今年の「全仏オープン」(フランス・パリ/5月22日~6月5日/クレーコート)を皮切りにグランドスラムの4大会すべてで、最終セットに10ポイントのタイブレークが採用されることになった。ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトなど複数のメディアが報じている。
各グランドスラムの代表者からなる委員会は今月16日に、最終セットでゲームカウントが6-6になった場合、10ポイントのタイブレークを採用すると声明を通じて発表した。このタイブレークでは、2ポイント以上の差をつけて先に10ポイントを取った選手が勝者となる。
「全仏オープン」からの今年のグランドスラム大会すべてで試験的に導入し、その結果をもとに2023年以降も採用していくか否かを決めるという。この新しい方式は、予選を含む男女のシングルスとダブルス、車いすおよびジュニアのシングルスで適用される予定となっている。「全豪オープン」、「全仏オープン」、「全米オープン」の混合ダブルス、ジュニアダブルス、車椅子ダブルスの試合は最終セットの代わりに10ポイントタイブレークが行われるが、「ウィンブルドン」ではすべての競技に新しいルールが採用される。
これまでは4大会がそれぞれ異なる方法を採用してきた。「全豪オープン」だけがいち早く10ポイントのタイブレークを導入していたが、「全仏オープン」では最終セットで2ゲーム差がつくまで試合を続けることになっており、「ウィンブルドン」においては最終セットでゲームカウントが12-12となった時点で12ポイントのタイブレークへと移行。「全米オープン」ではゲームカウント6-6となった場合に12ポイントのタイブレークが採用されている。
今回の変更について、現在「ATP1000 インディアンウェルズ」(アメリカ・インディアンウェルズ/3月10日~3月20日/ハードコート)でベスト8に残っている世界ランキング20位のテイラー・フリッツ(アメリカ)は前向きなコメントを残している。「ファンにとっても、大会で勝ち進みたい選手にとっても、いいことなんじゃないかな。もし僕がこの先そういう状況を迎えることがあれば、きっと新しいルールが採用されて良かったと思うだろうね」
「全仏オープン」の関係者は5月開幕の大会に向けて記者会見を開いており、その中で今年から大会ディレクターを務める元世界女王のアメリー・モレスモー(フランス)は「すべての大会を統一することが優先事項でした。それがこの変更の根本的な考えです」と述べている。
また、同じ記者会見でモレスモーは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が「全仏オープン」に参加できることを明かした。新型コロナワクチンを打たない姿勢を貫いているジョコビッチは、各国の規制に阻まれて今シーズンはまだ「ATP500 ドバイ」にしか出場していない。「全豪オープン」同様にほかのグランドスラム出場も危ぶまれていた中、フランスは今週になって規制を緩和しており、入国する際や国内のスポーツ大会に参加する際にワクチン接種の証明書を提示する必要がなくなった。モレスモーは「現状、ジョコビッチの“全仏オープン”出場を阻むものは何もありません」と発言している。ただし、フランステニス協会(FFT)のジル・モレトン会長が「まだウイルスは流行っているから慎重にならなければならない。もし、再び感染が拡大して政府が新たな対策を講じた場合は、我々もそれに従うことになる」と指摘しているように、開催までに状況が変わる可能性はある。
ロシアのウクライナ侵攻を受けてスポーツ選手に対する制裁も広がる中、「全仏オープン」ではほかのツアー大会同様に、世界王者のダニール・メドベージェフをはじめとしたロシアの選手やベラルーシの選手は国籍を表に出さないことを条件に出場が認められる。これに対してイギリス政府は15日、今年の「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/6月27日~7月10日/グラスコート)にロシア人選手が出場するためには、ウラジミール・プーチン大統領の支持者でないことを示す必要があるかもしれないと発表している。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は、試合時間が11時間以上に及び、タイブレーク導入のきっかけの一つとなったジョン・イズナー(左)とニコラ・マウの2010年「ウィンブルドン」1回戦
(Photo by David Ashdown/Getty Images)