ニュース News

大坂、ジョコビッチ、マレーらもコメント。ランキングポイント無しのウィンブルドンに賛否両論

「WTA1000 マイアミ」での大坂

元世界女王の大坂なおみ(日本/フリー)が、ランキングポイントが付与されない今年の「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)を欠場する可能性を示唆した。英BBCなど複数のメディアが報じている。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、「ウィンブルドン」を運営するAELTC(オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ)とLTA(イギリステニス協会)が、イギリスで開催されるすべての大会でロシアと同盟国のベラルーシの選手の出場を認めないと発表したのは4月のこと。それに反対したATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)とITF(国際テニス連盟)が、「ウィンブルドン」でのランキングポイントを付与しないことを決定した。これによりテニス関係者や選手の間で賛否両論が巻き起こっている。

「全仏オープン」(フランス・パリ/5月22日~6月5日/クレーコート)の1回戦で第27シードのアマンダ・アニシモワ(アメリカ)に敗れた大坂は、試合後の記者会見で次のように述べている。「ランキングポイントが付与されない“ウィンブルドン”は私にとってエキシビション大会に近いわ。そうでないことはわかっているけど、頭ではそう考えてしまうの。エキシビション大会だと思うと、100%の気持ちで臨めないわね。まだ決断はしていないけど、今の状況を考えると、出場しない方に傾いているわ。芝のコートで経験を積むという意味では出場したいけど、それと同時に、私は自分のランキングが上がるのを見るのがモチベーションになるタイプなの」

大坂のこの発言をめぐって、イギリスのスポーツ番組の生放送中にAELTCの役員を務めるティム・ヘンマン(イギリス)がジョン・マッケンロー(アメリカ)と緊迫した口論を繰り広げることに。ヘンマンが「大多数の選手は“ウィンブルドン”でプレーする機会や、この大会の歴史と名声に目を向けるはず」と大会を擁護すると、マッケンローは「そもそも“ウィンブルドン”がやったことが間違ってるんだ。だからと言ってATPとWTAがポイントを付与しないというのもおかしな話で、選手のためになるとは思えない。選手が本当に“ウィンブルドン”の決断を非難するなら、大会をボイコットすればいい」と反論している。

イギリス人トップ選手で世界ランキング11位のキャメロン・ノリー(イギリス)は、ポイントが付与されなければエキシビション大会のようなものだと大坂と同じ意見を示した。「“ウィンブルドン”が特別な大会であることには変わりないけど、トップ選手の多くは出場しないかもしれない。その間に休養してハードコートの大会に備えるだろうね。特に、賞金をあまり気にしていない選手は」と話している。同じく地元選手の世界32位ダニエル・エバンズ(イギリス)もポイントは付与されるべきだと主張した。そんな中、ウィンブルドンで過去2度優勝しているアンディ・マレー(イギリス)は、ゴルフやサッカーに例えながらポイントを気にするファンはいないと断言。「みんなが覚えているのは、誰が優勝したかだ。“ウィンブルドン”は決してエキシビション大会ではないし、そのように感じさせることもない」と強調している。

世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)は「私にとって“ウィンブルドン”であることには変わりないわ。ポイントがもらえなくてもプレーするのは構わない」と述べている。ロシアとベラルーシの選手の締め出しに反対してきた世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)はATPらの決断を支持しているものの、結局は「誰にとっても損な状況」になってしまったと指摘。あくまで個人的な話として、ジョコビッチは昨年の優勝で獲得した2,000ポイントを成す術もなくまるまる失うことを「大きな痛手だ」と嘆いた。それでも、子どもの頃からの夢だった「ウィンブルドン」には今年も出場するという。

元全米チャンピオンでWTA選手会のメンバーであるスローン・スティーブンス(アメリカ)は、選手会が必死に両国の選手の出場を許すようAELTCとLTAを説得したが、それが実を結ばなかった結果として、今回の制裁に至ったことは止むを得ないと発言。差別に断固として反対する姿勢を貫き通すことが何より大切だと語った。2018年の「ウィンブルドン」でベスト4に進出した世界26位のジョン・イズナー(アメリカ)もスティーブンスと同様の姿勢を示しているが、「できればポイントを付与される中でプレーしたかった」と本音を漏らした。

イギリスで行われるすべての大会に出場できない世界15位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は、WTA選手会のメンバーとして、各運営団体の措置によって影響を受けた選手たちの救済に当たっているとのことだ。「私たちが団結して、善のために何かを成し遂げた時、スポーツが持つ力を示すことができるのではないかと期待しているわ」と話している。元世界王者のラファエル・ナダル(スペイン)はランキングポイントが付与されないことについて意見を求められた際に、「明確な意見はない」として、どっちつかずの発言に留めている。

今回のATPの決断を痛烈に非難したのは、2013年の「ウィンブルドン」で当時世界3位だったロジャー・フェデラー(スイス)を破ったことで知られるセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)だ。今年の「全豪オープン」の予選を最後に現役から引退したスタコウスキーは、侵攻直後にウクライナの予備役に登録している。「控えめに言って、ATPには失望している。侵略者や殺人者の側に立つ人がいるとは思ってもいなかった。どうやら選手仲間でさえ、ロシアとベラルーシの侵略者と協力者に同情しているようだ」とスタコウスキーはTwitterに投稿している。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「WTA1000 マイアミ」での大坂
(Photo by Mark Brown/Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

WOWOWテニスワールド編集部

facebook twitter

速報や最新ニュース、グランドスラム、ATP、WTAなどの大会日程と試合結果情報など、テニスのすべてをお届けします!

WOWOWテニスワールド

  1. Home
  2. ニュース
  3. 大坂、ジョコビッチ、マレーらもコメント。ランキングポイント無しのウィンブルドンに賛否両論