ウクライナ軍の予備役に登録した元テニス選手のセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)に対して、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が支援を申し出ていたことがわかった。英スポーツメディア EUROSPORTなど複数のメディアが報じている。
2010年にキャリアハイとなる世界ランキング31位を記録している36歳のスタコウスキーは、今年の「全豪オープン」予選を最後に現役を引退した。2013年の「ウィンブルドン」2回戦でディフェンディングチャンピオンだった当時世界3位のロジャー・フェデラー(スイス)を破った選手として知られ、シングルスでは通算4つのツアータイトルを獲得している。そんなスタコウスキーはロシアのウクライナ侵攻が始まった数日後に母国の予備役に登録し、家族をハンガリーに避難させた上でウクライナに帰国。「軍隊の経験はないけど、銃を扱った経験はある。たくさんの同胞が家族を避難させながら、命を懸けて戦うために残っているというのに、それをただ見ているわけにはいかない」とスタコウスキーは話していた。
スタコウスキーはその後、街なかで銃を手に防弾チョッキを着ている自身の姿や装備などの写真をInstagramに投稿しており、先日にはジョコビッチとWhatsApp(メッセージサービス)で交わした会話のスクリーンショットも公開した。
その中でジョコビッチは「スタコ、無事かい?戦場に出ているのか?君のことを思っているよ…すべてが早く落ち着くことを願っている。支援したいのだけど、どこに送ればいいか教えてくれないか。金銭的な支援でも、ほかの形でも…」とメッセージを送っている。これに対してスタコウスキーはハートマークと手を合わせた絵文字とともに、「ノール、ありがとう。僕は戦場にいるけど、キエフは結構静かだ」と返しており、Instagramの投稿にもジョコビッチへの感謝の言葉と「ウクライナも感謝している」と綴っていた。この投稿に対して、世界17位のライリー・オペルカ(アメリカ)もコメント欄でジョコビッチの申し出を称賛している。
とはいえ、スタコウスキーの状況が厳しいことに変わりはないようだ。彼は先日、英ニュース番組 Good Morning Britainのオンライン取材で現状について説明。薄暗い室内で軍服を着用するその姿や言葉からは、ウクライナの置かれた絶望的な状況がまざまざと伝わってくる。「ロシアのスポーツや文化的なことに対する制裁は効果があると思っている。でも、それだけでは彼(ウラジーミル・プーチン大統領)を止めることはできない。誰かが彼に歯止めをかける必要がある。僕はロシアが本格的に侵攻してくるなんて思ってもみなかった。だけど、それこそがロシアの意図であり、ヨーロッパに混乱と不安定をもたらそうとしている」
アンドレイ・ルブレフ(ロシア)が、ロシア人というだけでSNSなどで攻撃されているものの自分は平和を支持すると表明したが、スタコウスキーも彼らに理解を示した。ロシア人のテニス選手たちとも話したそうで、彼らも戦争を望んでおらず、苦しい状況に追いやられているとスタコウスキーは述べている。「プロのスポーツ選手が(ロシア)政権を罵倒するのは非常に難しい。なぜなら、彼らは母国に家族がいて、彼らが危険にさらされる可能性があるからだ。テニス選手に言いたいことを言えとは言えない。それは無理な話だよ」
世界14位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)もスタコウスキーの勇気ある決断を称え、こう続けている。
「なんの価値も生み出さないこの状況を見ていると気分が落ち込む。敵対する指導者や政府がやっていることはすべて醜い。それに、最終的に苦しむのは一般人だ。僕は(ロシア人の)アンドレイやカレン・ハチャノフとはすごく気が合うんだ。二人ともとてもフレンドリーな人たちだよ。ロシア人とウクライナ人はスポーツでは同じ側に立っていて、平和を支持し、侵攻に反対している。関係のない人まで責めるのは間違っている。悪いのが誰かはわかりきっているじゃないか」
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2021年「デビスカップ by Rakuten ファイナルズ」でのジョコビッチ
(Photo by Oscar Gonzalez/NurPhoto via Getty Images)
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