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AELTCは今月20日に「ウィンブルドン」の公式ウェブサイト上で声明を出し、イギリス政府が定めたガイダンスも考慮した上で、ロシアとベラルーシの選手のエントリーを拒否することを決定したと述べている。AELTCのイアン・ヒューイット会長は、選手個人が受けるダメージを認識しつつも、格式ある大会としてウクライナを全面的に支持し、ロシアの軍事侵攻に反対する姿勢を示すことを優先したと説明。LTAはイギリス国内で行われるほかの大会に関しても同様の措置を取るという。また、6月までの間に状況が大きく変化した場合には対応を検討するとしている。なお、対象となるのは選手だけで、両国のコーチや審判、理学療法士は大会に参加できるとのことだ。

この決定の対象となる主な男子選手は、昨年の「全米オープン」チャンピオンであり世界ランキング2位のダニール・メドベージェフ（ロシア）、世界8位のアンドレイ・ルブレフ（ロシア）、世界26位のカレン・ハチャノフ（ロシア）、世界30位のアスラン・カラツェフ（ロシア）。女子選手の中からは世界4位のアリーナ・サバレンカ（ベラルーシ）、世界15位のアナスタシア・パブリウチェンコワ（ロシア）、世界18位のビクトリア・アザレンカ（ベラルーシ）らが出場できなくなる。

ATP（男子プロテニス協会）とWTA（女子テニス協会）は声明を通してAELTCとLTAの決断を強く批判した。ATPは「国籍に基づく差別は、選手のエントリーはATPランキングのみに基づくとする“ウィンブルドン”との協定に違反することになり、この決定にどう対応するかは今後、理事会および加盟国評議会と協議の上、決定する」と述べており、WTAも同様の姿勢を示している。また、イギリス以外で開催されるATPとWTAの大会では、これまで通り国籍を表すものを排除した上でロシアとベラルーシの選手の出場を認めると強調した。

自らも幼少期に戦争を体験している世界王者のノバク・ジョコビッチ（セルビア）は「選手たちは戦争とまったく関係ない。政治がスポーツに介入して良いことは何もない」と発言。「ウィンブルドン」で9度優勝しているマルチナ・ナブラチロワ（アメリカ）は「間違った判断だと思う。テニスはとても民主的なスポーツなのに、それを政治が破壊してしまうのを見るのはつらいことだわ」と胸の内を語った。

正式な発表が出る前に反応を示したロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、「ロシアはテニスの強豪国であり、選手が世界ランキング上位に名を連ねていることを考えると、この禁止令によって大会側は自分たちの首を絞めることになるだろう。またしても選手たちを特定の政治的偏見、陰謀、我が国への敵対行為の人質とすることは容認できない」とコメント。ロシアのテニス連盟会長は「間違った判断だと思うが、我々にできることはない。既に手は尽くした。この話題についてはもう話したくない。何を言っても選手たちの逆鱗に触れるだろう」と述べている。

一方で、ウクライナのテニス界からは称賛の声があがっている。元世界3位で現在は怪我と侵攻による精神的なダメージによりツアーを離れているエリナ・スビトリーナ（ウクライナ）は、AELTCの声明が出たのと同じ日にTwitterに長文の声明を投稿。ロシアとベラルーシの選手をすべての大会から排除するよう各テニス団体に強く求めた。また、両国の選手たちは自身の政治的立場をはっきりさせるべきだと迫り、「この状況での沈黙は裏切りを意味する」と主張した。世界52位のマルタ・コスチュクや元選手で現在はウクライナの軍に加わるセルゲイ・スタコウスキーも同じ声明をTwitterに投稿。ウクライナの予備役に加わっている元世界13位のアレクサンドル・ドルゴポロフは、「サポートしてくれてありがとう」とTwitter上でイギリスに対する感謝の言葉を綴っている。

（WOWOWテニスワールド編集部）

※写真は2021年「ウィンブルドン」でのメドベージェフ
(Photo by Julian Finney/Getty Images)