長年にわたって世界王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のコーチを務めたマリアン・バイダ(スロバキア)が、二人の関係解消に至った理由を初めて語った。テニス関連ニュースサイト Tennis Majorsなど複数のメディアが報じている。
バイダは2006年からジョコビッチのコーチを務めており、2017年に一度別れたものの、翌年に二人の関係は復活。バイダはジョコビッチがこれまでに獲得した20回のグランドスラムタイトルをすべて支えてきた。しかし、2019年に元世界ランキング2位のゴラン・イバ二セビッチ(クロアチア)がジョコビッチのチームに加わってからはバイダの役割が縮小され、同行する大会の数も減っていた。昨年11月に行われた「Nitto ATPファイナルズ」が終わった時点で別々の道を進むことに合意していた二人は、今年の3月1日にジョコビッチの公式サイトを通じて関係を解消したことを発表。だが、双方のコメントに具体的な理由は含まれておらず、ジョコビッチが主催する「ATP250 ベオグラード」で行われたセレモニーでもバイダは「頻繁な移動に疲れてしまった」とだけ説明していた。
この度、自国スロバキアの首都ブラチスラバで記者たちと話したバイダは、ジョコビッチと別れた経緯を語った。「いろいろな理由が重なったんだ。私たちは本当に長い間一緒にやってきたし、彼はグランドスラムに集中したがっていた。だからこそ、彼は自分のチームにこれほど多くの人がいるのは理想的ではないと考えたのかもしれない。彼はチームの人数を減らし、コーチは一人にしたいと考えたのだろう」
「彼に直接聞いたわけではないから確かなことはわからないが、大会のスケジュールを分析してみたところ、彼はチームを減らしたがっていて、その結果ゴラン・イバニセビッチを選んだのだと思っている。コーチには長期的なプランが必要だから、グランドスラムにだけコーチとして付き添うというのは理にかなっていない」
バイダの根拠を裏づけるかのように、ジョコビッチは理学療法士の一人であるミルヤン・アマノビッチも今後はツアーに同行しない上、チームに新たなメンバーが加わることはないと発表している。
一方のバイダは、ジョコビッチと別れた後にトップ10選手の代理人たちから複数のオファーを受けたが、それらをすべて断って、世界ランキング47位のアレックス・モルチャン(スロバキア)のコーチとして新たなスタートを切っている。カロル・ベック(スロバキア)が引き続きモルチャンのコーチとしてすべての大会に同行し、バイダがそれをサポートする形になると思われる。
「スロバキアのトップ選手を指導することになってとても嬉しい。それが決め手となった。ノバクとの関係が終わった後でたくさんのオファーを受けたが、スロバキアの選手を助けたいと思ったんだ。それが私に新しいエネルギーを与えてくれている」とバイダは話しており、モルチャンは今、バイダがジョコビッチのコーチに就任した時と同じランキングにつけているという。また、モルチャンのコーチになったことはイバニセビッチにだけ伝え、ジョコビッチには直接言ってないと明かした。
2015年にプロに転向した24歳のモルチャンは先月の「ATP250 マラケシュ」で準優勝を飾っており、その直後に初のトップ50入りを果たしている。今季10勝7敗を記録しているモルチャンは「ATP250 マラケシュ」で当時世界9位のフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)に勝利している一方で、「ATP1000 マドリード」では予選の初戦で敗退。2018年にATP(男子プロテニス協会)年間最優秀コーチに選ばれ、選手をタイトルに導くことに関してはテニス史上最も功績のあるバイダがチームに加わったことで、モルチャンがどこまで成長するかが楽しみだ。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「Nitto ATPファイナルズ」でのジョコビッチ(左)とバイダ
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)