ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシア、ベラルーシの選手が締め出されることになった今年の「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)で、ある選手の行動に注目が集まった。英BBCなど複数のメディアが報じている。
その選手とは、ダブルス世界ランキング43位のナテラ・ザラミゼ。モスクワ生まれの彼女は先日までロシア国籍だったが、6月に入って父親の母国であるジョージアに国籍を変更。それにより、「ウィンブルドン」に出場することが可能となった。
4月にロシア、ベラルーシの選手たちを締め出すという決定を下した「ウィンブルドン」を運営するAELTC(オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ)は、「選手の国籍は、ツアーやITF(国際テニス連盟)などで彼らがどの国旗の下でプレーしているかで定義される」としている。
29歳のザラミゼは、「全仏オープン」ではロシア国籍だったため、中立的な立場としてプレーしていた。国籍変更が「ウィンブルドン」の開幕直前だったため、「国籍変更により出場停止を免れた」などとメディアで報じられる中、本人は出場停止を逃れるのが目的ではないと主張。国籍変更後に初めて口を開いた彼女は、今回の決断は2024年の「パリオリンピック」に出場するチャンスを得るためだと説明している。
「決断の理由は、キャリアのことを考えて、オリンピックに出場するチャンスを得たいと思ったからよ。(この件について)WTAと初めて話し合ったのは、インディアンウェルズ大会中のことで、3月だった。私がジョージアのためにプレーすることを選択した結果、“ウィンブルドン”でプレーできるチャンスが得られたとして、何が悪いの?自分のランキングは今キャリアハイだし、(オリンピックに向けて)展望がかなり良くなったわ」
テニス強豪国であるロシアは、ダブルスでも世界2位のベロニカ・クデルメトワ、「東京オリンピック」の混合ダブルスで優勝を争ったアナスタシア・パブリウチェンコワとエレナ・ベスニナなどを擁する。一方のジョージアはテニス強国ではないため、世界43位のザラミゼがダブルスのトップ選手となる。
ザラミゼはまた、2月下旬から続く紛争と、それを取り巻く状況についてもコメント。「もちろん、ウクライナで起きていることには反対よ。私が国籍変更したのはオリンピックのためだけど、ロシアの選手たちはとても厳しい状況に置かれている。スポーツと政治は切り離すべきね。ロシアの選手たちが自分の意見を言えないことに同情するわ。公平ではないと思う。彼らは何もしていないもの。私自身はずっとウクライナの選手たちと近しい関係にあった。彼らは私たちに何か言ってほしいんでしょうね。でも、私たちに状況を変えるような影響力はないの」
今回の措置により、世界王者のダニール・メドベージェフ(ロシア)をはじめ、男女合わせておよそ15人の選手が「ウィンブルドン」に出場できなくなっている。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「WTA250 クルジュ=ナポカ」でのザラミゼ
(Photo by Alex Nicodim/NurPhoto via Getty Images)
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