「ATP250 シュトゥットガルト」(ドイツ・シュトゥットガルト/6月6日~6月12日/グラスコート)の準決勝で元世界王者アンディ・マレー(イギリス)と対戦した元世界ランキング13位のニック・キリオス(オーストラリア)が、その試合中に観客から人種差別的な言葉を浴びせられたと訴えている。ロイター通信など複数のメディアが報じた。
この試合でマレーに6-7(5)、2-6で敗れたキリオスだが、序盤は両者ともに譲らず、キリオスは得意のアンダーサーブやトリッキーなショットを決めるなど、見ごたえのある試合が展開されていた。しかし、マレーがタイブレークの末に第1セットを取ると、キリオスはその場で地面にラケットを激しく叩きつけ、ベンチに戻ってからももう一度叩きつけて破壊。これによってキリオスはポイントペナルティを科された上、暴言を吐いたことでスポーツ選手らしからぬ行為によるゲームペナルティも第2セットで科せられることに。その後、ベンチに座ったままプレーの続行を拒むキリオスを、スーパーバイザーが説得する場面も見られた。試合後にキリオスは、観客から人種差別的な誹謗中傷を受けたのが原因だったと説明している。
「いつになったらやむんだ?観客からの人種差別的な誹謗中傷は。俺の振る舞いが常にベストってわけじゃないことは認めるけど、“この黒羊”“黙ってプレーしろ”…こんなコメントは受け入れられない。観客に言い返したらペナルティを受けた。こんなのメチャクチャだ」とキリオスはInstagramのストーリーに綴り、その後に改めてメッセージを投稿した。
「俺はエンターテイナーだ。7歳の時からプレーしている。テニスコートに足を踏み入れてからずっと、俺は思っていることをあけすけに言ってきた。そう、俺は人間だ。いつも自分の感情をうまく処理できるわけじゃない。人がどう思うかとか、俺がどうあるべきかという意見を気にするのはやめた。人にショーを提供するためにこの競技をしている。普通のテニスとは違う何かを感じてほしいんだ。でも、観客が選手に対して罵声を浴びせることは、絶対に許せない」
「人種差別的な発言から、単に無礼なものまで、しばらく前から俺の身には起こっていることだ。もう何年も気にしないようにしてきたけど、特にインディアンウェルズや今日のシュトゥットガルトでは、それが普通だと思っている人がいることに気づかされた。ほかのスポーツでも多くのアスリートたちがそういう扱いを受けているのを目の当たりにしてきた。対戦相手を応援していようがいまいが、俺たちは観客であるあんたたちのためにプレーしているんだ。大したことないと思っていても、自分が思っている以上に誰かの人生に影響を与えるかもしれない。自分が何をしているのか気づいてほしい。テニスに限らず、あらゆるスポーツで起きていることなんだ」
「若いアスリートたちよ、このメッセージが君たちに届いて、有色人種かどうかに関係なく、疎外感を感じたり、自分らしくあることや世界の舞台で活躍することを恥ずかしいと思ったりすることが決してないように願っている」
これに対して、調査に乗り出した大会側は声明の中でこう述べている。「私たちはすべての選手、スタッフ、来場者のために、いかなる差別も許さない環境を作ることを支持しています。これらの基本的な価値観は、私たちにとって公平性、寛容性、チーム精神といった価値観と同じくらい重要なものです。従って、観客によるいかなる差別的な行為も容認できません。ニック・キリオスと彼のチームには今回のことを遺憾に思っている旨を伝え、いかなる差別も容認しない姿勢を示しました。現在、この事件は調査中です」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ATP250 シュトゥットガルト」でのキリオス
(Photo by Tom Weller/picture alliance via Getty Images)