アシュリー・バーティ(オーストラリア)の「全豪オープン」優勝は、多くの人に対して多くのことを意味するものだった。国にとっては、過去44年間続いた自国出身のシングルス覇者の不在が終わったという意味で、オーストラリアのスポーツ史に残る爽快な瞬間だった。新型コロナウイルス感染症の大流行で厳しいロックダウンに耐えてきたオーストラリアにとって、熱狂的かつ求心力のある瞬間でもあった。
しかし、バーティ自身にとっては、1セットも落とさず3度しかブレークされなかった今大会での優勝までの道のりは、ただ楽しいものだったという。優勝後にバーティが語った内容を、WTA(女子テニス協会)の公式オンラインメディアが伝えている。
それぞれのグランドスラムはどれも本当に全然違うけれど、この2週間は本当に楽しめたし、しっかりと受け止めることができて、自由に自分らしいプレーができた。このことが一番楽しかったわ。これが起こったのが、友達や家族や広い意味でのチームがいる、ここオーストラリアだというのは、間違いなく素敵なおまけね。私のキャリアのために本当にたくさんのエネルギーと愛と犠牲を注ぎ込んでくれた人がすごくたくさんいて、そのほとんどは、この2週間私と同じ体験をするためにここにいてくれた。それは本当に特別だわ。
多くの人には機会が巡って来ないことを成し遂げる機会に恵まれたことに、すごく感謝している。心から楽しめたことに一番満足しているの。この経験を実際に楽しめたということにね。これは仕事という感覚じゃないわ。楽しいの。観衆と共有できて、観衆を巻き込むのはとんでもなく楽しい。全ての瞬間を一つ一つ楽しめたという意味では、これまでで一番すばらしい2週間だったわ。ありのままを受け止めて、一番大事な時に自分にできる最高のテニスをすることができた。
誰かに何かを証明しようという感覚は一切ないの。外の雑音を受け止めて、いわゆるプレッシャーを受け入れることができている。私にとってはプレッシャーじゃないけれどね。ただ楽しいんだもの。今週は、本当に自分らしいプレーができて、自分なりのひねりを加えて、すごく気が滅入るものになりえる環境の中でも自分らしくいられたことが、すばらしく楽しかったわ。
私のチームは、物事を気楽にしておくことにすばらしく長けているの。私たちが思いつくゲームやウォームアップ、冗談、それにくだらない会話はどれも子どもみたいで、ただただすごく楽しいの。テニスをせず、チームと一緒に楽しんでいない日々は退屈だわ。彼らがいなければまるで違ったものになるでしょうね。
結局のところ、チームと一緒に気楽に構えて、これは楽しいものだという感覚を保っておいて、でもスイッチを切り替えて試合に出て戦って、全力を尽くして、そして次の日にまた帰ってきて楽しむことができる。こういう本当にいいバランスを見つけられたのがコツだったんだと思う。今私の周りにいるチームとはもう何年も何年も一緒にいるからね。並外れた人たちなのよ。彼らは私のことを熟知している。とにかく才気あふれる人たちなの。
私はロジャー・フェデラー(スイス)やノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)みたいなテニス界の王者たちと並べて語られるような選手じゃない。彼らと同じではないのよ。彼らはこのスポーツに遺産を築いた。私はまだ学んでいるの。まだ技術を学びながら、洗練させているところよ。ただただ実践の中で学ぼうとしているの。周りにいる人たちと一緒に、毎週毎週ね。コートに足を踏み入れる度に成長したい。少しでもうまくなりたいだけなの。
常に成長しようと努めていることで、ここ数年は本当にいい状態でいられたわ。この成果は私の周りにいる人たちのおかげ。私がキャリアの第2部を始めた時のチームは、基本的に変わっていないわ。私はこのことを一番嬉しく思っているの。彼らは、私がランキングもなく最初にイーストボーンの大会に出た時も、私と一緒にいた。私には何もなかった。全くもって何の出発点もなかったの。彼らはその時私と一緒にいて、今も私と一緒にいてくれている。この期間にあった全ての時間と思い出、経験、そして機会は、何ものにも劣らないわ。素晴らしかった。
今は、振り返って真の意味で線引きをして、「よし、本当にこの上なくすばらしいこの成果をお祝いしなきゃ。一緒にいてくれた人たちとお祝いしなきゃ。それから、次のことに集中しよう」っていう態度でいることが本当に大切だと思う。自分の次の章や、次に何が待っているのかがすごく楽しみ。でも今は振り返って、少しだけゆったり過ごして、こっそりビールを飲んで、チームとして成し遂げたことをお祝いできることが大事だわ。だって本当に特別なことだから。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2022年「全豪オープン」優勝翌日の撮影会でシャンパンをあけるバーティ
(Photo by Andy Cheung/Getty Images)
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