「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)の男子シングルス1回戦で、元世界ランキング13位のニック・キリオス(オーストラリア)が試合中に侮辱してきた観客の方向に向かって唾を飛ばしたことが話題となっている。米スポーツメディア ESPNなど複数のメディアが報じた。
大会2日目に行われた1回戦でキリオスは、ワイルドカード(主催者推薦枠)で出場する世界219位のポール・ジャブ(イギリス)を3-6、6-1、7-5、6-7(3)、7-5で退けた。勝利を手にした直後、キリオスは自分を罵倒し続けた観客の方向に向かって唾を飛ばしている。試合後の記者会見でキリオスはそのことについて謝罪することはなく、自分の正当性をこう説明した。
「試合に勝った瞬間に俺はそいつの方を向いた。俺は長い間、憎しみやネガティブな感情と向き合ってきたから、その人に対して悪いとは思っていない。彼はただ試合に来て、誰のことも応援せずに帰って行ったようなもんさ。単に煽ったり、軽蔑したりするためだけに来たとしか思えない。それは別に構わないけど、もし俺がやり返したとしても、文句を言われる筋合いはない」
3週間ほど前の「ATP250 シュトゥットガルト」でもキリオスは観客から人種差別的な言葉を浴びせられたと訴えていた。そのことで試合中に怒りを露にしたキリオスは、立て続けにラケットを激しく叩きつけ、さらに暴言を吐いたことで2度ペナルティを科されている。本人は「俺が理解できないのは、例えばシュトゥットガルトで俺がやり返した途端にペナルティを科されたことだ」と、自分ばかりが非難されることに不満を募らせている。態度の悪い特定の観客を会場から追い出すよう頼んでいたキリオスは、試合中に何度も主審と話している姿が見られた。このような一部の観客の振る舞いはソーシャルメディアが原因だとキリオスは主張している。
「俺はこの大会が大好きだ。だから(今回の出来事は)“ウィンブルドン”とは関係ない。ソーシャルメディアでは、あらゆることに否定的なコメントをする権利があると思うような人たちが全世代で増えていると思うんだ。そしてそれは現実の生活にも反映されている。観客との間にはフェンスがあるし、俺は物理的に何かすることも言うこともできない。そんなことをしたら俺が怒られるだけだ。でも、一部の人たちは好き勝手に言っていいと思っている」
キリオスはこの試合中にスタジアムの外に向かってボールを打ったことで警告も受けている。さらに、キリオスは自分がコートの後方で口にしたことについて線審の一人が主審に報告したことが気に入らず、彼女のことを「チクリ屋」と呼んだとも報じられている。本人はこれについて「俺は何もしてないのに、彼女は主審のところに行って、俺が言っていないようなことを告げ口したんだ」と弁明している。キリオスの訴えはさらに続く。
「俺は人の仕事場に行って、あからさまに唾を吐きかけたり見下したりしたことは一度もない。なんで人がアスリートに対してはそういうことをするのかが理解できないんだ。なぜ、彼らはそれが受け入れられると思っているんだ?スポーツの世界ではこういうことが極端に増えている。観客が選手に対して無礼な態度を取るようなことがだ。そんなことが許されていいはずがない。スーパーで普通にレジ打ちしている人に文句を言ったことがあるか?ないだろ。だったら、どうして俺が“ウィンブルドン”にいる時はそうなるんだ?どうしてなんだよ?」
「ウィンブルドン」の広報担当者によれば、試合中の一連の出来事やキリオスの記者会見での発言は審判やスーパーバイザーの間で話し合われ、罰金の対象となるかどうかが検討されるという。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ウィンブルドン」でのキリオス
(Photo by Shaun Botterill/Getty Images)
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