車いすテニスのクァードクラスでゴールデンスラムを達成したディラン・オルコット(オーストラリア)が、車いすテニス大会の賞金の低さを批判した。現役最後の試合となった「全豪オープン」決勝で敗れ、競技人生の幕を下ろすことになったオルコットは、表彰式でのスピーチを好機と捉えて、車いすテニスの現状について訴えた。スポーツウェブメディアSportskeedaが伝えている。
表彰式でマイクを渡されたオルコットは、「全豪オープン」前哨戦で優勝した際の賞金がたったの1300ドル(約15万円)だった、とスピーチの冒頭で語った。一方「全豪オープン」男子シングルスを制したラファエル・ナダル(スペイン)も前哨戦の「ATP250 メルボルン」でも優勝したが、その賞金は8万7370ドル(約1000万円)と、オルコットの約67倍の金額だった。
オルコットは、車いすテニスの賞金の少なさを、選手たちの必要経費である航空券代と比較して次のように語った。
「僕はこの大会の前哨戦で優勝したけど、賞金は1300ドルくらいだった。ヨーロッパからの航空券代はいくらかな、3000ドル(約34万円)?」
「全豪オープン」の車いすテニス部門の賞金総額はおよそ20万オーストラリアドル(約1600万円)とされているが、これはATP(男子プロテニス協会)やWTA(女子テニス協会)選手のために確保されている額の10%にも満たない。
同大会の男女子シングルスの優勝者は、それぞれ287万5000オーストラリアドル(約2億3500万円)という大金を手にするが、1回戦で敗退した選手でも10万3000オーストラリアドル(約841万円)を受け取る。車いすテニスの優勝賞金は明らかにされていない。
オルコットは、ATPやWTAとの賞金の違いを批判しながらも、現在の車いすテニスの状況は数年前より格段に良くなっていると付け加えた。
「オーストラリアだけじゃない。世界中でそうだ。優勝しても350万ドル(約2億8600万円)なんて得られない。どのグランドスラムでも、健常者の大会の1回戦敗退者の半分以下しか貰えない」とオルコット。「でも、随分良くなった。昔は、固い握手と冷たいパワーエイド(スポーツドリンク)を貰うだけだったこともあった。だから良くなってきている。でも、ここからさらに増やして、どんどん良くしていくべきだ」
それでもオルコットは、自身のキャリアについては肯定的なトーンで語った。多くの成功を収めたオルコットは、自分は「世界で一番ラッキーな男」だと断言した。
「僕は本当に世界で一番ラッキーな男だ。それに気づくのに今日勝つ必要はなかった。勝てたら良かったけど、それでも僕は、自分がこれまで会った中で一番ラッキーな人間だよ」
オルコットは、クァードテニス史上最も成功を収めた選手と言っていい。これまでグランドスラムのシングルスでは、「全豪オープン」で7回、「全米オープン」と「全仏オープン」で3回ずつ、そして「ウィンブルドン」で2回と、計15回優勝トロフィーを手にしている。さらにダブルスでも8回優勝し、レジェンドと呼ばれるにふさわしい活躍をしてきた。
現在31歳のオルコットは、昨年すべてのグランドスラム制覇に加え「東京パラリンピック」の金メダルも獲得し、ゴールデンスラムを達成している。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は2020年「全豪オープン」でのオルコット
(Photo by Morgan Hancock/Getty Images)
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