn Rooney/Getty Images)
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