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【全豪振り返り】「これまでと全く別人になった気分」キリオスがキャリア最高の結果を掴むまで

「全豪オープン」でのキリオス(左)とコキナキス(右)

2022年最初のグランドスラム、「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月17日~1月30日/ハードコート)が1月30日に幕を閉じた。WOWOWテニスワールドにて実施されたアンケートで、テニスファンが最も推す男子選手に選ばれたニック・キリオス(オーストラリア)の活躍についてお届けする。

キリオスは「全豪オープン」直前に新型コロナウイルス陽性となってしまい、前哨戦の「ATP250 シドニー」を欠場。数日間は寝たきりとなり昨年9月の「レーバー・カップ」以来プレーしていなかった彼は、ぶっつけ本番で18日に初戦を迎えた。

シングルス1回戦の相手は世界128位位のリアム・ブローディ(イギリス)。地元の会場から大きな歓声を受け、キリオスのショーが始まった。第1ゲームでいきなりブレークをすると、続く第2ゲームでは股の間からアンダーサーブを決め、観客を沸かせる。勢いに乗ったキリオスはその後もスマッシュやドロップショット、そして目を引く股抜きショットなどを交え相手を翻弄。時折試合中に笑顔を見せたり、観客とコミュニケーションを取ったりと自由奔放に試合を進め、6-4、6-4、6-3のストレート勝ちを収めた。

試合後、「ご存じの通り、1週間前にコロナ陽性になったら大変だった。隔離生活を強いられ、理想的な準備ができなかった。だからこそ今日の試合には満足している。完璧だったんじゃないかな。サーブや試合へ臨む姿勢などよくやったと思う」と満足げに振り返った。

この日大盛り上がりを見せていた会場に対しては、動物園にいるようだったと比喩し「手の平の上で観客をコントロールできることはわかっていた。それを利用して一瞬盛り上げたり、自分のエネルギーを爆発させたりした。リアムはあれほど観衆が熱狂する環境でプレーしたことがないはずだ。だからこそ、ブレークポイントの時に観客を盛り上げて、彼にプレッシャーをかけようとしたんだ」と自らの狙いを語った。

2回戦では、過去2戦2勝の世界2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)と対戦。オーストラリアスポーツ界の国民的スター、車いすテニス選手のディラン・オルコットが「(サッカーの)チャンピオンズリーグの試合のようだ」と例えるほど会場は盛り上がっていた。メドベージェフに主導権を握られたキリオスはセットカウント0-2と崖っぷちに追い込まれる。しかし第3セットでは、第7ゲームで先にブレークチャンスを掴むと、コート上を走って喜びをあらわに。その勢いのままブレークし、セットカウント1-2とした。キリオスは自身の髪染めが溶け額に流れるほどの熱戦を繰り広げたが、その後はブレークを奪うことができず、6-7(1)、4-6、6-4、2-6で敗れた。

敗退とはなったがキリオスは「自分のパフォーマンスを誇りに思っている」と語りポジティブなコメントを残した。特に自身のサーブには満足しており「試合では一貫して時速220kmのサーブを打ち続けた。できる限りのことは全て彼にぶつけたよ」と最後まで戦った自分自身を讃えた。また、大会中キリオスをサポートし続けた恋人は、Instagramで「あなたをとても誇りに思う。素晴らしい試合だった。私の目には勝者として映っているわ」と温かい言葉をかけた。

シングルスは2回戦敗退となったキリオスだがワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したダブルスでは快進撃を続けた。相方となったのは2013年・2015年・2021年の大会でも組んだことのある世界103位のタナシ・コキナキス(オーストラリア)。

1回戦をストレートで快勝したキリオス/コキナキス組は、2回戦でダブルス世界1位のマテ・パビッチ(クロアチア)と同2位のニコラ・メクティッチ(クロアチア)という最強ペアと対戦。地元の大声援を味方に始まった第1セットは互いに2度ブレークをし、タイブレークに突入。キリオス/コキナキス組がこれを10-8で制すと、続く第2セットでは第6ゲームでブレークに成功。このリードを守りきり、下克上を果たした。

この試合後、相手のチームスタッフと一触即発になりかけた2人。キリオスはTwitterで「圧勝した昨日の試合の後、ジムで相手ペアのコーチとトレーナーに喧嘩を吹っかけられた。テニスはなんてヤワなスポーツなんだ。試合中にボールを当てたくらいでこの騒ぎさ」と投稿し、コキナキスも「あれはクレイジーだったな!UFC(総合格闘技団体)かと思ったよ」と反応し、コート外でも注目を集めていた。

2人はその後も順当に勝ち上がり、初の決勝の舞台にたどり着いた。相手はマシュー・エブデン(オーストラリア)とマックス・パーセル(オーストラリア)のペア。オーストラリア人ペア同士の決勝となったのは1980年以来42年ぶりのこと。そんな記念すべき試合はお互い譲らずサービスゲームをキープする展開が続くが、5-5で迎えた第1セット第11ゲームでキリオス/コキナキス組についにブレークチャンス。3度あったチャンスは逃すが、4度目の機会でエブデンがネットにかけてブレーク成功となる。続くサービング・フォー・ザ・セットをラブゲームでキープして第1セットを先取。

第2セットも前半は互いにチャンスのないまま進むが、2ゲーム連続ラブゲームでキープとリズムに乗るキリオス/コキナキス組が第7ゲームをラブゲームでブレーク。このリードを守り、最後はエブデンのリターンをコキナキスがボレーで決めて、25年ぶりとなるオーストラリア人同士のペアによる優勝を果たした。

キリオスは「これまで世界中で様々なタイトルを獲得し、素晴らしい試合を繰り広げてきた。でも自分にとってこのタイトルがこれまでで一番だ」と喜びを語った。また、この2週間はプロキャリアで最高の経験であったことを認め、「正直に言ってこれまでと全く別人になった気分。ただ幸せだ」と述べた。

過去には多くの人や自分からのプレッシャーによって試合を楽しめなくなり、自分をコントロールできなくなっていったと打ち明けていたキリオス。しかし、今大会ではプレッシャーを感じるどころか観客を味方につけ、それを自身の力にし、優勝という最高の結果を手にした。一皮むけた彼が今後どれほど進化するのか楽しみで仕方ない。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「全豪オープン」でのキリオス(左)とコキナキス(右)
(Photo by Quinn Rooney/Getty Images)

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